好きなタイプ
「それから、ずっと待ってた。けど、彼が来ることはなかった。でも、私は彼がまたいつか来てくれると信じてる。、、、以上です、まぁ、軽い昔話ですが」
そう言って、クレアはペンダントを握りしめた。フィンセントはハンバーガーの包紙を畳みながら考えた。
「、、、、、、なるほど、教えてくれてありがとう。いつか会えるといいなぁ」
フィンセントのその瞳にはどこか悲しみが見える。
「、、、はい。あ、皇子。ソースが口に」
顔をあげるとフィンセントの口にソースが付いていた。クレアはハンカチを使ってフィンセントの口のソースを拭いた。フィンセントは急にクレアが自分の近くに近付いたことに驚きが顔を赤くする。
「あー、このハンバーガー美味かった。また、いいか?」
フィンセントは照れ隠しとまた会いたいという気持ちから約束を持ちかけた。
「気に入って頂いて嬉しいですが、ハンバーガー自体は主人様が作っているので聞いてみないとですね」
「スピアナ嬢は料理が作っているのか、凄いなぁ」
クレアはここで疑問が浮かぶ。
「いいえ、スピカ様ではありませんよ。これを作ったのは私のもう1人の主人、リーフレット・エメラルド様です」
リーフの名を聞いた瞬間フィンセントの顔が強張った。そして、クレアに近付き手を取った。
「あの緑の長い髪の男?」
「え、はい」
フィンセントの目付きが変わる。
「その男は君のなに?もしかして、婚約者なの?」
「え、リーフレット様は私の主人様で」
「本当にそうなの?」
フィンセントは真っ直ぐにクレアを見つめる。クレアは家族以外の男の子だったらノエルとリーフしか関わらなかったし、仮にも兄弟だしもちろん恋愛感情を持つことはなかった。恋愛感情はその男の子にしか感じてないため男の子自体への耐性がない。そんなクレアは顔を真っ赤にすることにしかなかった。
「あの、私は」
「ねぇ、俺じゃダメ?、、、、、、好きだ、俺の方が誰よりも愛する自信がある」
クレアはフィンセントに告白された。クレアは初めてのことで頭がパンクしてキャパオーバーだ。すると、そっとフィンセントはクレアから離れた。クレアは反対の方向を見て、苦しかった呼吸を整えた。すると、フィンセントの周りに貴族令嬢たちが集まってきていた。
「あの、もしよろしければ私たちとお茶しませんか?」
「どこの方なのでしょう。婚約者はいらっしゃいますか?」
貴族の令嬢たちはグイグイフィンセントに話しかけていく。
「ありがとうございます、ですがこの後少々用事がありましてお茶はまた今度。残念ながら、婚約者はいません。それに俺はここの国の者ではありません、見かけたことないのも無理ないでしょう」
クレアはフィンセントの表情を見てすぐに分かった。これはめんどくさい、ダルいという顔だ。ニコニコしているけど、していない。リーフとノエルも同じ様な表情を作るのだ。よく他の令嬢に捕まっては上手く交わすことが出来ずやっとの思いで抜けてアフタヌーンティーをする時に愚痴って来るまでがセットだ。
「え!?他国の方!?」
貴族の令嬢たちが驚くのは当然だ。なかなかエルセノアに入って来ることは出来ないのだから。それを狙ってなのか、令嬢たちの目付きが変わる。
「今日が無理でも明日でも構いませんわ、お魚の美味しいいいお店を知っているんです。お食事だけでも行きませんか?」
「実は私も婚約者が居なくて、今度私のお父様が管理している植物園に行きませんか?エルセノアの美しい花が見られますわ」
「お兄様が乗馬が好きで私もよくするんです。よろしければ、森や池の辺りを散歩しませんか?」
などとたくさん質問していた。もの凄いマシンガントークでクレアは少し引いている。
「残念ながら、俺は魚ではなく肉の方が好きなんです。虫が苦手で植物園は苦手なんです。乗馬もやりますが、ゲームの方も嗜むので」
フィンセントは華麗に貴族の令嬢たちの誘いを断る。貴族の令嬢たちは断れて、少し落ち込んでいるがなんとか誘おうとあれやこれやと考えている。すると、今まで何も発言してこなかった1人の貴族の令嬢の口が開いた。
「お好きなタイプとかありますか?」
他の貴族の令嬢たち、そしてクレアも顔を一気にあげる。その視線はフィンセントに向く。
「そうですね、俺のタイプは、髪が長くて、優しくてお淑やかで美しいドレスが似合う方ですかね」
その瞬間クレアの心臓は大きく動いた。『髪が長くて』クレアは護衛もあって長い髪が邪魔でずっと短いのだ。万が一、髪のせいで視界が狭まってしまったり、髪が長ければそれを掴まれ、背後を取られたりしてスピカやリーフに危害を負わせるわけにもいかないのだ。今でも別に髪を伸ばしたいと思っていなく短い方が髪は洗うのが楽だしすぐに乾くし櫛もやりやすいと思っているのだ。『優しく』クレアは初対面の人にはガンを飛ばす癖があるのだ。騎士としての立場上いつも警戒していないといけない。貴族に紛れて刺客だったというのも少なくない。フィンセントと初めて会ったときのようにキツい目付きになる。だから、人に優しくするのは慣れてからじゃないとできないのだ。クレアはただでさえ人を疑い深く、信用していないのだから。『お淑やかで』騎士とし育てられたと言っても間違いないクレアは女の子らしく振る舞うことなんて毎回できない。男の子みたいと言っても否定できない。実際にノエルにはふざけて、煽りながら度々「女らしくない、まじで男に勘違いされるぞ」と言われたことがあるのだ。まぁ、スピカやリーフがすぐに怒ってくれるがノエル自身がそれに関してはよく心配しているからなのだ。同じ騎士の立場同士の者として。『美しいドレスの似合う』普段、スピカのように美しいドレスなんて着ない。パーティーやリーフたちにせがまれた時にしか着ないクレア。ドレスだといざという時に対応が出来ないのだ。一回だけクレアがドレスでパーティーに参加をした時に刺客が入り騎士の人手が足りてなく着替える暇もなく仕方なくドレスを破き加勢したのだ。それに普段から、サファイア公爵からはドレスも買って貰うがクレアが断り動きやすい服がいいと言っている。そのため、ドレスは必要最低限の数しかなくなんならドレスよりクローゼットにはブラウスやパンツ、軍服をモチーフにしている動きやすいワンピースが多いのだ。フィンセントのタイプとまるで違うクレア。貴族の令嬢たちに目を向けると私かもしれないと目には期待があった。綺麗に纏まった髪、美しい仕草、煌びやかなドレス。クレアにないものをたくさん持っている。クレアはさっき言ったフィンセントの言葉が信じられなくなってしまった。クレアの目からポタポタと落ちる涙。それをワンピースの裾でゴシゴシと拭きながら走り出した。クレアが立つ瞬間にフィンセントが気付く
「おい、どこに行くんだよ!クレア!」
「気安くクレアと呼ばないでください!」
クレアは走ってサファイア邸に帰り、アンソニーのことも無視して泣いた。それから、クレアは泣き疲れて寝てしまった。




