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VRMMOの管理人 2  作者: 総督琉
プロローグ
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第3話 閉ざされた心

 そこはアズサワの知り合いの民宿。

 部屋を一つ借り、アズサワは昨夜拾った彼女へ何度も問いかけていた。


「名前は?」「どこから来たの?」「さっきの黒装束の者は誰?」「話したくないか?」


 どんな質問をしても返ってくる言葉はない。

 ただ無愛想に向けられた表情だけがアズサワの目には映っている。


(困ったな。NPCが涙を流したことでも驚いたが、どうやら彼女には心がある。だが今はなぜか閉ざされているが)


 アズサワはその少女に驚かされることばかりだった。

 一体彼女が何者なのか、それは理解しがたいことであった。


 管理人スキルですら、心の傷を癒すことなどできない。当然といえば当然だ。

 そもそもゲームの中でのスキルである以上、心を癒すことはまず不可能だ。つまり彼女に心があろうとなかろうと、傷は癒せない。

 だがもし心があり、傷ついているのなら、原因さえ分かればその傷を癒すことができるかもしれない。


 困ったアズサワは、数少ない知り合いの一人である男の紹介により心理カウンセラーの職業をしていたというスピリットという女性に会った。

 白髪に白い白衣、タバコのにおいが香る女性。


「私に頼み事とはどのような依頼でしょうか?」


「実はーー」


 アズサワは事情を話し、ずっと一言も発さず黙り込んでいる少女を見せた。


「なるほど。原因とかは分かりますかね?」


「いえ。それが分からないんです」


「かなり難しいですね。それに経緯は分かりませんが、彼女はかなり深刻な傷を心に負っています。治るとしても一年以上はかかってしまうでしょう」


「もっと早い方法はないのか?」


「そうですね……」


 スピリットは首をかしげ、自らの記憶をほじくりかえしていた。だがそれでも何も思い浮かばなかったのか、申し訳なさそうに言った。


「他に方法はないですかね。そもそも心の傷が治らないことはよくあることです。なので本来治るかどうかも分かりません。ですが彼女の目は時々私達を見るように動いています。そしてあなたを見た際にだけ目の動きが止まる。つまりあなたならな、きっと彼女の心を取り戻せるかもしれません」


「俺に……」


「私に分かることはそれだけです。ではこれにて」


 お辞儀をすると、スピリットはアズサワのもとから去っていった。

 アズサワは少女を前に、しばらく固まっていた。


「なあ、どこか行きたい場所はあるか?」


(まあ答えるはずもないかーー)


「ダンジョン……ダンジョンに行きたい」


 初めて喋った言葉が何かと思えば、その言葉はまさかの"ダンジョン"。

 アズサワは困惑した。


 少女を危険なダンジョンへ行かせるわけにはいかない。何よりまた黒装束の者たちに見つかる可能性もある。


「ダンジョンか…………」


 アズサワは少女の願望にしばらく間を開けていた。


(俺は管理人だ。少女一人護るくらい、俺にだって)


 アズサワは決意した。覚悟した。

 少女の方を向き、笑顔を作って言った。


「じゃあ行こうか。ダンジョンに」


 年間一万人以上の死者をダンジョン。だがそのデータはあくまでもこの沖縄での話。

 もし他にもここ沖縄と同じようにモンスターに支配されていない世界があったのなら、きっとそこでもダンジョンに挑み死ぬ者が大勢いるだろう。いや、いないはずがない。

 そこへ彼らは向かう。


「ダンジョン……。俺に、出来るだろうか?彼女の心を取り戻すことが」

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