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青華学園物語  作者: かりんとう
影山美咲編~絶交から始まる運命の戦い~
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美咲的マイナー考察


家に帰ると7時近くになっており、急いでご飯や風呂を済ませてからため息を吐いてカバンの中の宿題も早々に終わらせて、本屋の袋にあった『大臣、お待ちになって!』の最新巻を取り出して読んだ。ページを捲る手が止まらなくなって物語に引き込まれていった。

霊感少女美冬と幽霊の元大臣のミステリー劇。大臣の死の真相を無事に暴き、その後物語は2章に移行し、大臣の友人の父親の死の真相を暴かなければいけなくなり、今は大臣とケンカしつつも仲直りしてさあ暴くぞと意気込んだ所……


「もう、最高!大臣…かっこよすぎ!」


読了後、布団でゴロゴロして興奮を抑える美咲。美咲が登場人物の中で好きなのは大臣だ、熱い生き様と繊細な心を持つ幽霊というその詰め込み属性に心を撃ち抜かれた。


「これだけ面白いのに、周りじゃ知っているファンが杏子くらいしか居ないんだよね……その杏子もアリスのせいで関係断絶したし………」


美咲には、“大待(だいま)ち”が流行らない理由は分かっている。かなり昔から続くシリーズという事と例のドラマ爆死でファンが離れ、シリーズ継続すら危ぶまれて巻と巻の刊行が2年以上空いて、その間にも別の漫画へと走ったファンも多く、今では細々として息をしていないジャンルへと成り果ててしまった……。__原因は、明らかにドラマ化にある。


「あれはダメだ…本当にダメ。」


今から15年くらい前にその問題のドラマ化はされた。その頃と言えば私はまだお腹の中……大きくなってから奇跡的にDVD化されたそれを見た。私なりに原因を考えてみると、かなり原作を変えた事と制作側が無理矢理物語を終わらせた事…そして、単純にキャストミスだろう。__分かりやすい例えを言うなら、シンデレラストーリーや出生の秘密が売りなドラマの感動のラストシーンで主人公の頭にいきなりたらいが落ちてきてそこからコントが始まるぐらいには物語として破綻していた。

美咲はだらりと手足を弛緩させてドラマ版の失敗を考える。

主人公の美冬はその頃売り出したばかりのアイドル女優を…それはまだいい。大根ながら姿はイメージ通りだったから。納得いかないのは大臣だ、大臣は大物ベテラン俳優が演じていた。新人のフォローを大物がするというのはよくあるであろう事だが、彼は演技力こそあれどイメージにそぐわなかった。


「大臣は、大臣はあんなダンディーな紳士さんじゃないんだよ!普段は美冬に下ネタばっかり吐いて、いざという時には熱くなって頼りになる人なんだ!」


スマホで二次小説を漁るも、検索ヒットはわずか19件…その事実が悲しくなってソッとスマホを机の上に置いてむせび泣いた。


「はぁ……勉強しよう。半月後には期末試験入るし、今回はアリスもまとわりつかないから点数伸ばせるだろうし。」


ノートを開いて教科書を置いた。筆記用具を手に取ると自然と集中力が沸いてきた。そのまま勉強をしているとスマホが鳴ったので見てみると信一郎おじさんからのメールだった。


《よう!元気にやってるか?もしかすると、近々会うかもしれないからそのときはよろしくな!》


近々会う?

その意味がわからないので返信をした。


《どういう意味?お盆休みはまだ早いよ。》


《お盆じゃないんだよ……もっと早くに会うかも。まあ、それよりも正月に会った時は病人みたいで元気なかったけど大丈夫か?(´・ω・`)》


信一郎おじさんが言っているのは、正月に親戚一同集まった時に私がアリスの事で病んでいたことだろう。でも、それならもう絶交されたから多分もう大丈夫。


《それなら多分もう大丈夫。ねぇ…おじさん、ちょっと聞きたいんだけどおじさんのお父さんって大臣やってたの?私、今日まで知らなかったんだけど。》


葵が調べた私の事に関する調査結果の事をふと急に思い出して聞いてみる。少し遅れてから返信が来た。


《うん、親父はやってたよ?インターネット百科辞典にも載っていると思う。けど、平成の初め頃の話だし大昔の話だよ。そろそろ、車が着くからこの辺で話は終わりにしよう。じゃあ、また今度な。おやすみなさい。》


《おやすみなさい(-.-)Zzz・・・・》


車で移動中に連絡をくれたのだろうか。忙しいんだなと思いながらそう送った。そして、自分のメールの連絡帳の欄を見てみると、父、母など近しい親戚以外は信一郎おじさんと杏子と葵しか居なくて少し寂しくなった。自分の連絡帳を見て悲しくなった後、今度はインターネット百科辞典のミキペディアで調べてみると確かに建設大臣という欄の所に山内誠一郎(やまうちせいいちろう)という信一郎おじさんのお父さんの名前があった。


「本当にやってたんだ……」


その後、気を取り直して勉強をしてから寝た。朝、学園に行けばまたアリス達の三流芝居を見るのか、そう重い気持ちになりながら布団に入って目を閉じた。






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