06 冷酷で無邪気な王
今回の内容はグロテスクなのもありますが、残酷なので、大丈夫な方だけ読んでください。
鳳零凰の謁見の間に通されたチェイチェイは恭しくお辞儀をし、それから旅の道中に訪れた街や国の話とともに仕入れた食材の話をした。
鳳零凰は玉座に座り、今朝採れたばかりの桃のような果物を片手に食べながら話を聞いていたそうだ。
何かを食べながら話を聞くときの鳳零凰は大層機嫌のいい表れだと言っていた。
だが、チェイチェイが血鬼族の名を口にしたとたん、その表情は一変した。チェイチェイはごくりと喉を鳴らして首が飛ぶのを覚悟した。
チェイチェイは恐怖のあまり言葉と喉を詰まらせながらたどたどしく村に辿り着いた経緯と村の状態、そして生き残っていた子供のことを話したそうだ。
チェイチェイはその場での斬首を免れた。鳳零凰がその事実をその目で確かめに行ったからだそうだ。
どうにも理解がしがたいが、まぁ、異国の話だ。
チェイチェイに粗方の場所を聞いた鳳零凰は地球では考えられないような脚力で、軽々とその地に向かって跳んでいったそうだ。そうして日が暮れるころにまたチェイチェイの待つ謁見の間に帰って来たそうだ。
それから国の軍を現地に派遣させ、村の遺体を安置する建物を建て慰霊碑を建てたんだと。
行方不明になった子供はチェイチェイの話から似顔絵を作って捜索したそうだ。
だが、凰華を含め鳳零凰の統治する六つの国の国土はあまりに広すぎてその子供を見つけることはなかなかできなかった。
一年経つ頃、鳳零凰はその子供に賞金を懸けた。生きたまま連れてくれば一生遊んで暮らせるだけの金額を出すというお触れを出したんだそうだ。
それがその子供だけではなく、統治国全土の子供たちを苦しめることになったんだがな。
国には城下町のような場所ばかりじゃないだろ。貧しい村だってある。そういった村の子供は貧しい両親に売られ、それ以外の子供も賞金目当ての者たちに攫われ、次々と王都へ連れていかれた。
その似顔絵の横の特徴には真っ赤な目と髪を持つと記されていたから、無理やり髪の色を染められたり、目元を隠されたり、ひどいものでは目をくり貫かれている子供もいたそうだ。
もちろん、チェイチェイがその子供の判定をしていたわけだが、もともと子供好きのチェイチェイは数日でその仕事に参ってしまい、鳳零凰に抗議をしに行った。子供が違うと判断されればその子供は王都を出た辺りで捨てられるか、殺されていた。
これでは国の子供全員が死んでしまうとチェイチェイは自分の命のことなど考えず鳳零凰に歯向かった。
それでも、鳳零凰の考えは変わらなかった。
「子供はいくらでも生まれる。今いる子供が死んでもこれより生まれた赤子は対象にならぬ。問題はない」と言ったそうだ。
チェイチェイは早くその子供が見つかることを祈ったが、一向に見つかる気配はなく、幼い子供たちが次々に犠牲になるだけだった。
そうして半年が経つ頃、ついにその子供が現れた。
その子供を連れてきた男にチェイチェイは嫌というほど会っていた。子供を連れてきては違うと告げ、また連れてきては違うと告げていた。男が毎回連れてくる子供は皆木製の手枷をかけられ、髪を染められ、目は殴られて腫れ、赤く充血していたそうだ。
チェイチェイはその男に何度も子供に危害を加えるなと注意はしていたが、鳳零凰のお触れは生きていればいいと書いてあり、それを咎めることも裁くことも許されなかった。
差し出された子供はおよそ十くらいの子供で、その子供は手枷だけじゃなく木製の首枷と足には錆びた鉄の鎖がかけられ、それぞれがすべて同じく錆びた鎖でつながれていたそうだ。
髪は確かに赤かったが土埃だらけ、目は古びた血のような色だったそうだ。
チェイチェイが朱殷の村で会った子供が成長すればこれくらいではないかと、一度鳳零凰に謁見を求めた。
鳳零凰はすぐにそれを許し、男共々謁見の間に招き入れた。
無作法なお辞儀をして、男は子供を鎖で引き摺るとその子供が特別な子供だと告げたそうだ。食事をしなくても餓死することがなく、鞭や刃物で傷をつけても数日で再生する様を見世物として連れまわしていた商人から預かったと。そして、その場で腰の刀を抜き、子供の背中から腹へ勢いよく串刺しにして見せたそうだ。それを何度か繰り返すうちにチェイチェイは気を失ったそうだが。
謁見の間から悲鳴が聞こえなくなるころに鳳零凰は男に褒美を差し出した。そして、気を失ったチェイチェイと、倒れた子供の目の前で男に同じことをして遊んだそうだ。
男は子供と違い二刺しで気を失ったらしいが、その男の首を持ち上げ、男が子供を刺した数だけ鳳零凰はそれを繰り返した。




