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青華学園物語  作者: かりんとう
after story2 文化祭
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遊べる時期の終焉


これで終わりです。


ザワザワと騒がしい。日曜の夜だというのに人が沢山あふれていた。私はそんな街を“大臣”と歩いていく。


「人、多いね。」


『まあ、混んでいるな。』


私は明日は休みだからいいけど普通の人は仕事や学校があるものだろう。それなのに日曜の夜に動き回っても平気だとは…。


「どこに行く?」


『そうだな、何が食べたい?』


「なんでも。任せる。」


『分かった。』


ポンポンと阿吽の呼吸で会話をしながら歩いていき、着いたのは居酒屋だった。なんで?と聞くと個室があるからと返ってきた。なるほど、確かにファミレスだと人目もあるしあらぬ疑いを掛けられかねない。個室に案内されてくつろぐ。ピッチリしていたボタンを外し、“大臣”もくつろいでいる。


『さて、何を頼む。まずは飲み物でも頼もう。俺はビール。…やっぱり、オレンジジュース。』


「んー、コーラ。」


『OK、じゃあ頼んでおこう。』


“大臣”が店員を呼んで頼んでいる間にメニューを見て、何を食べようか迷う。なんでもあるな、ここ…しかも安い。雰囲気もいいし評価が高そうなお店だ。


「タコ焼きとポテトの盛り合わせ、後はタコからあげ…。」


『カラオケボックスじゃないんだから…。あ、枝豆を。』


「そっちこそ、オレンジジュースに枝豆って何よ…。」


頼んでから来るまでの間の数分、話す。

暗い照明や美味しそうな匂いが漂ってきて益々良い店じゃないかと思う。


「しかし、こんな良い店をよく知ってたね。」


『ありがとう。お、飲み物来たな。』


飲み物とお作りが運ばれてくる。“大臣”がごくりと唾を呑み込んでから宣言した。


『ようし、今日は文化祭も終わってお疲れ様って事で飲むぞ!』


「大袈裟ね。まあ、お疲れ様。」


『「乾杯~!」』


コップ同士をカチンと合わせて乾杯させる。その後は料理が来るまで様々な話をした。これからの事、今他の部員達がどうしているのか…話の種は尽きない。


「エレノアは今、沙羅の家かな?あの2人も仲良いよね?」


『そうだな、だからこそエレノアが仕出かした事が知られると怖い。』


「そうね…。」


知られたくない、多分このまま何も起きなければ隠し通せるかもしれない。でも、真実は案外目下に晒されるものだからバレてしまうかもしれない。そのぐらぐらした不安定な中であの2人は友人なのである。


『不安だな。あ……来たようだ。』


「本当だ。美味しそう~。」


タコ焼きとポテトの盛り合わせ、タコからあげが並んでいる。少し後で枝豆も来た。しかし、オレンジジュースに枝豆……枝豆の味がオレンジジュースに消されそうな気がする。


「うまい…。」


『ちょっと分けてくれよ。』


「いいよ、1つだけだからね!」


『分かっているよ!』


口の中にジュワーッとうま味が広がる。ほのぼのとした顔になる。“大臣”も同じ顔になった。


『うむ…美味しい。』


「本当だね…。」


空気が和らぎ、他の料理にもパクついていく。タコからあげもサクッとして、タコの食感が美味しい。そして、枝豆も塩がきいていた。あっという間に食べ終わって、追加の注文をしてお腹がふくれていく。


「もう食べれない…。」


『流石に食べ過ぎたな。』


「そうよね、今動いたらダメなぐらいお腹が…。“大臣”、結構食べたけど払える?」


『大丈夫、大丈夫。』


案の定、お会計の時に目玉が飛び出そうな額になっていてスゴく申し訳ない気持ちになったけど“大臣”は何ともない顔で支払っていた。

店を出るともういつもなら寝る時間だった。夕御飯は食べてくると送っていたので打ち上げが長引いていると思い込んでいるのか『友達付き合いも大事かもしれないけどほどほどにして帰ってきなさいよ。』と母からメールがきていた。それに『ごめん、ごめん~。今度から気を付ける!』等と送った。


「はぁ……そろそろだね。家に帰らないと怒られるや。」


『そりゃ、そうだ。もうこんな時間だ、送っていってやろう。』


「ありがとう。」


打ち上げだと勘違いしてくれてよかった。

もしも“大臣”に会っているなんてバレたら両親の事だから大騒ぎしてまた真理さんの家にお邪魔することとなる。それはもう勘弁したいところだ。


『なあ、これからも行き帰りの時間ぐらいは会ってくれるよな?』


「それぐらいは全然大丈夫。」


『そうか、ありがとう。』


礼を言われるほどでもないんだけど。はぁ…遊んでばかりもいられない時がついにやって来たのか…思わずため息が溢れた。


(私もエレノアみたいに式神だったらよかったのに…いや、それだったら主人の命令が第1になるからダメか…。)


それでも私は人としてのしがらみなど気にしなくてもいいエレノアの事が羨ましかった。家から少し離れた所で降ろされた。


「ありがとう。」


『じゃあ、また今度。』


「うん!」


“大臣”と別れて家に帰った。文化祭も後夜祭も終わり、私も新たな局面に来た、ひしひしとそう感じたのだった。








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