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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第四章 魔の法則
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研究所

寸分の狂いなく転移した先は博士の研究所の入り口前だ。

その扉を開いて中に入ると、博士の魔力を頼りに博士の下へ向かう。


「何じゃもう戻ってきよったのか」


博士も、シンとファルナの魔力を感じ取ったのだろう。部屋から出てきて、シン達を出迎え、声をかける。


「ただいま戻りました」


シンも挨拶を返す。ファルナもその横で軽くお辞儀をする。


「ではこれからお前たちが暮らす部屋に案内するとしよう」


そう言って博士はスタスタと歩いて行く。

その後ろをシンとファルナは黙ってついて行く。


案内された部屋は博士が先程いた部屋からそう遠くない場所にあった。

一部屋の中に、和洋折衷、家具もそろって、ずいぶんな広さになっている。


「この部屋を好きに使うと良い。それと片付けが終わったら勝手に他の部屋も見ておきなさい。ただしむやみに魔力を流さぬようにな。どこで陣に魔法が触れて発動するやも分かりはせん」


そう言い残して、博士は元居た部屋に戻っていく。

とりあえず、シンとファルナはこの広い部屋を見て回る。

部屋の片隅にベットが二つ並べられており、その横には机が二つ、その反対に書棚がやはり二つあり、部屋の奥は一段上がって畳になっている。

調理場はないのだが、冷蔵庫は備え付けられていた。部屋の温度を操作する魔道具も備え付けられており、後で、博士に使ってもよいのか尋ねたら、普通に良いと返事がもらえた。

設備としては一級貴族並である。


その後、他の部屋を見て回ったが、生活感の出ている部屋はなく、半分は書庫と化していた。

また、入り口に近い部屋には隠蔽魔法を常時発動している魔法陣や認識阻害の魔法を発動している陣があり、非常に興味深かった。

一番奥にあり、一番大きな部屋は魔法の試し打ちをする場所なのか、いくつかの的の様な人形と木でできた不思議な紋様をしたものがあった。また、アシウェルとウォーグルの魔力の残滓も感じ取ることが出来た。


最後に、その大きな部屋の手前にある博士の部屋に寄る。

部屋の戸をノックすると、すぐに返事があり、入るように促される。


立ったまま本を読んでいたのだろうか、博士はシン達が部屋に入ると、手に持っていた本を机の上に山積みになっている本の上に更に重ねる。


「もう見て回って来たようじゃな。それではここでやって貰うおぬし等の仕事の説明をしようかの」


博士は鋭い視線をシンに向けて、説明を始める。


「まず儂の研究について説明するとしよう。私はここで魔法陣の研究をしておる。そなた等も魔導師ならば魔法陣は知っておろう?」


シンとファルナが頷いたのを確認し、博士は話を続ける。


「その魔法陣を立体にすることでより小規模な陣としより大規模な効果を発揮させようというのが儂の研究のテーマじゃ。ここに一つの成功例がある」


そう言って博士が取り出したのは木で作られた複雑な形をした球体だった。

大きさは片手で完全に隠せるほどに小さい。


「その陣に魔力を流してみよ」


博士に渡されたそれにシンが魔力を流すと、魔法が発動したのを感じ取れた。

身体中から力が漲ってくる。

シンからしたらその効果は意味を持たない程度の量だが、ヴェルマ達が使う身体強化の魔法よりは強い効果を持っているだろう。同じだけの効力を平面の陣にすれば直径にして八倍の大きさが必要になるだろう。ただ、厚みの観点から見たら、紙に書ける平面の陣の方が良いのかもしれないが。


