第8話 現れたるモンスター
紡村を背に構え、彼はーー伊達円は一刀でモンスターを倒していく。
次々と倒されていく蜘蛛型のモンスターたちは、血まみれで荒い呼吸を奏でている伊達円に恐怖心を抱いていた。
「アポカリプス、なぜあの男を仕留めなかった」
骸骨の仮面を被った男は黙視を続ける。
「黙ったままか。それでも良いが。お前があの男にどういう環状を抱いていようと、俺の計画の邪魔をするのなら殺すだけだが」
黒装束の男はアズウェル大森林へと足を走らせた。だが黒装束の男の足はすぐに止まった。それは黒装束の男の前に一人の男が立ち塞がっていたからだ。
その男は黒兜で顔を覆い隠し、全身黒色の鎧で身を包んでいた。
「誰だ?」
「残念だったな。ここでお前たちは死ぬ」
そこに立ち塞がった男は、黒色の光沢のある剣を黒装束の男へと向けた。
「鬱陶しいな。邪魔をするな」
黒装束の男は電撃を黒兜の男へと放つが、その電撃は剣の一振りで弾かれた。空へ舞う電撃は消失し、姿を消す。
その異質な現象に、黒装束の男は足を退いた。
「どうした。そんなに驚いてしまって」
「アポカリプス、お前も戦え」
骸骨の仮面を被った男は剣を構え、黒兜へと斬りかかる。骸骨の仮面の男は戦闘経験が豊富なのか、素早い身のこなしで黒兜を一方的に追い詰めていた。
鎧越しに伝わる衝撃に激痛を感じつつも、黒兜は剣を振るい骸骨仮面と剣を交える。
「所詮は防具だけ優れている素人、レッドプレイヤーの強さにはごり押しでは勝てない」
黒装束の呟く通り、黒兜は一方的に追い詰められている。素早い身のこなしとそれに対応する判断力、それらが兼ね備えられているせいか黒兜はサンドバック状態となっていた。
既に何度も攻撃を受けていた鎧の耐久値は既にゼロになりつつあり、破壊寸前。
「威勢だけは良かったが、それはあくまで仮の力。殺せ、アポカリプス」
「残念、罠魔法」
アポカリプスが一歩踏み出した瞬間、地雷が爆発したように巨大な爆炎がアポカリプスを包み込む。その隙に黒兜は鎧の耐久値を瓶に入った液体により回復させ、体勢を立て直した。
爆炎へ剣を構える黒兜、その前に爆炎をかきわけ、平然と姿を現したのは骸骨の仮面を被った男ーーアポカリプス。
「そう簡単にはいかないよな……にしても、足の一つは吹き飛んでほしかったものだな」
呼吸を荒くし、黒兜はそう呟いた。
彼が疲れる姿を嘲笑うように、骸骨仮面は呼吸の音もさせず、刃を黒兜へ向けていた。
さすがに相手にするには強すぎた。
黒兜は剣を構え、戦いを挑んだことに後悔していた。
(せめてもう少しだけ罠魔法を仕掛けておくべきだった。さすがに勝てない)
アポカリプスは勢いを止めることなく黒兜へ斬りかかる。
黒兜は兜の下で冷や汗をこぼしつつも、迎え撃とうと剣を握りしめ直したその時、紡村からアズウェル大森林、そして旧市街地にかけて巨大な正座が地面に浮かび上がっていた。
その巨大さ故、地上からでは何故地面が光っているのか理解できない。
驚いた黒装束の男は空を飛んで上から光っている全体を見渡すと、光はある正座を地面へ刻んでいた。
その光の形を見た男は、それがある正座だということを理解した。
「これは……天秤座。まさか、こんなところで会えるとはね。天秤座獣、ジャッジメン・トウ」
目映い光が色濃く増すとともに、光の中からは一体のモンスターがアズウェル大森林とそこを進んでいたモンスターは跡形もなく消失させて現れた。
そこに現れたのは巨大な天秤、天秤の中央部には時計が刻まれ、針は現在の時刻である午前四時を差していた。
まだ日は昇り始めたばかり、そんな最中に現れた天秤姿のモンスター、遥かに異質な大きさのそのモンスターの体長はおよそ百メートル、圧倒的な大きさに、これまで類を見ないモンスターの出現に周囲はどよめき立っていた。
遥か遠くの村でさえ、そのモンスターを視認できていた。
黒兜の男はそのモンスターを見るや、呆然と立ち尽くす。
「なぜ……なぜ……。あのモンスターは強すぎて配信中止となったはずの黄道十二獣の一体ーージャッジメン・トウ。どうしてあのモンスターが、この世界に存在している!?」
このゲームの管理人を嘲笑うかのように、黒装束の男は言った。
「世界のどこかでこのモンスターを見ている管理人よ。今ここに黄道十二獣は復活した。この世界において最も脅威になるであろうモンスターに震え、脅えよ。今ここで宣言する。我々に従え、そしてひれ伏せ。世界よ」