表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第四章 魔の法則
57/60

黒の魔導師

ヴェヴェングルとヴォルガントの中間にある、龍が眠ると呼ばれる地にて、シンとファルナは地神龍と会っていた。

地神龍のもとには二人の人間がいて、シンは地神龍から神の試練についての話を聞くのだった。


「つまり、彼らは神の試練に携わるはずの人間であなたが神の試練に携わる神龍。その為に彼らを保護、彼らの娘を探している。ただ、石の所在によってどう転ぶか分からないから神託を待っている。ということ?」


この龍長く生きている割に説明が下手だな、などと思いながら、シンは地神龍の説明を纏める。


「うむ。そんなところだ」


地神龍はシンのまとめに頷くと、言葉を続ける。


「そこでの、代々の付き合いがあるこやつらを見捨てるのも忍びないから、魔導師よ、ちょっとこやつらの娘の居場所を見つけて来てはくれないか? 世界に干渉することを許されたお主らなら容易な事だろう?」

「……いいけど、条件があるよ」


地神龍の頼みにシンは条件を付ける


「ほう、その条件とは?」

「僕の問いに答えて」

「ふむ……。我の答えれることなら答えよう。して、その問いとは?」


シンの出した条件に条件を付けて、質問を促す。


「魔法とは一体何か?」

「ふむ、魔法とは……か。これまた随分と抽象的な問いだな」


地神龍はシンの問いに考える素振りを見せる。


「…………」

「…………」


何かを考える地神龍をシンは急かすことなく、ただ言葉を待つ。

沈黙が広がる中、未だ言葉を発することのない二人の人間は居心地が悪そうにしているが、地神龍にしろ、シンとファルナにしろ、伝説並の存在であり、何も出来ずにいた。


やがて、地神龍が口を開く。


「魔法とは、神が残した世界へ干渉する為の術、かな」

「……何故、神は世界へ干渉する術を残した?」


地神龍の答えを聞いて、シンはすぐに質問を重ねる。


「……何故? 何故、か……。それこそ、神のみぞ知ることであろう。その答えは知らんな」


シンの問いに地神龍は首を横に振りながら答える。


「……そうか。…………では、魔力とは?」

「うむ。魔力とは世界そのものだ」


続けるシンの問いに、今度は考えることなく答える。

だが、その答えにシンは眉を寄せる。

頭の中で言葉を整理し、理解しながら、疑問を口にしようとする。

だが、口にする前に整理がつき、地神龍の言葉に納得した。


「なるほど。そう言うことか」


一瞬にして今の答えから、続く問いと、その問いの答えまで導き出したシンに、地神龍は笑みを浮かべる。

そこで、理解の追いつかなかったファルナはシンの袖を引き訊ねる。


「大したことじゃないよ。

 創造神は世界と生命を創った。そして、生命は魔力と直結している。魔力は世界そのものだから、生命も世界に含まれる。では創造神が創った世界と生命の違いは何か? それは至って単純で、魔力を創り出し、消費するのが生命。世界とはその流れを支える為にただそこに存在するだけのもの。

 ……そして、ここから導き出される最後の問い。神とは?」


ファルナにシンの一連の考えを説明していくうちに出てきた問いをそのまま地神龍に訊ねる。


「くっくっく。神とは、世界を創る者だ」


地神龍は今までで一番大きな笑みを浮かべ、シンの問いに答える。


「我が答えてやれるのはここまでだ。それでは娘の居場所を見つけてくれよ」


シンが地神龍の言葉を整理している間に地神龍は言葉を重ねる。


「分かった。何か手掛かりはある? あと何日かしたらヴェヴェングルに戻らなくちゃだから。そんなに時間はないよ」

「おい」


シンが手掛かりになりそうな物がないか地神龍に訊ねると、地神龍はそのまま二人の人間を見て、声をかける。

声を掛けられた二人は一瞬竦み上がるも、すぐに龍の方を向いて、首を横に振る。


「無いそうだ」

「それなら、もし数日の内に見つけれなければ先に用事を済ませたいんだけど、いい?」

「おい! どれくらいなら待てる?」


シンが龍に向かってしか話さないため、地神龍はいちいち人間に確認をとる。

というのも、龍の足元にいる人間と、穴の手前、龍の全貌が見えるであろう位置にいるシン達では普通に話しては声が聞こえないのだ。


「あ、その、出来るだけ早くお願いします」

「出来るだけ早い方がいいそうだ」

「……分かった。長くても半年あれば見つけれると思うよ」

「では頼んだぞ」


シンは半年を宣言する。

地神龍の言葉を最後に、シンはファルナを連れて転移する。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



場所はヴォルガントの街が遠くに見える位置。

東側では既に日が昇ろうとしており、空は明るくなり始めていた。


「ファルナ、次の転移で街の中に入るよ。ひとまず認識阻害をかけるから騒ぎになる事はは無いだろうけど、あの二人の娘をどうやって見つけるか、だよね。行くよ」


シンはファルナに声をかけ、再び転移する。


街の中に入った途端に、周囲のただならぬ雰囲気を感じ取る。


「っ……!」


シンは即座にファルナをローブで覆い、気配遮断、認識阻害、光学迷彩、消臭、隠密など多種多様で同系統の魔法を重ねがけし、更に『覚醒』を使って魔法の効力を上昇、外部に漏れでる魔力の波長を界力と合わせた後、即座に転移する。


