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魔法適性試験

試験当日。

起きてからずっと、緊張が解けない。

クリフもどうやら僕と同じようで、今朝からソワソワとしている。

2人で朝食を食べたが、味がイマイチ分からなかった。

今日は実技室(ドーム状の建物)での試験なので、前に届いたぴちぴちの制服に着替えなくてはいけない。

リタはちゃんと分かっているのだろうか?

少し心配だ。

一緒に行くから服装は大丈夫だけど、遅刻してしまわないか?

「おい、下着は穿いといた方が良いぞ」

着替えるために脱衣所に向かおうとした時、クリフに声をかけられた。

「下着着ちゃダメだろ?だってこれ、衣服は脱いで着用だろ?」

「最後に下着は着用する事って書いてあったぞ。」

全く読んでなかった。

そう言うのは最初に書いてほしいな。

「ってかなんで僕が穿いてないって分かったんだ?」

「うっ。えっとー、そのー・・・何と無くだ。」

明らかに嘘を吐いている。

が、何で嘘を吐く必要があるのか全くわからない。

僕には関係無い事だろうか?

クリフも何か重大な失敗をしてしまったのかもしれない。

サラシを巻かずに着てしまった僕みたいに。

「とりあえず、ありがとう。着替えてくるよ。」

返事を聞きながら、下着をクローゼットから出し脱衣所へと向かう。

前までは女性用の下着を着けるのに、すっごい抵抗があった。

でも今では、女性用の下着を着けている。

まぁ、普通の物ではないけど。

普通の女性用下着より布面積も多く、ボクサーパンツくらいのサイズで色は黒く、光沢があり丁度制服と同じような見た目だがこちらは見た目よりも少し重い。

重さの原因は使われている素材の性だと思う。

分厚いゴムで出来ているみたいだ。

これなら履いていてもスースーしないし、見られてしまっても恥ずかしくない。

でも最近は脱ぎ履きが結構面倒なので、夜は履かないようにしている。

一度、漏らしかけてしまったから。

下着を履き、制服を着きてみた。

履いてない時と何も変わらない気がする。

これなら別に履かなくても良いんじゃないのか?

でも流石に、ノーパンで人前に出るのは恥ずかしいな。

制服のチェックをクリフにしてもらい、防寒具を着てリタと合流して実技室へと向かう。

因みに、リタはちゃんと実技用の制服を着て来ていた。


道中緊張で誰も何も話さずに、ドームに到着した。

意外な事に、リタも緊張しているようだ。

入ってすぐ、左右に向かい合う形で更衣室がある。

更衣室を設置したせいか、出入り口は狭い。

ぎりぎり3、4人がすれ違えるくらいだろう。

大人数で通ろうとすると渋滞になるぞ。

リタと一旦解散し、荷物を置くため更衣室に入る。

更衣室は個室ではなく、一定間隔でロッカーが並べて置かれていた。

荷物を置くといっても、防寒具しか荷物は無いけど。

コートと手袋、ズボンとブーツをロッカーに入れて鍵を掛ける。

鍵にはゴム製のバンドが付いており、腕に巻きつけておくことが出来るみたいだ。

なんか銭湯を思い出すな。

とりあえず、失くさないように腕につけておき更衣室を出た。

更衣室は暖かかったが、廊下はめちゃくちゃ寒い!

露出した肌に容赦なく寒さが襲い掛かって来た。

リタはまだ着替えてるか分からないので、急いで廊下を進んで行く。

突き当たりに実技室へとつながる扉があった。

逃げるように扉開け、中に入る。

実技室の中は更衣室と同様、暖かかった。

「死ぬかと思った。何であんな廊下寒いんだ。俺、寒いの苦手なんだよ。」

横にいた筋肉は、ブルブルと震えていた。

自分の肩を抱き、震えている様は何とも情けなかった。

「それにしてもすごいな。広すぎだろ、それに壁もなんだか特殊な素材っぽいし。窓もないし。」

床も壁も真っ白。

だだっ広いはずなのに、なぜか圧迫感さえ感じる。

壁に触れてみると、鉄のような硬さで少し光沢があるのだが滑りは悪い。

魔法を使うための教室なので、魔法無効みたいな効果があるのか?

そんな教室の端っこにポツポツと、10人程度の生徒が集まっていた。

室内の真ん中に何か置かれているのが見える。

「ここだと、扉開くたび寒いしあそこに行こっか。」

「それもそうだな。」

近付いてみると、床に銀色で円盤型のまるで自動お掃除ロボットのような物が4つ置かれている。

これで魔法の検査をするのだろう。

使い方はわからないが。

投げるのか?

