1:初めての仲間は…(2)
「へえ。世界を回りたくて冒険者になったのか。俺と同じだな。俺も世界のいろいろな所を自分の目で見たくて冒険者になったんだ」
「本当!まさか同じ考えの人と会えるなんてうれしい」
「俺もだよ」
早速、依頼を受けた二人は薬草が生える場所へと向かう途中に話している中で二人はすっかり意気投合していた。年も聞くと同じなので敬語をやめて二人ともため口で話している。
レイがセレスに話を聞くところ、どうやらセレスはかなり遠い国からやってきたようでレイと同じようにこの世界を回るために冒険者になったとのことらしい。
まさかのレイとの同じ動機にレイはとてもうれしく感じていた。
そして二人は町の外の平原に出て、薬草採取を始めることにする。
「それじゃあ、ちゃっちゃと依頼を済ませるか」
「そうだね。私まだ今日の宿決めてなかったんだよね」
「俺も一緒だわ。これ終わったら探すか」
二人は草原の中で薬草を探し始める。今回の依頼の薬草は日当たりのいい場所に生える。ごく一般的な薬草である。目標量は最低量はカゴ一杯分だが、それ以上をもっていけばその分だけの報酬はもらえる。
「でも薬草を探すといっても私は薬草の見分けがつけることが出来ないんだけど…」
「大丈夫だ。この薬草なら俺の村にも生えていたし区別はつくぞ」
レイは草原の中から薬草を見つけ、それを引き抜くとセレスに薬草を見せながら特徴を教える。
「この薬草の特徴は葉の先が二つに分かれているのが特徴だからそれをポイントにして探したらいいと思うぞ。それにこれは繁殖力が強いから一つ見つけたら周りに結構生えているはずだ」
「分かった。それで探してみる」
二人は薬草を採取していく、草原を歩いていると薬草は探したら簡単に見つかっていく。
「この調子だと。すぐに集まりそうだな」
レイは集めた薬草を見ながらそう呟く。
「それよりもセレスはどこまで行ったんだ?」
周りを見渡すとセレスの姿が見当たらない。
「もしかして森に行ったのか?」
近くには森があるのでもしかしたら薬草を探しにそちらのほうに行ってしまったのかもしれないとレイは考える。
レイは森の近くまで行ってセレスの名を呼ぶ。
「おーい!セレスー。どこだー?」
「………」
しかし森からは返事は返ってこない。その時であった。
「あれは…」
その時、レイは森の奥のほうにセレスが歩いていくのが見える。
この森はいくら町に近い森だといえど、魔物は生息している。
セレスの装備は確か短剣一本だけであったはずだ。さすがにそんな装備で森の中に行くのは危険だ。
「セレスか?森に入ったら危ないかもしれないのに」
レイはセレスを連れ戻そうとセレスの後を追いかけていくのであった。
「どこに行ったんだ?」
あの後セレスの後を追ったが途中で見失ってしまい今は森を見わたしてセレスの姿を探している最中である。
「明るいうちに探さないと…。暗くなったらやばいよな。ん…?」
その時、レイは目の前に何かがいるのに気づいてすぐに木の陰に身を隠して陰からこっそりと向こうの様子を確認する。
そこにいたのはセレスであった。しかしセレスだけでなく、セレスに向かい合うように一人の男がいる。
(誰だあれ?)
レイは疑問に思いながら様子をうかがう。あの男がセレスを襲うようならすぐに飛び出したが、見た感じそのような感じではない。
男はセレスの前に膝まづくとセレスに話しかける。
「どうか戻っていただけないでしょうか?」
「いやよ。私はこの世界を回ると決めたの。あなたが何と言おうとやめることはないわ」
「ですが!危険が多すぎます。もしものことがあったら私はっ…!どうかお考え直しください、魔王様!」
「!?」
レイがまさかの言葉に驚く中、セレスは冷静に男に返す。
「大丈夫。私の正体はばれていないし大丈夫よ。もしバレて危険な状況になったらすぐに戻るようにするわ。だから今は見逃してくれないかしら」
「そうですね…」
二人が話す中、レイは一度頭の中を整理する。
(ちょっと待てよ。あの男はセレスのことを魔王様と言っていた。それにセレスもそれに何も反論していなかった。セレスがあの魔王?嘘だろ?)
落ち着こうとするがどうも心が落ち着かない。二人の話が本当なら目の前にあの魔王でいるのである。落ち着くなんて無理な話である。
魔王とはこの世界に存在する魔人族の王のことを指す。昔、人間と魔人は終わりなき争いを続けており、そのとき人間の恐怖の象徴となったのが魔王である。魔王の圧倒的な力で多くの人間が蹂躙されていった。
今は休戦状態になっているが、今でも魔王は人間の恐怖の象徴である。
(とにかくどうしたらいいんだ?)
「ん…?」
レイがどうするべきかとあたふたとしていると男がレイのほうに視線を向けて叫ぶ。
「おい!そこにはいるのは誰だ!出てこい!」
(うわっ!ばれた!どうする、どうする?)
レイは何とかしてこの場から逃げる方法を考えていたが魔王を前にして逃げることは無理だと思い、あきらめて出ることにする。
レイが木の陰から出るとセレスが驚いた表情でレイを見る。
「レイ!?どうしてここに?」
「よ、よお。偶然だな…」