例え世界中を敵にしても
リーフたちと軽い夕食やリーフたちのお土産を食べ、明日は婚約者パーティー用のドレスを買いに行く約束をした。そう、明日はアルベルトとクレアの婚約者パーティー(仮)があるのだ。クレアとしては絶対に行きたくないがすっぽかすわけにも行かないのでリーフたちと一緒に行くことにした。本来ならもう少し早くにドレスを見に行かなければならないのだがパーティーに行かない方法の1つとしてヒロインであるリーリア・シャーロットに接近し婚約者の座を譲ってあげようとしたのだ。しかし、ヒロインが亡くなり予定が全て狂ってしまったのだ。本来この小説「バラの約束」は功績を称えシャーロットという家名を貰い、平民から男爵となり国王に挨拶に行った時にお互いが一目惚れをする。まだ、リーリアの魔法は目覚めていない。まず、リーリアが魔法を持っているかすら分からない。原作では目覚めていないが、立場的にはヒロインだ。持っていないわけは無いと考える。しかし、どんなものなのかもいつ目覚めるのも全てが不明だ。話しを戻し、元々クレアは国王の末っ子として生まれ周りに甘やかされて育ちそのまま従兄弟であるアルベルトと婚約していた。従兄弟同士で結婚も今考えて見るとどうかと思う。お互いに惹かれあった2人だが元々アルベルトはクレアのことも好きだった。しかし、リーリアの純粋さにどんどん惹かれていく。だがアルベルトがリーリアばかりに構ったことでクレアはそれに嫉妬しいじめ、問題を起こし罪を被せ、殺人ギリギリまで追い込む。しかし、婚約パーティーで全て明かされクレアは処刑、アルベルトとリーリアが結ばれるというストーリーになっている。しかし、クレアたちは魔黒鳥に攫われ、ヒロインがギリギリになるまで現れないそして亡くなるなど原作とかなりの違いが生まれている。
「こう改めて見るとかなり違うわね」
「てかさ、俺らの学生時代なんてあいつと年違うから滅多に会わない、いや会わせないようにして容姿が分からないのによく今まであいつの口から婚約解消という言葉が出なかったよな」
本来のストーリーと現状を記した紙とにらめっこしているスピカと不思議そうにブラウニーを食べるノエル。
「私の第一印象を悪くすればいけるかな?」
「それいい!いくら女好きでも見た目が見窄らしかったら幻滅して解消できるわ!」
「後は口調とかか?いつものように騎士のような強い口調ならいけるだろ」
クレアの考えにスピカとノエルもノリノリで考えていたが、リーフだけずっと黙っている。
「リーフ兄大丈夫?もしかして、体調悪い?」
「そういえば、会議の途中から顔色悪かったよな」
『会議』この言葉にリーフの肩がピクっとなった。
「え、あ、大丈夫だよ、大丈夫。そうだなぁ、どうしたものか」
クレアはリーフのよそよそしい態度に疑問が浮かぶ。でも、今は明日のことで精一杯で聞くことはできなかった。それからもあーだこーだと話しとりあえず何があっても解消はしたいので全力で拒否るという考えとなった。後は様子を見ていこうとなった。
でも、リーフたちは口を揃えてクレアを絶対に助けると約束をしてくれた。日も完璧に落ちリーフたちが帰っていった。ノエルはスピカを送り、クレアもリーフを送ろうとしたが断ったため玄関で別れそのままお風呂に入った。
「なんかしようとしてくれるのは嬉しいけど、、、」
クレアは別の面での婚約解消の件で頭を少々悩ませていた。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
「え?私?珍しい」
お風呂に上がり、悩みながらカモミールを飲んでいるとアンソニーが呼びに来た。クレアは疑問を浮かべながら、サファイア公爵の部屋に入って行った。
「クレア、夜遅くにすまないね」
「いいえ、どうかしたのですか?お父様」
サファイア公爵は対面に座っているクレアに身体を向けた。
「、、、クレア。アルベルトと本当に結婚したいか?」
サファイア公爵からの予想外な質問に戸惑うクレア。そう、クレアの婚約解消の悩みの1番引っかかっていたものだ。それは、家の問題だ。そりゃ、王族に娘が嫁ぐのはさぞかし、名誉なこと。しかし、相手が相手だ。好きでもない相手と結婚なんて、ましてやあのアルベルト。それに今、クレアの心にいるのはまさしくフィンセント。クレアが返答に困り黙り込む。
「、、、、、、クレア、嫌なら嫌でいいんだよ」
「え?」
クレアが顔をあげるとはサファイア公爵は険しい表情ではなく優しい表情をしていた。クレアは怒られることを想定していたので余計に驚く。
「クレア。お父様はクレアがきっと幸せになると思ってこの話しを承知してしまった。だけど、それは間違いだったようだ」
サファイア公爵は目を閉じながら、クレアに話す。
「アルベルトがあんな奴だとは私も思わなかった。あんな奴がクレアを幸せにしてくれるなんて私は思わない」
アルベルトの噂はサファイア公爵の耳にも入っていた。おそらく、リーフたちのお父様、エメラルド公爵たちにも耳にしているのだろう。
「クレア、君はもう立派なレディだ。街の皆にも愛されて、誰よりも強く優しい子に育ってくれた。私の自慢だ」
クレアの目からポロポロと涙が出る。今日はクレアの涙腺は崩壊しているようだ。
「好きなようにしなさい。アルベルトの婚約も嫌なら断ればいい。後のことはお父様がなんかするから。家のことは気にしなくていい。土下座でもなんでもする。お父様はクレアの1番の味方だから。例え、世界中を敵にしても味方だ。それだけは忘れないでくれ」
クレアの目から涙が止まらない。止めようとしても溢れてくる涙。これが親子、家族の愛だろう。
「でも、せめてクレアの事を心から愛していて、そしてクレアも本当にその人の事を愛していて、この人の側に居たいという人を見つけてお嫁に行くまではお父様の側に居てね」
「、、、ずっと、アルベルトの結婚のこと考えてた。本当は嫌だった。主人様たちもなんとかしようとしてくれて嬉しかった。でも、お父様の顔に泥を塗るのは嫌で、サファイア家の信頼を無くしたくなくて」
クレアは涙を拭き、しゃっくりもしながらゆっくりと自分の本音を話していった。サファイア公爵はそんなクレアを見て「うんうん」と頷きながら話しを聞く。
「お母様もそれを願ってる、おまえの幸せを。クレアはあまり我儘を言わないからね。娘の我儘を聞くのもお父様の仕事だ」
クレアは立ち上がり、サファイア公爵に抱きついた。
「ありがとう、お父様。大好き」
サファイア公爵もクレアを抱きしめる。
「私も大好きだよ。、、、クレアは本当の君は、、、、、、いやこれを話すのはまた今度にしよう」
クレアは分かった。サファイア公爵はクレアが本当は王族であることを話そうとしたのだろう。しかし、言わなかった。きっと、全てが落ち着いてから話すのだろう。クレアは分からないフリをしてコテっと首を傾けた。外ではふわふわと赤い蝶1匹が飛んでいる。




