01 不死身の種族
相当内容はグロテスクです。
グロテスクな描写はさけていますが、想像力が豊で四肢四散、食人などが苦手方はご注意を。
絶令が言うには、昔からその世界には様々な種族の生き物がいたらしい。
人はもちろん存在し、こっちの世界で言う鬼や悪魔みたいな見た目の者から、天使のように羽根が生えているものまで様々だったと。
動物も勿論存在していたが、地球上の生物とは少し異なると言っていた。
その世界に海はなく、広大な大地の大きな山々から滝や川が流れそれが平地を潤していたそうだ。そしてその広大な大地に国がいくつも存在して争いを繰り返してはその国々の形は幾重にも変化し続けていたんだと。
様々な種族の中には争いに干渉しない種族も多くいたそうで、そんな種族は力の強い国に滅ぼされたり、取り込まれたり、地形のお陰でそれらを免れたりするものがあったんだと。
そして、その中に、不死身の一族と呼ばれる種族があった。
それが「血鬼族」だ。
その血鬼族が不死身の一族と呼ばれているのは寿命の長さとその回復力の早さ故だった。寿命は平均で二千を超え、戦いで四肢が飛び散ろうとも個人差はあったがものの数分でそれを再生させることが出来たらしい。そして、その原動力は他種族を喰うことだと言っていた。地球の話で言うと食人に値する行為だったと思う。他の種族や人を生きたまま喰うことで力を得ていたんだ。
その血鬼族にも数種あって、力の強く気性の荒い赤銅族、動きが素早くて穏やかな真朱族、そして、死ぬことが出来ない朱殷族がいた。
絶令を生んだ者はこの不死の種類だったようだ。
朱殷族は不死ではなく「死ぬことが出来ない」と絶令は言っていた。頭を吹っ飛ばされても、体を粉々にされても、死ねないらしい。
「核」と呼ばれるものが身体に存在し、そこを破壊されれば死ねるという噂もあったようだが、痛みを我慢して身体中を切り刻み探しても、それは見つからなかった。だから、朱殷族は死ぬことを諦めたようだ。
長い年月、とてつもなく長い年月だ、それを生き続けることが幸せなことではないと悟ったその種族は晩年死ぬことを目標に薬やら病気の研究をしていたそうだ。
子供を産んで子孫を残しても、その子供たちも不死になってしまう。そして自分たちと同じ永遠の苦痛に耐えなければいけないと、極力子孫を残さないように努めていた。
そして、ある日、それが発症した。
病名は付いていないらしいがそれは確実に伝染病だったようだ。
病名が付かなかったのはその病気で朱殷が絶滅したからだ。
その病気が発症しているところを見た者はいなかったらしいが、絶滅した後の朱殷族を見た者の話だと「死体は全て生きていた」らしい。どうにも理解ができないが、死んだように眠っているだけに見えたと。そして「その死体すべてが何者かに喰い尽くされていた」とも言っていた。
理解しようがない。死体なのに生きていたと言ったり、生きていたと言ったのに喰い尽されていたと言ったり。解らないことだらけだ。
だが、見た者は見たことしか言えないだろう。
だからきっと。それは真実なんだ。
そして、ここからは、その光景を見た者と、朱殷族の生き残りと、それらの話を聞いた絶令の推測の話になる。
朱殷族でその病気が発生したのはまず子供からだったようだ。
少ない子供のうち、一人がまず、何らかの症状で倒れ、そして、目覚めなくなった。そのうち、その家族が、隣人が、次々に眠りについて目覚めなくなっていった。そして時がどれほど過ぎたかはわからないが、呼吸をしなくなり、心臓も止まった。
それを確認した他の朱殷たちはみんな歓喜したに違いない。永い苦しみからやっと解放されるのだからな。
だが、不死の一族とあり身体が朽ちることはなかった。
そして、その病気がどうやって感染するのかもわからなかった。だから、残された者たちはただ、待つしかなかった。
もともと血鬼族たちは人里離れた地域に住んでおり、たまに食事のために自分たちの村を離れ、狩りをして帰ってくるような種族だったから、感染がいつ始まっていつ絶滅したのかは誰にもわからない。
感染を待つ者たちが何年も待ち静かに絶滅していったのか、それとも一気に感染して亡くなったのか、喰い尽された死体でさえ朽ちないのだから、誰にもわからないままなんだ。
だがそこで、偶然の奇跡が起こってしまった。
妊娠したままその病気にかかった者が一人だけ、いたんだ。
そして、その母親は静かに眠って、それから息をしなくなり、心臓を止めた。
だが、朽ちることのない身体はその胎児に栄養を与え続けた。そして、その胎児は大きくなり、母親の腹を喰い破って出てきたんだと。
赤子は眠ったように死んでいる同族の遺体を、腹の空くまま、満足するまで喰い続けた。
最初は柔らかな腹や内臓を、その後少し成長すると、手や足の肉を。ほぼすべての朱殷の顔がきれいに残っていたのは頭蓋骨が硬くて食べるのを諦めたからなんじゃないかと思う。
そして、食べるところがなくなる頃、その赤子は子供と呼べるまで大きくなっていた。




