3、色つき眼鏡
「うぅ〜〜〜」
ヘキは拗ねたようにうなりました。リョクはそんなヘキをスルーしてしまいました。
「あー、忘れる所だった」
リョクはポケットから眼鏡を出しました。
眼鏡は青くて薄いレンズに、銀縁。度は入っていません。
「ちゃんとかけておけよ、ヘキ」
そういうとリョクはヘキに眼鏡をかけました。
ラスナ王国の国民は、普通は茶髪茶瞳でしたが、最近は近隣諸国との国交が盛んになり様々な色の髪、瞳を持つ人が増えました。さすがにヘキのように、いくつもの色が混じったような色の瞳を持つ人はあまりいませんでした。(ちなみに、金髪に翠瞳・青瞳をもつのは主にシュルドスタ王国の国民です。)
『あまりいない=目立つ!!』
という事で、リョクは外出時にはヘキの瞳の色でヘキが歌姫だという事がバレな色つきで度無しの眼鏡をヘキにかけさせていました。
「うぅ〜〜〜」
ヘキはまたうなりました。
いくら目立たないようにするとはいえ、色つき眼鏡をかけるのは嫌なのです。
(だって……お兄さまの顔が眼鏡越しだと青がかかって見えるんだもん)
「『うぅ〜〜〜』じゃなくて、言うのも、はずすのも、ダメだぞ。いいな?」
「わかりましたぁ〜〜〜…………」
拗ねたようにそっぽを向くヘキを見て、リョクは苦笑しました。
(しょうがないなぁ……)
「ヘキ、へーキっ!リシャおばさんのレモン・シャーベットを食べに行かないか?」
リシャおばさんのレモン・シャーベットはゲツルイの噴水広場のそばにあるシャーベット屋さんでした。ちなみに…レモン・シャーベットはヘキの好物でした。
ヘキは拗ねた瞳をして、むくれていました。
「どうしてもっていうなら……」
微妙にヘキは意地っ張りでした。そんなヘキの性格を知っているリョクは、気にせずに言いました。
「じゃ、行くぞ」
リョクはヘキの白い腕をつかむと、リシャおばさんの店の方向へ向きました。
「いざ、レモン・シャーベット!!」
そういって右手でこぶしを作って、天に向かって突き上げました。
ヘキは顔を赤らめました。
なぜって?
いきなり叫んでこぶしを突き上げたリョクは、めちゃめちゃ目立ってて、しかも周りの人の目を引きまくっていましたから。
「? 何で顔を赤らめているの?ヘキ」
リョクは、自分が目立っているのを知らないのです。