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‐Prologue‐世界樹の森で

 無限大に広がるような青空。まるで先ほどまで雨が降っていたとは思えないほどだ。

 

 春の暖かくなった木漏れ日が心地よく僕の体を照らす。もうひと眠りと行きたいところだが、下のほうから聞き覚えのある声が聞こえた。


 重い体を起こし、大きなあくびをして下を見下ろすと幼馴染の夢美がこちらを覗き込むようにして見つめていた。


「ちょっとツバサ!またサボってるの?早く帰らないとおじさんに怒られるよ?」


「なんだよユメ、ちょっと昼寝しただけだろ?そう怒るなよ。」


「別に怒ってなんかないもん。あとで怒られても知らないんだから。」


 そう言い放ち、プイっと別の方向を見るとそのまま立ち去ってしまった。まったく、怒ってないというのはまったくのウソのようだ。

 夢美は一度ヘソを曲げると、とことん面倒な女の子だ。これは僕の幼馴染による、長年の付き合いにより判明した所である。


 とはいっても、お互いどこで生まれ、誕生日はいつなのか、ましてや親の顔すら覚えていないのだ。


 なぜなら僕たちは捨て子だからだ。沢山の高知能生物が存在するアグシュヴァルトの大樹にお互い放置されていたこと以外何もわからない。


 ただわかるのはヒトの言葉が話せるいわゆるゴリラの群れに助けられ、今こうして生活している。

 最近知ったことだが、こういった件についてオオカミやクマに育てられた子供たちは少なくない。僕たちもその人たちの一人なのである。


 急いで木から降りようとしている間にも夢美は足早に遠ざかっている。早く追いつかなくてはまたおじさんに怒られてしまう。


「おい!置いてくなって!流石に昼寝してたのは悪かったよ・・・」


「まったく、ツバサは食料調達の時、ぜったい私まかせにするんだから。私みたいな能力は使わなくても食料は調達できるでしょ?」


「いやいや、普通に無理だって!どうしたら物陰に隠れてる動物とか見つけられるんだよ。」


 夢美は昔から不思議な能力を持っており、様々な生命反応を察知することができるのだ。


 特定の生物を探し出したり、近くにいる生物に危険を呼びかけることもできる。おそらく、持っているカゴに入っている小動物たちはその力を利用して捕まえたものだろう。


 その力を利用し、毎回軽々と動物や木の実などの食料を確保するのである。幼馴染とはいえ、あまりにも優遇された力であると改めて実感した。


 こうして歩いていると、僕らの家の目印であるアグシュヴァルトの大樹が木々の中から顔を出した。


「ほら、ツバサ。家が見えたよ!昼寝のことはおじさんには言わないから、早くかえろ?」


こうして僕たちは明るく、まだ足元が見えるうちに家へ急いだ。

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