1、<ホシノミヤ>の玄関で・・・
ラスナ(良砂)王国、王都ゲツルイ(月涙)の南西に位置するディジュ神の神殿<ホシノミヤ(星ノ宮)>
そこには、歌姫が住んでいました。歌姫はそこで歌をうたい、ディジュ神に祈るのです。
歌のレッスンの時間になりました。時間になったので歌姫は・・・・・・きませんでした。
そこで、歌姫のお世話係であるミーサは、<ホシノミヤ>の庭で、<ホシノミヤ>の廊下で叫ぶのです。
「歌姫さまぁ〜〜〜〜〜〜っ!! どこにいるのですかぁ〜〜〜〜〜〜?
でてきてくださ〜〜〜〜〜〜いっ!!」
<ホシノミヤ>の正面玄関に彼は立っていました。
茶色い髪にに、森林を思わせる深い緑色の瞳。
「そろそろかな・・・・・・」
ほんの少し経って、<ホシノミヤ>から一人の少女が出てきました。
少女は月の光のように淡い金色の髪に、青と翠の中間色の瞳をもっていました。
少女は彼を見ると嬉しそうに彼の方へかけてきました。
それを、見ると彼は小さくため息をつくと両腕を広げました。
ポスッ☆
少女は彼に抱きつくとにっこりと笑いました。
「久しぶり、お兄さま」
ギリギリのところでふんばって少女を抱きとめた彼はビミョーな顔をしていました。
「歌姫サマはまたレッスンをサボったのか・・・・・・?」
「“歌姫”なんていわないでっ!ちゃんと名前で呼んで、お兄さま」
「はいはい、わかったよ。ヘキ」
そう、少女は現在歌のレッスンから逃亡中の“歌姫”ヘキ(碧)でした。
「お兄さま、今日は何処へ行くのですか?」
「それよりもさ、いいかげん、離れよーね、ヘキ」
ヘキは“お兄さま”にグイグイと体を離されました。
ヘキは“お兄さま”をうらめしそうに見ました。
「リョクはヒドイ・・・・・・」
その言葉を聞いた瞬間“お兄さま”は、あちこちをキョロキョロと見回し(軽く)ヘキをにらみました。
「ヘキ・・・・・・ゆーなよ俺の名前、バレたらどうするんだ?」
ラスナ王国では、人名に“色”をつける事を禁じていました。
その理由は王族と王族に近しい大貴族だけが使えるようにしたかったから・・・・・・・
ヘキは、元々大貴族出身なので、名に色をつかえました。
では、ヘキが“お兄さま”と呼んで慕う少年の正体は・・・・・・?
ラスナ王国の第二王子リョク(緑)でした。