攫われた皇子と王女
クレアは腰に剣をぶら下げ、そのまま馬小屋に行った。スピカの愛馬、ルールーを引きつけ、スピカはノエルの手を借り馬に跨った。そのまま、ルールーの手綱を引き林に向かって歩き出した。林に行くのには、街を通らないといけないためゆっくりと周りの人を避けながらクレアは馬を引いた。
「あ!スピカお姉様だ!」
「見て見て、綺麗なお花を見つけたの!スピカお姉様にあげる!」
街の小さな女の子達がスピカに近づき、赤やピンクなどのカラフルな花を差し出した。
「綺麗なお花ね、ありがとう。大事にするわ。」
スピカは微笑みながら花を受け取り、女の子達の頭を撫でた。
「クレア師匠!クレア師匠!聞いて、俺ね教わった体術で妹を守ったんだぜ。」
「僕なんか、剣術で泥棒を倒したんだ。」
今度は街の小さな男の子がクレアに近づき、クレアに教わった子供用の体術や剣術を街や自分の周りの人を助けたと自慢している。
「お!偉いぞ。これからも鍛錬を続け、大切なものを守りなさい。」
クレアは膝付きながらしゃがみ込み、男の子たちの肩を添え、そして頭を撫でた。そんなことをしながら歩いて行き、林に着いたためそのまま林に向かって歩き出した。林の中を歩き、ちょうど川が見えてきたので近く木の枝に手綱を結んだ。
「ありがとう、ルールー。ゆっくり水を飲みながら休んでね。」
スピカはルールーの身体に頭を付けお礼を言う。
「主人様、ドレスが濡れてしまいますよ。それに疲れたでしょう、私たちも休憩にしましょう。」
クレアの言葉に答え、スピカは木の影に腰を下ろした。
「クレア、今は誰もいないわ。普通に戻っていいよ。」
クレアはそっと微笑んでスピカの隣に腰を下ろして、スピカの肩にもたれかかった。
「ねぇ、スピカ姉様。私本当にあんな奴と結婚するのかな。」
「そんなことさせないわ。リーフ兄様もノエルももちろん私も、大事な妹をあんなクズに渡したくないわ。それに、
小説のシナリオ通りにいってないわ。まだ、未来は変えられる。」
そう、この世界では小説のシナリオ通りに進んでいない。今の時点では登場人物は変わってはいないが、クレア達が生まれた瞬間からもうシナリオは狂っていた。本来の彼女らはこの小説の中では兄弟なのだ。そして、このエルセノア王国の王族の子供なのだ。しかし、彼女らが生まれてまもなく魔黒鳥と言う翼を広げれば3メートル以上の大きさで口から炎を吹いたり、人間に化けることができる魔獣に攫われたのだ。しかし、サファイア公爵、トパーズ公爵、エメラルド公爵、ルビー公爵が魔黒鳥の心臓を打ち抜き彼女らを助けた。魔黒鳥が彼女らを襲ったのは彼女らに秘める大きな魔力だろう。彼女らは王族、早く城に届けた方がいいとも思ったがこのまま渡せばまた彼女らが危険な目に合ってしまう、しかしはたからすればこれは誘拐に近い行為だ。でも、公爵たちは自分たちが罰を受ける覚悟で彼女達がせめて自分の身を守れるまで育てる覚悟を決めたのだ。公爵たちは昔から仲がよかったので彼女らをよく一緒に遊ばせて友達以上の関係にしたのだ。彼女らがちょうど、6歳の頃前世の記憶を思い出した。