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‐第6話‐ 夢か否か

 それは今まで見たことのない禍々しい生物だった。“サタン”と呼ばれるそれはあまりにも神々しく、そして明らかに『ヒト』ならざるものだった。全身が黒い皮膚のようなもので覆われており、頭には角のようなものが生えている。なんといってもその存在はあまりにも巨大で、まるで山の中にポツンと古城ができたようであった。そして、中心部でぽっかりと空いている胸の中にはユメの姿が見えた。


「そう・・・!これこそまさに完全体だ!! 僕はサタン。絶望より来たりしサタンだ!アハハハハハ!!」


 そう言い放つとサタンは高らかに笑い始めた。背筋が凍るような、あの笑いだ。


「そんな・・・ユメ・・・ッ!!」



 ・・・僕はもう何もすることができなかった。地面に膝をつき、ただまっすぐにユメを見つめる。ごめん、ごめんな。ユメ。何があっても守るって・・・決めてたのに。あの時僕が逃げなきゃよかったんだ。あの時素直に僕が生贄になっていれば。僕は本当に無力だ。

 でも、悪魔教に殺されるくらいなら・・・キミに殺されるほうがいい。そう考えれば、僕は幸せ者かもしれない。だってサタンの原動力は(ユメ)、なんだから。



 立ち上がり、僕は“サタン”(ユメ)の前に行くと、ゆっくりと跪いた。


「おや?ようやく殺される気になったかい?サタンの復活に覚悟ができたようだね。一人じゃ寂しいかもしれないから、この森ごと一瞬で消してあげるよ!アッハハハハハハハ!!!!」


 サタンの拳に黒いオーラが纏っている。ああ、その一撃で僕は消えるんだな。さよなら、ユメ・・・。



 罪人に裁きを!!というギガの声と共に、その黒いオーラは放たれた。まるで色のついたキャンパスを塗りつぶす黒い絵の具のように周りの風景をみるみる消していった。それは一瞬の出来事で、もう僕の周りは何も見えなくなった。何ももう感じない。あれ、もう死んじゃったのかな。



 ただ、最後に感じた感触は、頬を伝う涙の一線であった。





*******************************************


 


・・・なんだろう。すごい懐かしい気分だ。おいしそうな夕食のにおいがする。ここは・・・どこ?

 ゆっくりと目を開けるとそこは、豪華な食卓があった。見たことのない食材などが並んでいるがどれもおいしそうだ。


「今日はツバサのためにお母さん、がんばっちゃった!」


「そうだ、今日はツバサの誕生日だもんな!お父さんも奮発してプレゼント買っちゃったぞ!」


 お父さん・・・?お母さん・・・?僕に両親はいたっけ。僕には両親がいない。顔も見覚えがない。でもなんでだろう、前にあった気がする。


「なにそんな暗い顔してるの?今日はツバサの誕生日でしょ?」


 隣を見るとそこには、ユメの姿があった。とても小さく、幼少期の姿をしていた。・・・そうか、死ぬ前の走馬燈そうまとうみたいな感じか。走馬燈でも、ユメに会えたのはうれしいな。まだ幼いころはよく二人で森で競争していたっけ。懐かしいな。


「皆おなかすいたでしょ?さぁ、ご飯が冷める前に食べちゃいましょ!」


 そういうと調理上でバタバタとしていたお母さんらしき人物が席に着く。言われてみればなんだかお腹がすいてきたな。

 皿の横に置いてあったフォークを取り、サラダを取ろうとした時だった。


「痛っ・・・・!」


 ふと激痛が右手に走りフォークを床に落としてしまった。なんだ、今のは。恐る恐る右手を見てみるとそこには傷だらけの右手だった。この傷はさっきの騒動でできたものだ。まさか・・・。


 ゆっくりとフォークを拾い上げ、恐る恐る顔の前に近づける。そこにはボロボロになった自分の姿が映し出されていた。




「・・・間違いない、これは夢や走馬燈なんかじゃない。現実だ。」

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