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3つの王のしるし  作者: わだん
森の生活
2/23

大鳥と子供

初春の凛と冷えた空気を、子供の泣き叫ぶ声が震わせる。


「わぁぁぁぁん。高っ。高いぃ怖いよぉっ」


森の動物達は耳を動かして声の方向を探す。

やがて、晴れた空を見上げて、小さく聞こえる声の元を確認した。


「ねえこれ、どこ向かってるの?ねぇ。もうやめてぇーしたに降ろしてっ」


子供は、どうやら大鳥ナバイーシに捕らえられたようだ。

森の動物達は、自分が補食対象じゃない事が判ると途端に興味をなくし、まだ少ない食糧探しを再開し始める。


「ねえっもうっ!お願いー!寒いよう。怖いってばぁっ」


鳥は随分高く飛んでいるため、小さく見えるが、近くで見れたなら子供がとても幼く見えることがわかったであろう。

そして、言葉ほどには怖がっていないことも気づいたかもしれない。

子供は勿論心の底から寒いし降ろしてほしいと思い願い叫んでいたが、実は冷静になぜこうなったかも解っていて、ある程度覚悟の上でこの状況を甘んじて受けていた。


「はぁー。ほんと、どこまで行くんだよ」

大鳥を下から見上げながらため息をついた。

「でもやっちまったもんは戻せねーよ。まいったな・・・・・

さみぃ」


***


瞼を閉じていても夜が明けたのがわかった。

それくらい今朝からよく晴れていた。


先に目を覚ましたのは子供の方だった。

子供を包んでくれているのは、真っ白冬毛の大鳥だ。

その口や足を見ると大型の肉食獣だとわかる。翼を畳んでいても子供の5倍以上の大きさがあった。


しかし子供の持つ雰囲気に恐怖は少しもない。

「はぁー、あったけ。なんだこれ楽園だな」

どころか、子供は和んでいた。


自分を包む真っ白な羽毛は規則正しい寝息にあわせて、もこもこ動いている。朝日が反射する箇所は白に近い金色に。透ける所は淡いクリーム色に。


その巨体をどのように納めているのか、危なげな鋭い嘴と鈎爪のついた足はモコモコ羽毛のどこかに埋まっていて見えず、もしかしたら気を遣わせたのだろうかと思ったが、何気ない心遣いには甘えておこうと思った。

お腹あたりのふかふかの柔らかい羽毛と、長い翼で包んでくれていて、すきま風一つ感じないのに、窮屈でもない。

外の冷たい世界からは隔絶した、ただ優しい白の世界だった。


自分達が丸まっている場所は、切り立った崖の途中にある鳥の巣の中だ。

今日のような晴れた日なら、しばらく帰っていない子供の棲みかまで見通せるだろう。

ここは大鳥の大きな羽を広げても十分な平らな広さがある場所に、巣材が敷かれている。吹きさらしのうえに崖の途中ともあっては、巣材で遮ぎきれるやわな風力ではない。

下から吹き上げる風は、子供の軽い体などすぐに持ち上げてしまう。

そんな間違えばひとたまりもない場所も、今の気分では見晴らしが良い最高の居場所だ。


「くうー出たくないなぁ、でも」

上下する羽毛をしばらく見ながら至福感を味わっていたが、生理現象には抗えない。子供はやっと至極の場所から出る決意をした。

手を埋めさせながら羽毛を押しつつ外に這い出る。

とたんに冷たい風に肩を震わせた。

「ぃーい。早くすませよ」

歯が噛み合わない寒さを我慢しつつ、落ちずに用を足せるように縄を張った場所にいく。ズボンを下ろして裾を持つと寒さのピークだ。

そんな時いつも自分が獣でない事を嘆きたくなる。

「ぎがぎぎぎぃ、寒い寒い寒い!」

言ってもどうにもならないが言わずにいられない。


用をたし終わると、地中に潜った水が、所々で湧く細い流れで手を洗う。

体は水拭きもせず随分経つので今さらとも思われるが、綺麗にできるところはする。鳥はああ見えてきれい好きなのだ。


すっかり目は覚めてしまった。ここまで我慢できると次の欲望も湧いてくる。

また、あの楽園に戻ろうかと思っていたが、つまり食欲を満たそうと思い直したのだった。


数日前、大鳥が捕ってきたカリブーの干し肉のある場所にいく。

そこで子供はう~んと考えると、大鳥にチラリと目をやって

「よしっ」

っと乾いた小枝を持った。


鳥は火を使うことを嫌がっていた。獣なのだから当たり前とも言えるが、知性が高いせいかそこまであからさまにはしなかった。

だが、ここは鳥の巣である。自分の棲みかではなお嫌だろう。


なので、子供はこっそり準備をした。鳥から離れたところに風避けを立てて小枝を組んで火種をいれた。小さな手鍋に先程の湧水をいれ沸かす。大きめの泡が出てきて沸騰したところで自分が摘んできたハーブをいれるつもりだった。


