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‐第9話‐  蝕み

 確かに玄関から出たはずだが、そこには先ほどの忌々しい空間が広がっていた。 どうやら僕は精神世界から解き放たれたようだ。



「もう絶望なんかしない!! 今ここでお前を倒す、サタンッ!!」


「…おや? 攻撃を受けてもまだ生きているのか? アハハハッ!!! しぶといやつはボク、大好きさ!!」



 そういうと甲高く笑い始める。 その声は森中に響き渡り、まるで世界が滅びようとしている深淵の時のようだった。



「それに、キミがボクを倒せばこの子 (ユメ)は死んじゃうんだよ! ホントにキミが倒せるのかい?」


「ああ、そうだ! このまま倒せばユメは死んじゃうよ。 だけど、お前は一つ勘違いしてるみたいだ。」


「勘違い…? ボクは何も間違ってなんかないさ。 ボクはこのままキミ達の力を吸収して世界と一つになるのさ。 そう、神様だよカミサマ!!」


「一つ訂正してやる、サタン。 神様はどんな時も僕たち人間を見放したりなんかしなかったさ。 僕たち人類が始まって、今終わろうとしているそんな時でも。 一人たりとも見捨てなんかしない!!そう、一人もだ!!」


「フン…しゃべらせておけばそんな口を。 実に『フユカイ』ってやつだ。 贖罪(命乞い)はもうオワリだ!! 存在ごと消してあげるよ!!」


 そういうと、サタンは先ほどの一撃のように力を溜め始めた。 それと同時だ。 僕の右手が光り始め、見る見るうちに一つの剣が現れ始めた。 この光の暖かさにどこか懐かしさを感じた。



「そうか…父さん、母さん、今まで見守ってくれてたんだね、ありがとう。 ねぇ、聞いて。今人類がとても危険なんだ。 ユメも捕まってしまった。 お願い、父さん、母さん。 もう一度、もういちどだけ力を貸して。 人類を、この世界を、ユメを救いたいんだ!!!」


 一瞬、どこかで父さんと母さんがほほ笑んだ気がした。 すると、みるみるうちに背中に何か違和感を感じた。 一瞬の鋭い痛み、そして同時に僕の背中には大鷲のような光の翼が生えていた。 まるで、世界の闇を払う一人の英雄のような力と希望が満ちていた。


「フン…! 小癪こしゃくな!! いまさら力を解放したところで世界は救えないんだよッ!!」


「それは、どうかな。 やって見なきゃ、分からないことだってあるんだよっ!!!!」


 そういうと同時にもう足は地面を離れていた。 授かったばかりの翼だけど、飛び方は熟知していた。 まるで幼少期から練習していた自転車のような感覚だ。 


つらぬけっ!!! 破閃輝はせんこうッ!!!!」


 全力の勢いとスピードで疾走の如くサタンの胸部を貫いた。 サタンのその体からは解放してくれと言わんばかりの悪夢や絶望が血のように溢れ出した。 どろどろと紫の液体が流れたかと思うと数秒でその風穴は塞がっていった。 


「ムダだよ、無駄なんだよそんな攻撃! そんな攻撃じゃボクは倒れないよ。 アハハハハッ!!!」


「残念だけど、今のはフェイクだよ。 こっちが本物だよ!!」


 奴が声を上げる前に僕は加速してサタンの心臓部を突き刺していた。 さっきの攻撃でユメの位置は大体わかった。 光の剣を突き立てユメを探る。 …どこだ、どこからか声がする。


「ユメっ!! どこにいるんだ!?」


「ツバサ…? ツバサなの!? 駄目!ツバサもこの闇に呑まれちゃう! 私は放っておいてどこか遠くへ逃げて!!」


「大丈夫!! もう僕たちは負けたりなんてしないさ。 だってあの時約束したろ? 何があってもユメを守るって。」


「私の計画を…ジャマをするなァァァァッ!!!!」


 サタンの力が増してきた。まずい、このままだと僕も押し込まれる!


「ごめんツバサ、私、やっぱり怖いよ! このまま一人で死ぬなんていやだよ!」


「ユメ!! 早く、はやくこの手につかまって!!!」


 あと1cm手が届けばっ! だが、ますます増してくるサタンの力によってどんどん距離が遠ざかっていく。 それどころか、もう僕の視界にはユメの腕しか見えていなかった。


「もう少し、もうすこしなのにっ!!!」


 もうユメの指しか見えなくなったほど沈んだ、その時だった。 突然サタンの力が弱まり、周りの圧力から解放された。 それと同時に僕の手には暖かいユメの手のひらが握られていた。


 そのまま思い切り引き抜き僕の両腕に抱える。 そこには久々に感じる人のぬくもりがあった。


「ありが…とう。 また…助けてくれるって信じてたよ。」


 少し辛そうに声を上げるとそのまま気を失ってしまった。 おそらく体内の魔力を消費し疲弊してしまったのだろう。


 しかし、なぜあの時力が弱まったんだ? 考える暇もなく、答えが出るのはものの数秒だった。 顔を見上げるとそこには見覚えのない薄紫の結界印が展開されていたのだ。 その足元には、2人の可憐な影があった。



「遅くなったわね、少年。 ようやく天族様のお役に立てたかしら?」



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