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セクハラ勇者ちゃんと行く愉快な世界〜異世界転移した私と変態達の旅〜  作者: もみまん
1話 あなたは勇者様? いえ、勇者ちゃんです
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1-5話 勇者ちゃんの家にお泊り

「それじゃあ、わたしのじいさんの家に案内するよ……って思ったけどもう暗くなってきたね」

 

 あたりは暗くなり始めている。

 ユウキはしばらく暗くなった空を見上げ、腕を組んで考え込んでいた。

 

「うーん、この暗さだとじいさんの家まで向かうのは危険だね」

「えっ、そうなの?」

「あと少しになると視界も悪くなってどこから魔物に襲われるかわからない状況になっちゃうからね、家につくまでは少し時間がかかるし」

「じゃあこれからどうするの?」

 

 するとユウキは腰に掛けた袋の中からなにかを取り出した。

 

「大丈夫、わたしこれ持ってるから」

 

 それは家の形をしたおもちゃ……ミニチュアみたいなものだった。

 そんな手のひらに乗るサイズのおもちゃの家に住めるわけもないし、この人頭がおかしくなったんじゃないかと文は疑った。

 文が冷たい視線で見ているとユウキは構わずにそのおもちゃを地面に置いた。

 するとその家はだんだんと大きくなり、あっという間に人が入れる大きさになった。

 そしてユウキは当然のようにその大きくなった家のドア開けて中に入っていく。

 

(す、すごい! この世界では家ですら携帯できるようになっているんだ!)

 

 昔の漫画で、小さなカプセルを投げると家になるという発明品があったらしいが、そんな夢のような発明品に似た物を目にした文は感動していた。

 

「ふーちゃーん! はやく家に入りなよ!」

 

 漫画のような発明品に見とれてボーっとしていた文はユウキの声でハッと我に返り急いで家に入り込む。

 

「おじゃましまーす……」

「さ、入って入って!」

 

 文はユウキに手を引かれ中に入っていった。

 家の中は至って普通だ。

 奥に進むとリビングらしき部屋に入る。

 するとユウキは部屋にあるソファにドカッと勢いよく飛び込み『あー今日も疲れたー!』と言いながらくつろいでおり、仕事帰りのおっさんのような絵面となっていた。

  

「ふーちゃんもくつろいでいいからね~」

「じゃあ、お言葉に甘えて――」

 

 ぐ~っ

 

 言葉の途中でお腹がなり、文は恥ずかしさで顔が赤くなる。

 ユウキはそんな文を見てクスクスと笑った。

 

「じゃあお夕飯の準備しようか」

「あの、気を使わせてごめんね」

「ううん、その様子だと何も食べてないんでしょ? しょうがないよ、簡単なご飯作ってるから文ちゃんお風呂にでも入ったら? 疲れも取りたいでしょ?」

 

 たしかに文は肉体的にも精神的にも疲れていた。

 それにスライムのぬめぬめした感触もまだ残って気持ちが悪く、お風呂に入りたいと考えていたとこである。

 そのためユウキの好意に甘えてお風呂に入らせてもらうことにした。

 

「じゃあお風呂先に入らせてもらうね」

「うん、お風呂はこの部屋から出てすぐ左のとこにあるからね」

 

 文はユウキの言われた通りにお風呂に向かい、心と身体を休ませることにした。

 

◇◇◇◇◇

 

「ふぅっ……」

 

 湯舟から白い湯気が立つ。

 それは文の疲れと共に天に昇っているようだ。

 至って普通のお湯だけれども別世界のお風呂と考えると特別なような気分になり、いつもの入浴より気持ち良く感じる。

 

「それにしても今日はいろんなことがあったなぁ……」

 

(友達と下校していたら何故かいきなり知らない世界にやってきて、スライムに襲われて、勇者に助けてもらって、そして今度はその勇者に襲われて、告白されて……)

 

 今日の出来事を振り返ると衝撃的なことばかりだが、その中でもやはりユウキの告白が記憶に残っていた。

 そのことを思い出し、文はなんだか身体が熱くなっている気がしたが、この熱が恥ずかしさからきたものなのか、はたまたお風呂で温まっただけなのかわからなくなった。

 

「ふーちゃ~ん!」

「ひゃっ!」

 

 告白のことを思い出したタイミングでユウキがすりガラス越しに話しかけてきたため、変な声が出た。

 そのタイミングの悪さに頭の中が読まれているのかと変に考えてしまう。

 

「タオルと着替えここに置いておくね」

「あ、ありがとう……」

「着てた服は洗濯しておくから、ここに置いといていいよ~」

 

 入浴中である文は、メガネを洗面所に置いているためぼやけた視界でよく見えなかったが、どうやらユウキは服を置いたあとに洗面所からすぐに出ていったようだ。

 正直彼女なら急に乱入してくるんじゃないか、と考えていたがその心配はいらなかったようだ。

 変態なところはあるけれど基本的にいい人だと分かり文はホッと安心した。

 お風呂を満喫し、風呂場から上がると先ほどユウキが置いていったタオルと着替えの服があった。

 タオルで身体を拭いた後に置かれてある服を着てみたが、ユウキのものなためか全体的に……特に胸のあたりがぶかぶかである。

 