「そう言えばさ、お前気づいてたか?」

「何が?」

「入学式の日に、世界で歴代1位かも知れない魔法適正の可能性がある奴が居たらしいぞ。」

「そうだったのか。誰か知らないや。」

そんな人が居るのか。

最悪じゃないか。

その人が学年1位で残る席は4席になってしまった。

上位に入るのが少し難しくなってしまった。

「なんでもそいつって、入学式に遅刻して来たらしぞ。」

ん?

僕の前にも誰か来てたか。

「会場の一番後ろの席に座ってたみたいなんだが、俺が見た時にはもう居なかったんだよな。お前、見てないか?」

えーっと、確か僕って当日遅刻したよな。

それで急いで会場に入ったんだけど、案内されたのは一番後ろの席だったような気がする。

しかも、何だか豪華な席だった気が…。

「ぼ、僕は知らないかな。」

とりあえず、知らないフリをしておこう。

「そっかー。どいつなんだろうな、気なるよな?」

「え?うん、そうだね。因みにクリフは、それを知ってどうするんだ?」

「特にどうするって訳じゃねぇけど、仲良くなれたら色々教えてくれそうだしな!」

どうしよう、やっぱり言うべきだろうか?

でも、なんて言うんだ?

自分から言うのって恥ずかしくないか?

「お待たせしましたわー。」

少し遅れてリタが合流した。

彼女は明らかに、僕やクリフとは違う制服を身に着けていた。

胸部にはなにやらクッションのような物が巻きついており、谷間が見えないようになっている。

しかも、男子生徒用とは違い上半身と下半身で布は分かれていない。

下半身にはスカートのようなひらひらが付いており、大事な部分は隠れている。

やっぱり、男子と女子で制服違ったのか。

あっちの方が良いな。

サラシ巻かなくても大丈夫だし。


その後少しずつ生徒が集まってきて、規定の時間の10分前には全員が集合した。

遅刻したのは、レスター先生だけだった。

「多分、全員居るな。今から魔法適正試験を行う。ここに置かれた機械に魔力を集めてもらう。魔力を変性させるのではなく、周囲にある魔力を一箇所に集めるだけだからそこまで難しくは無いはずだ。魔力を感知したら上部が発光するから。」

レスター先生は置かれた機械のうち一つを持ち、足元に置くと何やら集中し始めた。

少し間をおいた後、機械の上部が青く光り始めた。

「まぁこんな感じだ。機械の数があまり多くないから俺が指名した奴から順番にやってもらう。制限時間は一人当たり20分だ。先に終わった者は、帰るなり見ていくなり好きにしろ。言うまでも無いと思うが、超過した者は即刻退学となる。覚悟しておけ。」

さらっと恐ろしい事を言うなよ。

20分か長いのか短いのかは分からないが、最長2時間40分も掛かるぞ。

なるべく先にやって終わらせてしまいたいが、一番目だけは嫌だな。

「最初の生徒を呼んでいくから呼ばれた者は装置の前に来い、それ以外は待機だ。えーっと…。」

先生は手に持っている、生徒名簿を眉間に皺を寄せ見ている。

まだ生徒の名前覚えていないのか。

「ベラと、ギルモア、フロスト、エイベルお前らからだ。」

嫌な予感が的中した。

なんとなく、最初に選ばれそうな気がしてた。

リタとクリフと一緒なのは良いが、2番目くらいが良かったのに。

仕方なく先生の後に付いて行き、機械の前に立たされる。

「ベラ、ちょっとお前だけ来い。後の3人は勝手に始めておいて良いぞ。」

レスたー先生は僕の前に置かれた機械を取り上げ、実技室の出口まで歩いていってしまった。

点いて濃いと言うことだろう。

僕は教室を出て、男子更衣室まで連れ出された。

何か悪い知らせか?

こんな風に先生に呼び出されるって、怒られる時くらいだろう。

最近、何かしたか?

