05 鳳凰の統べる国
チェイチェイは約半月かかってようやく自分の住む王都に帰りついたんだ。
でかい川に囲まれただだっ広い平原にあったその国の名前は「凰華」だ。歴代の王たちは皆「鳳凰」の名を継ぐその世界では古くからある国の一つでな、凰華はその周りにある五つの国を束ねてたんだと。
都を出てから半年。雪解けの春先に旅に出て、それからいろいろな土地を回り、山々を渡り歩いての珍しい食材の調達はなかなか大変なものだったらしい。
それぞれの土地の特産物などはその土地の商人と掛け合い、定期的に王宮に仕入れてもらう手筈にしてあったそうだ。
王都は城塞都市で周りは高い壁に囲われていて、厳重な門番がいる検問を通り城下へ入るとにぎやかな下町が見えてな。下町の中心街屋台通りを抜け、市場に差し掛かってもチェイチェイは顔を上げてはまた伏せ溜息をつく、を繰り返したらしい。
そうこうしているうちに周りの建物はどんどん高く色も煌びやかになって、ついに赤い石畳の城壁に辿り着いていた。その五十メートル以上ある壁の屋根の上からチェイチェイの名前を呼んで子供が一人飛んできたんだ。そんなのが日本にいたら化け物だな。
その子は朱殷の子供より大きくて名前を「蒼逢」と言った。蒼逢は他人の脳を操ることが出来る「白群族」って言ったかな。耳が少し尖がっていて肌は青みがかった白で、瞳の色は空よりも青いらしい。
蒼逢を背中の鞄に振ら下げたチェイチェイは、浮かない顔で王宮敷地内に入って、自分の職場の調理師仲間に旅先での仕入れ先リストなんかを渡してから宿舎に帰った。それから王の謁見に備えて身支度をしたそうだ。
蒼逢はそれにずっとくっついてたって言うからチェイチェイは子供好きでもあり子供に好かれる奴だったんだな。
王に会うのに正装をして謁見の間に向かったそうだ。
王の名前は「鳳零凰」、真っ赤な艶のある髪で、長さは腰くらいまであって宝石をいくつか耳元の髪に結いこんであった。赤や黄色の着物の様な羽織を着ていたらしくて、その煌びやかな見た目に負けない金色の瞳があると言っていた。
冷酷無残な王だと他国からは思われていたそうだ。自分の意にそぐわない行動をしたものは謁見の場で即座に首を切る、自国に従わない国は潰す、それが鳳零王だった。
この時のチェイチェイはおそらく朱殷族を逃がした罪で首を切られると思っていたんだろうな。