贈り物
翌日いつものようにサファイア公爵のキツイ剣術と体術の特訓を終わらせて、街に出かけた。その男の子との特訓の成果がサファイア公爵との特訓に生かされて行き、クレア独自の戦い方を見つけた。剣では力の弱い女は男に負けてしまう。だから、クレアはその男の子が教えてくれた「剣落とし」、「剣奪い」を覚えた。剣を軽く持ち、身体をバレエのように舞ながら剣をかわし相手の懐に入り込み剣をそのまま落とすか剣を上にあげ剣を奪うやり方を得意とした。それに関してはサファイア公爵は驚きとクレアの成長に涙を流した。サファイア公爵の涙にクレアも涙した。そんなことを思い出しながら小さなアクアサリーショップに入った。中には指輪やネックレス、ブレスレットなどがキラキラしているものがたくさんあった。クレアは夢中で選んだ。黄色の宝石が付いたピアス、水色の宝石が付いた髪飾りなど種類豊富だった。どれもその男の子に似合いそうと思うのでクレアは余計に迷った。そんな中、クレアは1つのイヤリングに目を奪われた。それは、小さな赤色の宝石にゴールドの細長い四角の飾りがついてゆらゆらと揺れるものだった。
「この宝石、○○○の髪の色だ。アンソニー、これにする!」
「かしこまりました」
アンソニーはニコニコしながら、会計をして綺麗に包装して貰った箱を受けとった。
「喜んでもらえるといいですね」
クレアは喜んでくれるその男の子の顔を思い浮かべ顔を真っ赤にした。その日の夜、いつものように林に行く。しっかりと贈り物を持って。行くともうその男の子がいて、その男の子の人差し指には蝶が止まっていた。その蝶を見つめながらそっと蝶から手を離し蝶はヒラヒラと飛び立った。その男の子は蝶の飛んで行った方向をずっと見ていた。でも、どこか悲しくて。そして、歌を歌っていた。男の子にしてはかなり高い歌声は小鳥にも負けない美しさだった。その姿に見惚れていると、その男の子がクレアに気付き手を振る。クレアも慌てて手を振り、その男の子駆け寄った。
「来てたのなら、教えてくれてもよかったのに」
「ずっと蝶を見つめたから」
そういうとその男の子は悲しそうに微笑みながら、クレアの頭を撫でた。
「今日、母上と喧嘩したんだ。原因はくだらないんだけど、俺が悪いんだ」
その男の子はクレアの頭を撫でるのをやめ、蝶が飛んでいった方向へ再び目を向けた。
「それがどうして蝶と関係あるの?」
「蝶は母上が1番好きなものなんだ。俺にとっても蝶は特別な物だと思っている。俺の国では小さな天使と呼ばれるくらいなんだ。綺麗で、小さくていつも俺らの側を舞っている。その姿は天使そのもの。もし、このまま死んだら俺は蝶になって母上やクレアたちの側に居たい。なんてね」
その表情はとても儚く美しかった。クレアは髪に付けていた真紅の薔薇を取り、その男の子に渡した。
「大丈夫!この御守りがあれば絶対に仲直りできるよ!」
その男の子は驚きながらもクレアから真紅の薔薇を受け取った。
「ありがとう、明日ちゃんと母上と仲直りするよ」
その男の子の笑った顔がクレアの大好きなあの笑顔に戻ってクレアもつられて笑う。
「そうだ、クレアにこれあげる!仲良くしてくれるお礼と頑張ってるご褒美!ちゃんと俺が選んだから」
その男の子はクレアに真っ白なユリの花を渡した。
「グレイシアって言うんだ。俺の住んでる国での有名な花なんだ」
クレアは初めて大好きな人からの贈り物で自分の名前の花を贈られて顔を赤くしながら、喜んだ。
「ありがとう。あ!私からもこれ、受け取ってくれる?」
「もちろん、開けてもいい?」
クレアは縦にコクリと首を振った。その男の子はクレアから贈り物を受け取り、丁寧に包装を開ける。そのまま蓋を開けて中に入っているイヤリングを見つめた。さっきとは打って変わって喜んだ表情になった。箱からそっとイヤリングを取り、耳に付けた。
「どう?似合う?」
「うん、カッコいい」
「ありがとう、クレア大事にする」
クレアはイヤリングを付けたその男の子をじっと見つめて、そっと顔と耳に手を近付けてそっと触れた。その男の子も拒むこともせず優しく微笑みクレアを見つめる。
「やっぱり、形が残るものがいいなぁ」
「え!?いいよ、この花貰ったで十分だよ」
「いや、贈る。その短くて綺麗な髪に似合う髪飾りを」
その男の子はそう言って今度はクレアの髪をひと撫でし、首からペンダントを取ってクレアにつけた。
「それ持ってて。次に会う時髪飾り渡すからそれまでそのペンダント預かって」
クレアはそのペンダントの蓋を開けるとこの前撮った写真が入っていた。クレアはその男の子が大切にこのペンダントを持っていてくれて嬉しかった。
「分かった、楽しみにしてるね」
「うん、約束!」
クレアとその男の子は小指を出して絡ませて、指を切った。その男の子との2個目の約束だ。
「じゃあ、今日は特訓はお休み!技もあらかた出来るし、今日は遊ぼうか!てことで雪出して」
「それって、○○○が遊びたいだけなんじゃ、、、」
クレアはその男の子を見ながらクスッと笑う。
「じゃあ、今日はミニかまくらでも作ろう」
「なにそれ!?」
クレアとその男の子はクレアの雪でたくさん遊んだ。手が霜焼けになってしまいクレアの熱湯で手を温めた。熱湯とは言ってもお風呂と同じくらいの温度の水だ。ミニかまくらもたくさん作り、その1つにはリスが眠っていた。冷たくて気持ちいいのだろうか?気持ち良さそうだった。それから、クレアとその男の子はいつものように別れてサファイア邸に戻った。これが最後とは知らず。その男の子から貰ったグレイシアの花を花が枯れずにそのままの綺麗な状態を保つためのケースに入れた。ずっと、美しい状態を保ちいつでもその男の子との思い出を思い出せるように。しかし、それからというものその男の子は林に来なかった。何日も何日も待ったが、あれから来ることはなかった。ペンダントを残して。




