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VRMMOの管理人 2  作者: 総督琉
紡村編
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第6話 蜘蛛の棲む街

 旧市街地。

 そこは現在蜘蛛型のモンスターに占領され、今は放棄された場所であった。


「村長に報告を。旧市街地のモンスターたちは行動を活発化させ、現在旧市街地に隣接するこの村ーー(つむがれ)村に攻めてきています。およそ十分ほどでこの村は滅びます」


 そこへ村長が現れ、大方の事態は悟った。

 だが生憎、その村にはプレイヤーはいない。そこにいてもメリットがないからだ。

 過疎化していくその村にいようと、意味かないことだから。


 村人たちはモンスターの襲撃に脅え、逃げ出そうとする者や今から死のうとする者もいた。

 だが彼らを止めるように、一人の少年は木の枝に腰掛け、言った。


「そんなことはないぜ」


 少年は片手に刀を握り、銀髪を手でかき上げ、村人たちへと言った。


「俺がこの村にいる限り、この村が滅ぶことは万が一にもあり得ない」


 その少年を見た村人たちは彼を知らない。初めて見る少年に、不安と期待が入り交じるあやふやな感情を抱いていた。


「そんな心配しなくても良いっすよ。モンスターを全て倒してきますから」


 チャラついた口調に自信過剰な笑み、だがこのままではこの村は終わる。

 選択肢は一つしかないにも等しい。


「どうか、この村を救ってほしい」


 老いた村長は膝をつき、頭を下げて少年へ頼み込んだ。


「そんな風に頼まれても重いっすよ。俺はただ、自分がしたいことをしてるだけっすから」


 そう笑顔で言うと、少年は刀身を鞘から解き放ち、そして鞘を地面へ投げた。その少年と同じほどの大きさの刀を両手で握り、少年はモンスターが現れたであろう旧市街地のある方角へ進む。


「さあて、久々に楽しめる相手と戦いたいが、所詮旧市街地の弱小モンスターどもだ。五分でかたをつけよう」



 旧市街地と紡村の境にあるアズウェル大森林、そこまで侵攻してきている蜘蛛型のモンスターたちは、なぜか足が止まっていたーー襲撃を受けていた。

 木々の中を縦横無尽に駆け、たった一刀で既に百以上のモンスターを倒していた。


「もう五分経ったか。やっぱこれほどの数を五分で相手するには無理があったよな」


 少年は刀を肩に担ぎ、残りのモンスターの数を数えていた。

 まだ百ほどおり、半数しか倒せていないという事実に呆れていた。


「面倒だけど、あの村にだけは手出しはさせないよ。モンスターども」


 五分後、残りのモンスターは皆討伐された。それらは全てこの少年による功績であった。

 二百以上のモンスターをたった十分で倒してしまう実力、そしてそれらのモンスターと戦い無傷で返ってくるという傲慢さ、少年の力はそのモンスターたちだけでは計り知れないだろう。


 あっさりと終わったモンスター侵攻にあくびをし、村へと帰還する。


「どうせ逃げているだろうな。まあ俺一人にあの数のモンスターを倒せると信じていた方がおかしいか」


 そう呟き、少年は村へついた。

 するとそこには、村の入り口で自分の鞘を持って返りを待っている村人たちの姿があった。


「よくぞ返ってくださりました。この村の英雄よ」


 唖然としていた。開いた口が塞がらない。


「どうして……どうして逃げなかった!?」


「あなた様が倒してきてくれると言ってくださったから、だから私たちはあなたを信頼しました」


 誰一人として逃げている村人はいなかった。それはその村を長く見てきた少年だから分かること。

 幼い子供も、年老いた老人も、皆信じて少年の返りを待っていた。


「全く……ここまで涙腺を刺激してくるとは、モンスターよりも強敵だな。これは」


「勇者様。ごちそうを用意しますので、どうか今日は泊まっていただけないでしょうか」


「ああ。分かった」


 その日は紡村に火が灯る。

 松明によって村は照らされ、少年へ運ばれる大量の料理、それらを平らげ、少年は満足に浸っていた。

 時間はあっという間に経ち、皆眠りについていた。


「主役をおいて先に眠るとは、大層な連中だ」


「でも、面白いでしょ」


 そう呟き、一人の女性が少年へ話しかけてきた。


「君、名前は?」


「私はセーラ。君は?」


「俺は伊達円(いたちまる)、放浪者なんだ」


「へえ。じゃあ他にもたくさんのダンジョンとか遺跡を冒険したりしたの?」


 興味津々、といった具合にセーラは体を近づけて訊いてきた。


「まあな。でも危険だから何度も死にかけたけど」


「やっぱ勇者さんは凄いね。そんな経験をしても尚生き残っているんだから」


「ああ。本当は死にたいって思ったことは何度もあったんだ。けどある人と誓ったから、だから俺はその使命を全うするために生きなくてはいけない」


「その人は、今どこにいるの?」


「それは秘密だ。これ以上の詮索はなしな」


 伊達円はセーラの唇に指を当て、そう呟いた。セーラはそれ以上の詮索はしようとはしなかった。


「伊達円、君はいつまでこの村にいるの?」


「気分次第かな。だって俺は、放浪者だからな」


 その後、二人は眠りについた。

 だがその時まだ誰も気づいてはいなかった。その村に迫っている強大な悪に。

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