思いつくことと言えば、食事の事ぐらいかな。

「ここまで来れば良いだろう。お前に話があるんだ。」

小声で、僕にだけ聞こえるように話している。

怒ると言うよりかは、何か話し辛い事を伝えるような感じだ。

「何でしょうか?」

「今から魔法適性を検査する訳だが…頼む、歴代新記録を出してくれ!」

「はい?」

「実は、お前が歴代新記録を出してくれるとだな、俺の給料が上がるんだよ。新記録を出して、俺の教え方のお陰って事にしてくれるとだな、学園長が給料をかなりアップしてくれるみたいなんだ。」

「あの、何言ってるんですか?」

こんな話、先生が生徒にする話じゃないだろう。

「今までの最速記録は5分32秒だ。多少の超過なら俺が有耶無耶にしてやる。2分くらいなら、多分バレないだろう。」

勝手に話が進んでしまっている。

しかもそれ不正じゃないか。

滅茶苦茶だな、この先生。

「はぁ、そんな事しませんよ。別に僕、先生に何か教えてもらった覚えもありませんし。」

「そんな冷たい事言うなよ。そうだ、俺の給料上がったらお前に毎月、小遣いやるからさ。」

え!?

お金くれるのか!

ってちょっと待て、絶対ダメだろ!

先生が生徒にお金渡すなんて、バレたらとんでもないことになるぞ!

「バレたらとんでもない事になりますよ!教師としてその発言はマズイと思いますよ。」

「何がだ?」

「だから、小遣いやるから良い様に言えっておかしいでしょ?」

「何言ってんだ、どの教師もやってる事だぞ。金出して生徒を買収なんてよくある話だろう。それにお前と俺は長い付き合いになるんだ。今からお互い仲良くしておいた方が良いことがあると思うぞ。」

この世界の学校の事など知らない。

この人の言っている事は本当だろうか?

少しでも危険性があるのなら避けるべきだろう。

「そう言うのはちょっと…。」

「因みに金額は金貨二枚でお願いしたいんだが。」

「金貨二枚!?」

金貨二枚って、前の世界で20万円くらいの額だぞ!

それだけあれば、贅沢しなければ一人暮らし出来る。

フィリスにあげれば彼女の生活は幾らか楽になるだろう。

彼女は現在、収入もほとんど無く孤児院裏の畑で採れた作物で何とか生活しているようだ。

早く何とかしてやりたいと思っていた。

どっちを取るべきなのか、分からなくなってきた。

「分かった!二枚じゃ少ないなら三枚だ!これ以上は譲れないぞ。」

三枚!?

さ、30万円!

無理なく一人暮らしが出来て、それなりに贅沢も出来る。

「ほ、本当にバレても問題無いんですか?」

「本当だ。もしかして乗ってくれるのか!?」

「うぅ…。は、はい。でもこう言うのは今回だけですからね!」

仕方が無い。

成功するかは分からないが、なんともおいしい話だ。

この際、リスクの事は気にしない事にしよう。

バレるより先に魔聖水を手に入れてしまえば、何も無かった事にできる。

制限時間は約5分30秒。

果たしてそれまでに間に合うか?

自信は無いけどやってみるしかない。

レスター先生が持っていた機械をその場に置いた。

「そうと決まれば、さっさとやっちまおう。」

ここでやるのかよ。

自分の使う機械の前に立つと、側面の赤いランプが点いた。

どうやらこの機械自体が時間を計測してるみたいだ。

なるべく早くしないと。

とりあえず、右手を突き出し掌を機械に向ける。

魔力を集めるってどんな感じか分からないが、強い想像で魔法は使えると授業で聞いた。

つまり、魔力を集めるイメージをすれば良いのかもしれない。

アニメであった必殺技を思い出す。

小さな光の玉が一点に集まり、大きな光の玉が出来る。

魔力が大気に満ちていると言うのなら、これがもっとも近いかも知れない。

目を閉じ、強くイメージする。

「おぉー!お?」

目を閉じてすぐ、先生が妙な声を漏らした。

もう出来たのかと思い目を開けると、機械があった場所に大きな光の玉が出現している。

なんだこれ?

大きな光の玉には、周囲から小さな光の玉が集まってきて徐々に巨大化している。

僕がイメージした事が実際に起こってしまっているのか?

そう言えば、機械に魔力を集めるんじゃなくて、大きな光の玉を作ることをイメージしてしまっていた。

急いで今度は光の玉が元に戻っていく事をイメージする。

光の玉が、今度は小さな光の粒を吐き出しながら小さくなっていく。

光が消え機械が現れたが、赤いランプは消えていた。

「どうやら、機械は周りに集まった高純度の魔力に当てられて、計測を終えたみたいだな。ちょっと待て記録時間を見る。」

レスター先生は機械を持ち上げ裏側を確認した途端、ニヤつきはじめた。

「24秒。お前が機械の前に立ってから、魔法が感知されるまでたったの24秒。」

今のは失敗じゃないか?

なんか違う物が出てたし。

「昇給、どんくらいになるんだこれ!?」

先生のテンションの上がり様に、僕は無いも言えなかった。


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