10 初めての食事
絶影がどの程度の痛みを覚悟していたかはわからないが、鳳零凰は躊躇などしなかったようだな。
血鬼族の回復のために大量の生きた家畜を用意して、念のための人肉として罪人を何人か待機させてから鳳零凰は絶影を食べたそうだ。
ああ、そういえば、歯の話だがな、血鬼族はもともと肉食だから立派な牙が生えてるんだと。それと絶影の前歯は小さくて皆鋭く尖っているらしいが、絶令は犬歯の部分が牙になっていたくらいで前歯とかは普通だったな。鳳零凰にも牙があり、しっかり肉を噛み千切れるようになっていたそうだ。
鳳零凰は立ったままの絶影の首元に噛みついて肉をそのまま食べたそうだ。それから腹を裂いて内臓もな。
血鬼族がそうなのかどうかは知らないが、絶影の肉はとてもおいしかったらしい。
鳳零凰は一口目を食べると止まらずに食べすすめたと言っていたからな。
絶影は立っていられなくなって、それから気を失うまで一言も悲鳴を上げなかったそうだ。
食べ終わった絶影の身体は家畜たちの生き血を溜めた風呂桶のようなものに入れられて絶影の部屋に運ばれた。生肉を入れたところで気絶してる状態じゃ食べられないしな。絶影の身体はその血を吸収して再生していったらしい。
初めての食事から三日後に目を覚ました絶影は起きてすぐに身支度も整えず鳳零凰に会いに行ったんだと。
玉座に座る鳳零凰を見つけた絶影はほっとしてその場でしゃがみ込んだらしい。自分の身体を食べた人がどうなるか、とても心配だったんだな。鳳零凰が声をかけると安堵感からか涙を流したそうだ。
自分は生まれた時から人の肉を食べて生きていたが、鳳零凰は人の肉、朱殷族の肉を食べるのは初めてだったしな。自分を食べて万が一のことがあったらと想像したんだろう。
鳳零凰は泣いている絶影を抱き上げて全身が元に戻っているのを確認してから、感謝を伝えたそうだ。
それから食堂に連れていき、チェイチェイにありったけの食事を用意させ絶影に食べさせたんだと。
並べられた十人前ほどの料理を平らげた絶影は何度も鳳零凰に聞いたそうだ。
「ねぇ!おれ、おいしかった?」ってな。
鳳零凰がおいしかったと言うと、絶影はとても喜んだ。
全く、自分が気を失うほど食べられたのに、大した奴だ。
さらに鳳零凰が絶影を食べたことで力が漲ると聞いた絶影は、次はいつ食べてくれるのかを聞いたそうだ。
食べた分だけ寿命が延びるかどうかはまだ解らなかったが、それでも絶影は鳳零凰に長生きしてほしかったんだろう。
だがその頃鳳零凰はそんなに頻繁に絶影を食べることはなかったそうだ。絶影がまだ幼かったのもあるが、その頃はまだ鳳零凰も若く、国も安定していたからだろうな。