(だけど、わがままはいってられないよね。

 わたしは助けてもらった身だし、着替えを用意してもらえるだけ感謝しないと)

 

 そう思いながら着替えを済ませて文は洗面所を出てリビングへと向かっていった。

 

「あ、お風呂どうだった?」

 

 リビングに行くとキッチンで料理をしているユウキが待っていた。

 よく見るとエプロンをかけており、その姿はとても勇者とは思えない格好だ。

 

「うん、気持ちよかったよ」

 

 お湯加減について答えると、ユウキはじーっと文を見ていた。

 

「な、なにかおかしかった?」

「いや、そのぶかぶかな服の隙間からおっぱいがポロリしないかなーって思って」

「へ、変態!」

「それよりすっかりお腹減ってるでしょ? ご飯作ったから食べて♪」

 

 なんか無視された気がしたが、お腹が減っていた文はそれ以上はきにせずに夕飯をいただくことにした。

 ユウキがテーブルに料理を並べて、いつでも食べれる状態になる。

 料理は焼いた何かの肉と、切った野菜を適当に盛ってドレッシングをかけたサラダ、と本当に簡単な料理といった感じである。

 お腹の空いた文はテーブルに着いて『いただきます』と口にし、料理に手をつけようとした。

しかし、あることに気が付き手を止める。

 

「あれ? ゆーちゃんは食べないの?」

 

 よく見ると料理の皿は文の前にしか置かれておらず、量も一人分しか用意されていないように見えた。

 てっきり二人で食べると思っていた文は少し気になって聞いてみた。

 

「え? あー……わたしは今日お昼ご飯食べるの遅くなっちゃってさ、お腹すいてないからいいよ~」

「……ふーん、そうなの?」

 

 何か答えるのに少し間があったのが気になったが、腹ペコだった文は気にせずに夕飯に手をつける。


「あ、これ美味しい」


 お風呂に続き、知らない世界の料理も楽しむ文であった。

 

◇◇◇◇◇

 

 夕飯を完食して二人がしばらく話していると文から『ふわ~っ』っと欠伸がでた。

 

「ご飯も食べたし、そろそろ眠くなっちゃった?」

「う、うん、ちょっといろいろあって疲れちゃったから……」

「ベッドがある部屋があるからそこで寝たらいいよ~」

 

 ユウキは椅子からスッと立ち上がり、リビングのドアを開けて『案内するよ』と言った。

 それについて行くように文も立ち上がり、リビングを出て寝室へ向かって行く。

 部屋はリビングを出て少しの場所にあったため部屋の前まですぐに着いた。

 

「この部屋ってゆーちゃんが使っているところなの?」

「いや、わたしの部屋はその隣の部屋、ここは余っている部屋だから存分に使っていいよ」

「なんかごめんね、ここまでしてもらっているのに何もできなくて」

「いいのいいの! わたしが好きでやってることなんだから! さ、どうぞ入って」

 

 ドアをあけて見えたのはベッドだけが置かれた殺風景な部屋だった。

 あまり広い部屋ではないが、掃除がされているのか使われていない部屋にしては綺麗にしてある。

 文がベッドに座ってみるとお尻越しにやわらかい感触が伝わる。

 

「じゃ、ゆっくり休んでね」

 

 文がベッドの感触を味わっているとユウキはそう言い、部屋のドアを閉じようとしている。

 

「あ、あの! ゆーちゃん!」

「ん? ど、どうしたの?」

 

 色々スケベなことはされたけれど、この世界に来て何も知らずに心細い思いをしていた自分を助けてくれた。

 そんなユウキにお礼を言わなければ。

 文はそう思い、ユウキを引き留めた。

 

「……ありがとうね、見ず知らずのわたしにここまでしてくれて」

 

 するとユウキは『ふふっ』と笑う。

 

「さっきも言ったでしょ、わたしが好きでやってることなの、それにね、困ってる人を助けるのが勇者の役目だからね」

「でも――」

「ま、わたしも”いい思い”させて貰うし、気にしないでよ。それじゃ、おやすみ♪」

 

 ユウキは『チュッ』と投げキッスをしてそのままドアを閉めてしまった。

 

「……? ”いい思い”ってなんだろう?」

 

 ユウキが出ていった後に最後に言った言葉が気になったが眠気に耐え切れなくなってきた文はそれ以上気にしなかった。

 メガネを取ってベッドの棚におき、ベッドに寝転がる。

 

 今日一日不安だらけだったけれどなんとか過ごすことができた。

 ゆーちゃんも良い人でよかった。

 かなりスケベだけど……

 いままでのお礼として身体を要求する……って様子はなさそうだし安心した。

 だけど明日からどうなるかもわからないし、やっぱ不安だなぁ……

 

 ベッドに寝転がりながら文は今日起きた出来事と明日以降の未来について考えていた。

 しかし、色々考えていると睡魔はだんだん強くなり瞼がだんだんと重くなる。

 

(疲れちゃったのかな……すごく眠い……だめ……もう寝ちゃいそう……)

 

「zzz……」

 

 ベッドに着いてわずか30秒経った頃にはスイッチが切れたかのように文は眠りについた。

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