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‐第1話‐ 不穏と平穏

 次第にあたりが暗くなり、家に着くころには手持ちのランプだけが僕たちを照らしていた。こんな時間に外に出ているのは僕たちだけだろう。

 世界樹の森で生活をおくる周りの動物たちは、日が暮れると眠ってしまう動物が多く、朝早くから行動する朝方の動物が多いのである。まぁ、オオカミのような例外はあるのだが。



 木製の古めかしいドアを開けただいま、と一言かけると奥のキッチンからダグラスおじさんが姿を見せた。もしこの場に普通の人間がいたならば誰もが驚くであろう。なぜならゴリラが人間の言葉を話し、人間と同じ服を着て、そして人間のように今まさに料理を作っていたところである。


 アグシュヴァルトの大樹の森に住む動物たちは『世界樹の加護』により、人間の言葉を理解し、平和を好む種族が多い。昔話で聞いた話だが、人間と動物、2つの種族の共存を願った聖人『ダンテ』による祈りが叶えられたものであり、それが現在の『世界樹の加護』の一つになっているのだそうだ。



「こんな時間まで外にいるとは、遅いぞ。暗くなるまで狩りをするなんていったいどこに行ってたんだ?」



 昼寝をしていたなんてとても言えない。ましてや夕飯抜きの刑にされてしまうだろう。ごめんごめん、と謝ると一瞬納得いかないそぶりを見せる。が、すぐにいつもの表情に戻った。



「まぁいい。飯ができたから早く食え。」

と、一言述べると目の前に沢山の料理が僕たちの目の前に広がった。そういえばもうお腹がペコペコだ。すぐに席に座り料理をいただくことにした。



「あのね、おじさん。今日は大変だったんだよ!道に迷っちゃったり、ツバサが蜂に追い掛け回されたりしてね。もう私大変だったんだから!」



「おい!別にどうだっていいだろ!ユメの助けがなくたって俺一人で別に大丈夫なんだからな!」



おじさんと夢美はそれを聞いて大笑いしている。何がおかしい!



「まぁそう怒るなツバサ。お前だっていいところはあるだろうよ。例えばほら・・・」


というとしばらく沈黙が続いた。5秒くらいたってからだろうか、出た答えは「足が速いとか」だった。少しでも期待した俺がバカだった。



 そんな風に盛り上がっていると、あっという間に寝る時間が来てしまった。帰る時間が遅かったのでまぁ当たり前なのだが。大きなあくびをし、そろそろ寝ようと外に視線を向けると何やら森の奥から不気味に光を放つ存在が目に入った。

 ほかの住人・・・?いや、ここの住人は朝方のはずだ。それなら誰なんだ・・・?











—————————————伏せろ、ツバサ。



「えっ、」


 突如、まばゆい光が全身を包む。いったい何が起きたんだ!?

鈍い轟音をうならし、体が焼けるような熱風が窓から噴き出す。


 間一髪、窓の下で伏せていたので僕は即死を免れたようだ。

だが、ほかのみんなは?ダグラスおじさんは?ユメは?



だめだ、体が動かない...。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 木の焼けるにおい。それはとても気分のいいものではない。だが僕が目を覚ますには十分な刺激だった。周りは焼け果てすでに焼け野原になっていた。

 どうしてこんなことに・・・考えるのは後だ。まずはみんなを探さなくては。



 もう見つからないのでは、と少し本能的に感じてしまっていたが答えは目の前にあった。



「ダグラスおじさん!! 大丈夫!?」

ぱっと後姿を確認した感じ、目立った外傷はない様だ。よかった・・・。


「大丈夫?ダグラスおじさん?     おじさん・・・?」


 僕は不用意に近づいてしまったことを後悔した。私がダグラスおじさんだと信じて近づいて物は野生の本能で狂暴化したおじさんの姿だった。



「ガルルルルルルルルル・・・ッ!!!」


「おじさん!どうして!?」


ふと周りを見渡してみる。















  ——————————————————そこには世界樹が、アグシュヴァルトの大樹が燃え上がっていた。

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