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トワイライト(迂闊に読むと心がしんどいシリーズ)

世界の危機をもくろむ王子サマの友人について

作者: リィズ・ブランディシュカ



「本気でやるのか? この作戦」

「当たり前ですよ。王子サマ。あなたは英雄になりたいのでしょう?」

「確かにそうだけど」


 僕の友人の性格が悪すぎる。


 まあ、世界を危機につき落としてから、自作自演で英雄になろうとしてる僕が言える事じゃないんだけど。


 それにしたってひどすぎる。


 あいつとの出会いは子供の頃の事だ。


 王子様としての勉強に嫌気がさしていた僕の前に、あいつがふらっと現れたのだ。


 自由いなりたいなら、英雄になって強大な力を手にしろって。


 そう言ってきた。


 対処はただのたわごとだと思ってたけど、あいつは頭が良いらしくて、妙に具体的な計画を教えてきはじめた。


 その内、何度もあいつの話を聞いてる内に、僕の気持ちは変わってきた。


 あいつの考える事はどれも完璧で、穴なんてみつからなかったから、もしかしたらできるんじゃないかって、思えてきたんだ。


 だから、僕達は共犯者になった。


 人には言えない悪い事をたくさんして、自作自演で富や権力や名声を培ってきた。


 あいつには感謝している。


 あいつのおかげで、もうすぐ僕は夢を叶えられそうなんだから。


 でも、それでもやっぱり、どうかなと思う。


 だって、あいつ「仲間に告白しろ」だなんて言ってくるんだ。


 仲間っていうのは、たまに一緒に行動する女性で、盗賊で犯罪者。

 アメリアっていう名前を名乗ってるんだけど、それは本名か分からない。


 計画の最期の段階で、アメリアに邪魔されたらまずいから、油断させて背中から切れって。


 そのために、偽の婚約指輪まで用意してきて。


 僕が言えた事じゃないけど、かなりひどくないか?


 愛の言葉をささやいた相手に裏切られるなんて、僕だったら絶対キレる。

 おそらくアメリアもかなりキレる。

 ひどい事になる。


 見かけによらず、職業にもよらず、優しい所がある彼女だけど、さすがに今回ばかりは本気でキレるだろう。


 僕は今まで、町を壊滅させる、とか。

 そのせいで孤児になった少女を見張るとか。

 自作自演で魔物に町を襲わせるとか、色々やってきた。


 でも、これはそういうのとはわけが違うと思うんだ。

 うまくはいえないけど。


「本当に指輪を贈らなくちゃだめなのか? 何でよりによってこれなんだ」

「女なんてそんなものだからですよ。いくら嫌っている相手でも、好かれていたと思えば、多少はなびきます。馬鹿ですから」

「お前、何か女性に恨みでもあるのか?」


 けど、あいつは自信満々だった。


 これまであいつの言った事は失敗した事がない。


 だからきっと、今回も成功するのだろう。


 僕はため息をつきながら、贈り物のそれを懐にしまった。


 僕はこれから一人の女性を、罠にはめにいく。

 その事実と、文字面の悪さに表情が苦々しくなる。

 たくさんの人を死に追いやっていながら、たった一人の人間を騙す事を躊躇うなんて、おかしなものだ。


 まさか、僕は本当はアメリアの事を?

 いや、そんなわけない。


 僕はあいつと分かれて、歩き出した。

 でもやっぱり、偶然の事故でポケットに穴でもあいて、贈り物を失くしたりしないかな、とか思いながら。



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