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07 鳳零凰(ほうれいおう)と子供

 鳳零凰(ほうれいおう)は男を串刺しにして弄んだあと、朱殷(しゅあん)族のその子供を見降ろして、何やら喋っていたそうだ。


 チェイチェイは気絶していて、朱殷(しゅあん)族の子はまだ言葉を理解できてなかったから鳳零凰(ほうれいおう)がこの時なんと言っていたかはわからないが、鳳零凰(ほうれいおう)が子供の枷を外し終えるころに、王宮調理師たちが沢山の料理をそこへ運んできたそうだ。

 目の前に差し出された料理に子供が手をつけなかったから、鳳零凰(ほうれいおう)はその料理を挟んだ向かい側に腰を下ろし、何も言わずそれらを食べ始めたんだと。

 その光景を涎を垂らして眺める子供に鳳零凰(ほうれいおう)は掴んだ肉料理を割いて半分差し出してみると、震えた手でそれを受け取り、子供はやっと食べ物を口にしたそうだ。

 それから、たがが外れたように目の前の十人前ほどある料理をほとんど一人で食べきったみたいだ。


 鳳零凰(ほうれいおう)はその間に子供を連れてきた男の死体を片付けさせ、チェイチェイを宿舎に運ぶように指示を出した。


 城の者がチェイチェイを抱き上げようとすると、子供は傍に行き、その顔をじっと見つめていたそうだ。それから食べていたものを半分にちぎってその腹の上に乗せた。そして、鳳零凰(ほうれいおう)にも同じように半分にちぎって渡したそうだ。

 鳳零凰(ほうれいおう)はそれを笑って受け取り、それから子供を肩に担ぎ、城の外へ跳んで行った。


 鳳零凰(ほうれいおう)が子供を連れて向かったのは凰華(おうか)軍が手入れをした後の朱殷(しゅあん)の村だった。


 子供は村に着くと整備され少しだけ様変わりした村を歩き回り、それから自分がいた家に入っていった。そして、自分の、たぶん母親の死体が無いことに気付き部屋をひっくり返す勢いで探し始めた。それで鳳零凰(ほうれいおう)は遺体安置所に連れて行ったそうだ。

 遺体は全て首から下は無い状態だったが、そこには代わりにその遺体の衣服がきれいに置かれていた。

 母親らしき女の顔を見つけた子供はその遺体の腹の上に座り、頬を撫で、髪を梳いたそうだ。鳳零凰(ほうれいおう)はしばらくそのままにして、子供が先ほど母親を探した家に戻り、部屋の中を調べて回った。


 朱殷(しゅあん)族は子供を作らないように努めていたことを知っていたから、それでも望まれて生まれてこようとしていた子供に何か用意してあるものは無かったかと細かいところまでを見て回った。

 ベッド脇のチェストにあったオルゴールのようなものを持ち上げた時、中で金属片が当たる音を耳にしたそうだ。

 最初はそれが壊れているのかと思ったが、ふたを開けてみるとそこには銀色に光った小さなプレートが入っていた。それを手にした鳳零凰(ほうれいおう)はその意味に気付いたんだと。

 村の子供は皆首元にチェーンがかかっていた。そしてそのチェーンには同じようなプレートが付いていたそうだ。


 鳳零凰(ほうれいおう)はそのオルゴールと銀のプレートを持って子供の元へ戻り、子供にそれを差し出した。だが、子供はその意味も解らずただ黙ってそれを見ていただけだったので鳳零凰(ほうれいおう)はそのオルゴールを鳴らしてみたそうだ。


 すると子供の目からは涙が溢れ、言葉にならない声を出して泣いたんだと。


 鳳零凰(ほうれいおう)は自分がつけていた首飾りの一つをちぎり、その紅い紐をプレートの小さな穴に通して子供の首にかけてやったそうだ。泣いてる子供の肩を抱き、一晩それに付き合って、朝になる頃眠りについた子供を抱いて城に戻ったそうだ。


 帰ってから数日間そこ子供は寝ていたそうだ。目覚めた時、チェイチェイは泣きながら自分の作ったご飯をたらふく食べさしたと言っていた。


 お腹いっぱいになった子供と一緒にチェイチェイは鳳零凰(ほうれいおう)に謁見した。


「やっと目を覚ましたか、絶影(ぜつえい)


 チェイチェイがする動作を横で見よう見まねで繰り返す子供に鳳零凰(ほうれいおう)はそう呼びかけたそうだ。


「その首飾りの文字がお前が親から託された名だ。大事にしろ」


 子供はその時初めて「絶影(ぜつえい)」の名を授かってこの王に忠誠意を誓おうと心に決めたらしい。


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