3 能力とは
放置しすぎてしまいました・・・。
ちびちびのんびり書いて行きます。
自分が異世界に飛ばされたらしいというのを自覚してから15分。
現状をきちんと理解し冷静に行動しなければならないと思い、椅子に座ると引き出しに転がっていた飴で糖分を摂取する。
立ち直りが早い様に見えるが十分ショックを受けているのだ、これでも。指は無意識にトントンと机を叩いているし、先程からこれからの事に考えを巡らせるがなかなか良い考えが浮かばない。
緑のある場所まで移動すれば獣や賊に襲われる可能性が浮上するが、このまま留まっていても飢え死にしてしまうだろう。
「よし!とりあえず現状を確認しよう」
空元気を出し、わざと声に出してみる。
そして先程から気になっていた自らの能力を確認する事にした。
手をじっと見つめ、「能力」「もっと細かく」と念じてみる。
すると前に見たステータスの様なものが頭の中で展開される。
【紺野さとる 28歳】
スキル:加工、錬金
レベル12
体力レベル5
筋力レベル6→7
体脂肪 19
身長 175
体重 69
魔力 1
能力1 :サーチアイ1
能力2 :道具召喚レベル1
能力3 :なし
能力4 :なし
能力5 : なし
お、筋力が増えてる。
まああんだけ歩いたら筋肉もつくよな、しかも1㎏痩せてるし。
じゃなくて、今は能力だな。
能力1のサーチアイに目の焦点を絞ってみると下に細かい文字がたくさん浮き出てきた。
【サーチアイ】
《使用例》
「索敵」
索敵に向いた能力です。
敵が大陸のどこに存在していても見つけられます。
視野の限界値は最大0%です。
「鑑定」
生物から物質までの全てを知る事ができます。
商人などに向いた能力です。
鑑定内容の限界値は最大0%です。
ん?限界値0パーセント?限界が無いって事か?
お、鑑定がある!これは何かと役にたちそうだ。
ん?最大って事はレベルによって限界値が下がるって事なのか?
レベル1だとどのくらいまで見えるのか要確認だな。
それに商人って言葉が出たって事はこの世界にも人は存在するんだな。
そう言えばでも工具召喚ってなんだろう・・・。
今度は工具に目の焦点を合わせて見る。
【道具召喚】
《使用例》
「工具召喚」
紺野さとるが使用した事のある工具であれば召喚する事が出来ます。
召喚サイズの限界値は0%です。
なお、工具は召喚を解除すると召喚時の状態に戻ります。
「乗り物召喚」
紺野さとるが乗った事のある乗り物を召喚出来ます。
召喚サイズの限界値は最大0%です。
なお、乗り物は召喚を解除すると召喚時の状態に戻ります。
おお、俺が使ったことある工具ってノコギリや電気工具とか結構あるぞ!
というか、乗り物召喚のサイズ限界値0%って・・・もしや飛行機とかもか・・・?
いやいや!そんなん召喚出来ても操縦出来ないし!第一、燃料だって無いだろうし・・・。
ん?待てよ、召喚時の状態に戻るって事は車とか召喚すればガソリンの心配とか無いって事か?
再度、乗り物召喚に焦点を合わせると、召喚出来る乗り物がカタログの様にうっすらと浮かび上がって来る。そこで、車の給油口を見つめて「ガソリン量」と呟く。
すると予想通り、【燃料80/100】と出てきた。
出社する前にスタンドに寄って来たからな。8割なら問題ないだろう。
そうして俺は自分の能力がどこまで出来るのかを確認していった。
そしてわかった事がこれだ。
1、今のところわかっているのは召喚できる工具は、俺が仕事で使った事のある物
に限定されるという事、例えば家で使っていた家電などは召喚出来ない。
(レベル1となっているのでこれから増える可能性も無くはないが)
2、召喚出来る乗り物は仕事で使用した事がある物に限定される。
つまり、車やユンボ(いわゆるショベルカーってやつね)などだ。
資格をバカみたいにとってきた俺の為にあるような能力かもしれない。
今のところ通勤でたまに使っていた電車なんかはダメみたいだ。
まあ、今電車があっても動力どうすんだって話だが・・・。
3、サーチアイはかなり万能な能力である事。
何度も確認した結果、近くにいる獣や人の動きが分かる上、その人物のステータスや性格、持ち 物なども頑張れば見えるという事がわかった。
ただし、目が飛び出る程見開く必要があるのでちょっと不信な人になりそうではあるが。
この能力は何かと役にたちそうだ。
出来る事がわかったので試しに頑張って引きずって来たパソコンデスクを見ながら心の中で「収納」
と唱えてみた。俺が仕事で使った事がある物なんだし召喚に使えるかなって思ったわけだ。
すると、あっさり全ての工具が消え、俺のステータスの持ち物欄に収納された。
「マジかよ・・・ここまで引きずってきた俺の苦労って一体・・・」
嬉しさ半分ガッカリが半分って感じだが、なんにせよ、これで身軽に旅が出来る。
「さて、じゃあ早速、人に接触してみるか」
サーチアイを使い厳選した結果、近くに村がある事が分かっていた。
色々探ってみたが、この世界は日本よりも文明が発達していないようだった。
少し離れたところには馬車で移動中の商人なんかも居たが、下手に工具を見せたら利用されそうでちっと怖いしな。
何も持って居ないと怪しまれそうなので仕事で使っていた工具用ポーチを腰に下げ、多少武器になりそうなミニノコとハンマーなどを差し込む。
そして出勤時に使っていた斜めがけ出来るバッグを下げた。
その村は拠点にしていた場所から7キロほど先にあった。
藁で作ったような屋根と木作りの家が並んでいるのが遠くからも見て取れる。
村の入口に到着すると人々がわらわらと出てきた。
ヤバイ、もしかして警戒されてる?
「あ、あの~」
両手を上げながら声をかけると、怪訝そうな顔をした村人達がこちらに近づいて来る。
「お前さん旅人か?」
「えっ!?あ、あのそ、そうです!道に迷って!」
思わず適当な言い訳をすると一人の厳ついオヤジが進み出てきた。
「ここはグラム領の中でも一番東の荒野が続く厳しい土地だ、大した食料も無ければ金になる鉱山もない、そんな場所に旅人?お前何者だ?」
まずい、かなり不信がられているようだ。何とか良い言い訳は無いだろうか?
「あ、あの、実は俺記憶が無くて・・・気がついたらこの先の荒地だったんです」
うん、記憶の部分以外嘘は言ってない。
バレない嘘をつくには本当の事を織り交ぜると良いって何かで聞いたからな。
「記憶ねぇ・・・まあ、大した荷物も無いようだし多方、物取りにでも頭殴られて捨てられたってところか・・・お前さん金はあるのか?」
「す、すみません、このせかっ、じゃなかった!この国のお金はないみたいです・・・と、取られちゃったみたいで」
「まあそうだろうなぁ、金残す物取りが居たらお目にかかってみたいわ」
そう言うとがはっはっと豪快に笑うおっさん。
思ったより悪い人じゃなさそうだ。
「俺が言っているのは金に変えられる物はあるのか?って事だ、まあ、労働でも良いんだが・・・仕方ねえ、とりあえず村長のところい行くぞ、付いてこい」
そう言うと、おっさんは先に立って歩き出した。