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おふざけ

「これを見てくれ。俺はオルメタのメンバーだ。」


ろうそくの炎が俺と少女を照らしてその影が揺れている。気分の問題だが炎で一応の自衛をしながらネックレスを見せた。暗闇の中でキラキラと輝く。


これでなんとか和解できるはずだ。


「ああ!あなたは、仲間だったのですね!さっきは首を締めてしまったこと、このアリスとしたことが間違えてしまいましたね。それで、何の用です?」


女性は顔を上げて俺の方を見た。笑っているのだろうか。さっきは喉を潰されかけたし明らかに危険な香りがする。誰に言われなくても猛獣には近づかないように彼女にも近づいてはいけないような気がする。


「それなら良かった。俺の名前はレンだ。レイアから呼ばれてきたんだ。ここに9時に来て欲しいってことでね。」


「なるほど!それじゃあ後1時間くらいは来ないでしょう。この私があなたをいいところまで連れて行ってあげますよ。」


彼女はいきなり俺の手を引っ張った。力のない俺では引っ張られるまま地下室から出ることになった。


「一体どういうことなんだ?あと1時間って何のことだ。」


彼女は俺のことを引っ張りながら振り向いた。髪が大きく揺れて手に当たる。


「レイアはよく遅刻するんですよ。この私を待たせるなんて酷い話でしょう?いい酒場があるのでそこで待ちましょう。」


どうしてこんなに彼女の気分は高揚しているのだろう。次々と話を進めながら片手では俺を引っ張っていっている。何か取り憑かれてるみたいに動いている。それともただ感じたままに行動しているだけか?


「一回手を離して。大丈夫、自分でついていける。」


俺はそう訴えたが彼女はとてもまともに聞いてさえいない。いや聞こえていないという方が正しいようにさえ感じる。


犬がご飯を食べてる時のように周りの話は入ってきていないのか?


すれ違う人がいるたびに自分達が注目されていた。別に目立ちたいわけでもないが男性のことを同じくらいの女性が引っ張っていたら流石に注目されてしまう。


まだ来たことのない廃墟外の最奥地。街の外れまで来た。この街は一応昔の名残りで堀が残っていてそこのほぼ端だ。後数十メートル先には林が広がっている。


盆地のように囲われた地域ではあるがかなりの大きさの街であるためよく他の場所から逃げてきた人などはよくここに住んでいる。最近はその数が増えているという話もある。


「ここよ!」


俺は周りの小屋と比べれば多少なりともまともな建物の前に立っていた。しかし外階段はやはり今にも落ちてきそうだ。ここに何があるのだろうか。


ただ朝ということもあり、また街の端でもあるため日の光はしっかりと建物を覆ってジメジメとした雰囲気ではなさそうだ。


「何の店なんだ?」


「酒場よ!それもこの街で1番のね。」


彼女は階段を登った。俺も壊れそうなので極力手すりには力をいれずに極力すり足を意識して移動した。


「この階段から落ちる酔っ払いとかいないのか?ここで怪我人が出てたら笑えない話だ。」


2階の扉を開けると階段があった。


上った後すぐに降りるのか。なんとも不思議な構造だな。まあ廃墟街って事で治安も良くないから夜とかに盗みに入るのを防止させるためとかそんなための構造なんだろう。


階段を降りた先の扉の奥からは声が聞こえてきた。


何かの音楽だろうか?話し声を聞こえる。扉の先にはいくつかのテーブル席とカウンター。それにバーメイドが酒を調合していた。窓は無く部屋全体は暗い雰囲気なのにどこかろうそくの炎が部屋を明るく照らしている。いや人の多さから明るいと感じているだけかもしれない。


「どう?この私が一番おすすめする酒場だけど。最高でしょ?」


「まだお酒を飲んでないから最高かどうかなんて判別できない。それにあんまり好きじゃないんだ。バーなんて自分から行ったことはないから新鮮ではある。」


「バーメイドさん?蜂蜜酒お願いします!」


バーメイドは黙って頷くと酒を調合し続けていた。しばらく酒が来るのを待っていたが俺の元に来たのは面倒事だった。


「なあ兄ちゃん、少しゲームをしないか?」


酒に酔っているのか呂律のまわっていない男は俺らの席まで来て勝手にトランプカードを広げ始めた。何をしているんだ?


「おい、待ってくれ。俺はトランプなんてやるつもりはないし他の席でやって欲しいって感じだ。」


俺がトランプをやりたくないと言っても男は聞く耳を持たなかった。酔うほど酒を飲んだことは一度もないがやはり飲まない方が幸せに暮らせそうだ。


「いくら賭ける?俺は今金がないが300クラウナ程度なら賭けられる。おいみんな見てくれ。俺がこのふざけた兄ちゃんをボコボコにしてやるよ。」


男は酒場全体に響き渡るように大声で言った。これが酒場の悪ノリというやつだろうか。ほとんどの人が俺らの方を向いて今から始まるであろうカードゲームに対して注目している。


「それで?何をやるんだ。それくらいの賭けならやってもいいが何のゲームか分からなければプレイできない。」


「おー!頑張って。」 


だめだ。アリスは俺が賭けをやることに賛同している。もう引かないなら仕方ない。この男から金をむしり取ることになるかもしれないが全力でやるしかない。










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