赤い髪の男の子
「それは私が5歳の時でした、あの人に会ったのは」
時は遡り13年前。まだ、クレアが前世の記憶を思い出していない頃。アクアもまだ2歳の時、外ではカチンカチンと剣のぶつかる音がしていた。サファイア邸の庭、そこにはまだ幼いクレアと若きクレアの現父親テオドール・サファイア公爵の姿があった。
「、、、うっ、、、」
クレアはサファイア公爵の剣の強さに敵わず尻餅を付いてしまった。
「立ちなさい、クレア。もう1度その剣を持ち掛かってきなさい」
「、、、はい、お父様」
クレアがまだ、5歳の頃休みの日になると朝早くに起こされ午前中はずっと剣術、午後は体術を叩きこまれていた。15時からはサファイア公爵の仕事があるのでそこからはやらない。15時からは決まってリーフたちのところに行き、慰めてもらい遊んでいるのだ。普段の日は休みの日よりかは少ないがその分もっとハードになっているのだ。
「ダメだ、ダメだ。握りが甘い、背筋を伸ばす」
女の子にも関わらずサファイア公爵は厳しくする。
「涙を流すな、強くなれ。心も身体も」
今回は珍しく夜にも剣術をやっている。まだ、幼いクレアにはまだ荷が重い。成人男性がやる特訓のさらにキツイ強化バージョンをやっているので相当辛し、心身共に限界だった。今回は夕食が終わっても剣術の特訓をさせたれていた。クレアは手で涙を腕で拭きながら、サファイア邸を出た。とうとうクレアの限界が来たのだ。
「クレア!」
「お嬢様!」
クレアを呼ぶ焦ったサファイア公爵と慌てる幼いアンソニー。そんなことは気にせずクレアは無我夢中で走る。クレアは林に入り木の裏に隠れて泣いた。こんな夜の中誰も林に入らないからと思いクレアは泣いた。最初はリーフたちの家に行こうとしたが夜も遅いから諦めたのだ。
「だいじょうぶ?」
すると、木陰から声がした。声の方に顔を向けるとノエルよりも濃い赤のビクトリアレッドの髪にアクアよりも濃い紫のロイヤルパープルの瞳を持つクレアより少し背の高い男の子が話しかけて来た。
「俺、○○○○○・○○○○○○!○○○って呼んで!」
「、、、クレア。グレイシア・サファイア」
すると、その男の子はクレアの手をそっと握った。
「クレア、素敵な名前だね。まるで本で読んだ雪のようだ」
「、、、雪。見たことないの?」
その男の子はポケットからハンカチを出してクレアの涙を拭った。
「俺の国には降らないからね」
ここでクレアは疑問を持つ。エルセノアでは毎年ではないが雪が降る。なんなら、去年降った。見た感じからしてクレアより年上で雪を見てないというのはおかしいのだ。
「エルセノアの人じゃないの?」
「エルセノア?ここってエルセノアだったのか!?」
その男の子は訳の分からないことを言っていた。
「、、、、、、エルセノアの人じゃないの?」
クレアはもう一度同じ質問をする。
「違うよ、俺はその隣の国から来たの」
クレアは驚いた。幼いクレアでも結界の話しはさせられていた。エルセノアの結界を破れた者が居たと言う事実。それと同時にクレアに1つの考えが思い付く。
「、、、刺客?何が目的なの?」
その男の子の手を払いクレアの目付きが怖くなり。護身用の小さな刀をポケットから出し構える。悪い人=刺客からクレアを守っているとサファイア公爵から言われていた。
「違う、違う!」
「刺客はみんな息をするように嘘を付く。信じられない」
クレアは次の瞬間、その男の子に襲い掛かる。しかし、その男の子は軽々しくバク転をしてクレアの攻撃をかわす。クレアは負けじとその男の子を狙うがかわされ続け、最終的に刀を持っていた手を取られてしまった。
「どうして、、、。何者だ」
「俺は貴族。クレアと同じだよ」
クレアは目を見開いて、手から刀が抜ける。
「どうして、私が貴族って、、、」
その男の子は優しき微笑み、そっとクレアを座らせてくれた。
「サファイア家はこの国の貴族の家系それに騎士として有名だからね」
「お父様はそんなにも有名なのね、それなのに私は、、、」
クレアはさっきのサファイア公爵の特訓を思い出して、目に涙が溜まる。それを見た男の子はクレアをそっと抱き締める。
「クレアは偉いよ。今まで一所懸命頑張って来たんでしょう?凄いよ!」
「私、偉いの?」
「うん!今までたくさん頑張った、よくできました!」
クレアは今まで当たり前のように騎士の特訓をしていた。でも、それはサファイア家は騎士の家系と言うレッテルがあったためだ。誰にも褒められなかった、誰にも理解してくれなかった。それなのに今日初めて会ったばかりの男の子に、何も分かって居ないはずなのに。でも、心のでどこか、ずっと誰かに言って欲しかったことをその男の子は言ってくれた。それがクレアは嬉しかった。
「今は思いっきり泣いて嫌なことは忘れよう、ね?ここには俺しか居ないから」
クレアはその男の子の優しい言葉と温もりに安心してその男の子の胸の中でさっきより思いっきり泣いた。