場所は街に入る前にいた場所だ。

街を覆いつくすほどの異様な何かを感じ、即座に、全力で身を隠し街を出たが、書き換えた魔力からそこに誰かいたことは気付かれただろう。

流石にどこに転移したかまでは読めないはずだが、あきらかな異常が起きている街をシンは睥睨する。


そこでふとファルナの様子がおかしいことに気付き視線を向けると、シンがローブの中に抱え込んだファルナはシンに抱きつくも、体中が震えており、シンの体に回した腕にも全く力が入っていない。完全に寄りかかり、シンに支えられている状態だった。


今までにない程何かに怯えているファルナに、シンは嫌な予感を感じ取る。


「やあ、僕の研究所によく来たね」

「っ……!」


不意にシンの後ろから声がかかる。

突如として現れた存在にシンは驚き、距離をとる。

転移魔法を使ったのは分かったが、術の発動が速すぎて、シンが魔法を感知する前に転移したのだ。、


「わぉ、思ってたより子供だ。うーん。子供とは思えない魔法だったんだけどな」


ふざけた様子が感じられるその言動の裏に、その体から発される異様なオーラがあった。


「……お前は?」


全身の警戒を正面の男に向けながらシンは短く訊ねる。

同時に光学迷彩や認識阻害などの先程かけた魔法の一部を解く。男の実力はシンよりも上だろう。

ただ一つ、シンは男の根源に魔導師の力を察知していた。


「うーん。人に名を聞く時は自分から名乗るものじゃないかなぁー」

「…………」


適当な口調だが、異様な不気味さがある。

そして、シンが名乗ろうと僅かに口を開いたところで、今までシンに支えられていたファルナがシンの体に回した腕に力を込めて抱きつく。そして、シンが名乗るのを止めるかのように激しく頭を横に振る。


「あれれー。もう一人いたのかぁー。いやー、完全に騙されちゃったなぁー。流石にその年でその技が使えるだけのことはあるね」


シンは『覚醒』とローブでファルナの魔力を完全に隠していた。他の魔法も内部効果だけなので、流石の男も気付けなかったようだ。しかし、それも意味なく、シンは全ての魔法を解除する。

無論『覚醒』は継続している。それでも反応速度に差があるのだから。


以前エンドに教わった『覚醒』ならば魔力がだだ漏れで、すぐに魔力切れになってしまう恐れがあったが、シンはデュランとの戦いの際に『覚醒』を御しやすく改良していた。

これはシンだけの改良法だが、ローブ状の杖と自分の魔力を織り交ぜることで、消費魔力を極限まで減らし、尚且つ自分の上限以上の魔力を制御するというものだ。


元来魔導師の杖は魔力の塊であり、自由に形や質を変えることが出来るが、それを動くもののまま留めることは初めは難しいものだ。その為、大半の魔導師は持つのが邪魔だと思った際に指輪や腕輪等に変えるのだが、シンは天性の才能でそれを服にしたのだ。その状態を継続すれば自然とその形を維持するようになる。


「それにしても、僕の研究所に何しに来たのかなぁ?」

「……女を探している。隣国の娘だ」


薄気味悪い笑みを浮かべる男の問いにシンは警戒を含んだ声で答える。

だが、シンの答えを聞いた男の動きがピタリと止まる。


「……ああ、………神の……。……、……神………。…………」


男の顔から笑みが消え、ぼそぼそと何か呟いているが、それはほとんど聞こえなかった。


「それじゃあ、仕方ないよね?」


動きを止めていた男は嘲笑するような笑みを浮かべ、シンの方に視線を向ける。

同時に『覚醒』を発動し、その存在感の威圧が膨大に跳ね上がる。


「っ!?」


男が魔法を発動しようとするのを察したシンは、エンドに教わった魔導師との戦い方を即座に思い出し、その魔法を阻害する様に界力に干渉する。

同時に魔法の発動までが体内で完結する身体強化の魔法を発動する。

男の魔法を阻害する為、男の打撃を回避するため、周辺を縦横無尽に動きまわり、逆に魔法を打ち込もうと狙う。


ローブの中で左手でファルナを抱えながら行動している為、デュランと戦った時よりも僅かに動きが鈍くなっており、ギリギリでの戦闘となっている。

だが、雷帝龍の加護のおかげか、雷系魔法の発動には魔力の消費が少なく、かつ発動が少し早い。そのおかげか、男はシンの雷系魔法の対処に手を焼いている様子がある。

とはいえ、一種類の魔法だけの使用だと対処が容易になる為、他の系統の魔法も混ぜて使っている。


魔力の動きから魔法を先読みし、それを打ち消すために適切な場所に魔力を動かして、界力に干渉しなければならない。

同時にこちらも攻撃を仕掛けなければ一方的にやられるだけだろう。打ち消すための魔力の方が消費が多く、実力が拮抗したら魔力量の勝負となるのだ。もはや膨大過ぎて量の確認など不能な魔導師の魔力量で勝負するのは非常にリスクが高い。


そのほぼ互角の戦いは、十分ほどで勝負が着いた。

シンの発動した風魔法の一つが奇麗に発動し、男の右肩から先を切り落としたのだ。


だが、風の魔法が当たった瞬間、男は左手を縦に振る。


「くっ!」


シンは反射的に左側に大きく跳ぶ。

直後、シンが先程までいた場所を男の手から飛び出た黒い何かが通過する。

黒い何かが通った跡は、魔力が異常な歪みを見せており、もはや次元が違った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