雪解け水で洗った真っ赤になっていた指の先を火に当てながら干し肉を炙る。ぼんやりと冬の終わりにやる事を頭に思い浮かべていた。

「そうだ、毛皮貰ってなめそうかな。肉食って放置してんのが何頭分くらいかあったし」チラリと崖下を見てみる。少々グロい光景だが、手間を掛ければ宝のやまだ。

「あと畑は土からかなー最優先だな。んー冬に何もしなかった皺寄せが・・でも、この至極の楽園を考えるとあっちの寝床はとてもなぁ」

考えながら沸き始めたお湯によく乾燥した葉っぱを入れようとしたとき、パチリとはぜた火が葉っぱに当たった。

「あっち」と思ったときには、手を振っていた。実際には特に熱さも感じなかったが条件反射で心臓が跳ねる

「あ、びびった」

と呟いたとき、「グゥッ」と後ろの方で獣の声が聞こえた。

しまったと思いながら急いで後ろを見ると、小さい黒いお焦げを見つめた黄色の目がグリリっと丸く大きく見開かれたところだった。


それからはあっという間だった。喉を狂暴に奮わせながら鳥の体はブワワワワッと一回りも二回りも膨れていく。鳥の首辺りの羽は飛んできて刺さるかと思わせるくらいカンカンに立っていた。


「怒って・・・あわわあの。ご、ごめなさ・・・」

子供は今冬初めてこの場所で恐怖を感じた。

鳥は子供には広かった巣を、その膨れた体で埋め尽くし怒声をあげて

「ホロロロロロロオオオォォォオッ」

「ごめ、わぁっ。わあああぁーーーーー。ごめんーーーー」

鈎爪の足で、子供を掴みあげると大空に飛び出した。


***


つまりは、今まさに鳥のお仕置きを受けている最中なのだ。


「わーん!でもっ!もう反省したし!謝ったし!これ以上どうすりゃいーんだよ!」

子供は説得を試みることにした。

「誠意?もちろんみせるよ!?巣の掃除バッチ来いだし、巣材もなめした毛皮作ってふわふわっの高級感だすよ!?」


・・・一部は貰うけど。というとこは言わない。


「火は火避けをもう少し、こう高めにして、えーと、あっ竈にして完全に火が飛ばないようにするっ。そうだ、そうしたら安全であったかだし!完璧な巣のできあがりだ!」


鳥の巣に竈は如何かと思うが、子供はまたこの巣に来るつもりだったし、生肉はもちろん乾燥肉もそのまま食べるのは、人の体では難しかった。

それに、その言葉に遠回しすぎるが仲直りしたいという意図も込めてみた。


それから、と考えていたら巨木がまとまって立っているところが見えた。

「あっオレの家?なんだ良かったー。家に送ってくれたのか?悪いな・・・って違うのかよっ」

鳥は巨木のうえをか2回旋回するとまたどこぞかに向かって飛んでいく。思わず叫んだ子供の声に応えるように、鳥の腹毛がふくふくと動いた。


笑ったのか・・・それならばもうそんなに怒ってないのか。

ふっと息を吐くと、体の強ばりが融けた気がした。その時自分が何に恐怖したのか解って泣きたくなった。

ふーとまた息をはく。今度は肺の空気を全て吐いた。力を抜くとひゅっと冷たい空気が胸をいっぱいに満たす。

本当にどこ行くんだろ。でもどこでもいいや。全力でお仕置きを受けてやる。


向こうの山の上にある薬草摘みかな。何回か鳥にも使ったやったことがあったし、そろそろ無くなりそうだとこの間話していたのだ。それともアガンダ捕りかな。あの蛇は大鳥には捕るのが難しいらしいが、どうやら美味しいらしく、食べるとき心持ち嬉しそうなのだ。


それともー・・・んん?あっ。これやばいっ。

思考が一気に切り替わった。頑張るどころの話じゃない。と説得を再開させる。

「だめっだめだめだめ、それはない」再び大声で叫びながら恐ろしげな鈎爪にすがるようにしがみつく。

大鳥が少しずつ下降しているのが分かり、確信をもった。信じたくはないけれど。


何か、何かっ・・・

焦りで考えがまとまらない。「まって。おれっ」

祈りも願いも提案も声にならないまま


ホロロォーオォ


面白がるような響きの混じる声と


「んぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー」


子供の叫び声。

少し経つと水音が聞こえた。


文体に統一感がなく読みにくいです。ごめんなさい。

難しいです。今のとここれで精一杯(涙)

暫くこのまま。読み直してまた泣きそう(笑)

次も鳥と子供の話です。

恋愛はもっと後になりそうです。

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