何にせよ、シンは見たことない球状の魔法陣に見惚れ、興味を惹かれていた。

手に持つ球状の木をしげしげといろんな角度から眺め、自分の知識と照らし合わせて法を紐解いていく。


「博士、他には無いんですか?」


一頻り眺めた後、シンは更なる好奇心に襲われ、博士に詰め寄る。


「勿論あるぞ」


球状の魔法式に興味を惹かれたシンを楽し気に見ながらも、博士は似たような木の彫刻、立体型魔法陣を取り出す。

それぞれの彫刻にはタグが付けられており、何の魔法かが書かれていた。

シンはそれらを一つ一つ楽しそうに見分していく。シンが見た後はファルナも同じように手に取って見ていく。


シンとファルナが粗方見終えた所で博士が声をかける。


「それでは仕事の説明をするとしよう。アシウェルとウォーグルには私が作ったこれらの立体型魔法陣に魔力を流して魔法を発動させ発動した魔法の記録をとっていく作業をしてもらっていたのだが、そなた等は魔導師じゃしそれじゃ物足りんじゃろう。じゃから普通の魔法陣から立体型を作る所もやって貰う。この立体にする作業が一番難しいのじゃ。何せ未だ法則が分かっていないのじゃからな。立体にする時のこの法則を見つけるのが今の研究の第一段階と言ったところじゃ」


博士は仕事の内容の説明と目標を告げる。


「それと食事は朝昼晩と勝手にとるがよい。その時には儂の分も持ってくるように。研究の手伝いと家事がそなた等の仕事じゃ。分からないことがあったら何でも聞きなさい。答えれるものは答えよう」


博士はそう言うと部屋の棚から一冊の本を取り出してめくり始める。


「どうするの?」


ファルナがシンの袖を引きながら訊ねる。

一瞬何に対する問いなのか分からなかったシンだったが、体内時計が五時を回っていることに気付く。

そして、大きく頷いて答える。


「そうだね。まずは食事を作ることにしよう」

「はい」


ファルナはシンの意見に微笑んで従う。


入り口から最奥の部屋の扉のちょうど中間の辺りに位置する調理場に向かい、シンとファルナは夕食作りに取り掛かる。


調理場に入って、冷蔵庫の中身を物色しながらファルナはふと気になったことを訊ねる。


「シン、シンは料理も出来るの?」

「大丈夫。料理の化学式は覚えてる」


シンは握り拳を作り、自信満々の決め顔でそう言い放った。

その時ファルナは背筋に冷たいものを感じた。同時刻博士も悪寒を感じ取っていた。


ファルナはエデンにいた三年間で、魔法以外に少しずつ医学と料理に取り組み、習得していた。

全てはファルナの中で絶対の存在であるシンの役に少しでも立つためだ。


ファルナは一緒に作業できることに歓喜した。

今までの旅の道中でもファルナは食事支度の手伝いをこなしていたが、ルルの他にシャルマやメシスもおり、商人達は皆それなりに料理が出来た為、シンが調理に手を出すことは無かった。


「じゃ、始めようか。……何作ろっか?」


意気込んで袖をまくり上げたシンは冷蔵庫の中を見て、動きを止める。

そんなシンの様子にファルナは楽し気な笑い声を上げる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私は料理は詳しくないので割愛する。

ただ、一つ言うならば、シンもファルナもそれなりに楽しく料理に取り組み、今後も食事を作る時間は一緒にやることが増え、ファルナの楽しみの一つになっていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



博士に食事が完成したことを告げに行く。博士は左手で本をめくりながら、右手に木の板を持って、形状変化の魔法で木の形を変えていた。

博士も作業の途中ではあったが、食事は優先する様で、手に持っていた本と木を置くと、すぐに調理場に直結している食堂に顔を出した。

既にファルナが食事を並べており、良い匂いが漂っていた。


博士は食事を摂りながら、仕事についての追加説明をしていく。


「基本的な仕事は先に言った通り仕事の手伝いと家事全般じゃがまず食事の時間はそなた等に任せる。一日三食が望ましいがまぁ二食以上であれば構わん。食材は沢山仕入れてあった筈じゃがなくなったら儂に言ってくれ。買い出しの日を用意しよう。次に部屋の掃除じゃがこれはそなた等が使ってる部屋だけでよい。儂が気になった部屋は儂が魔法で奇麗にするからそなた等は特に気にせんでよいじゃろ」


博士は食事を摂りながらも説明を続ける。ただし、口の中の食べ物はキチンと飲み込んでから話している。

それでいて食事のペースは速い。あと一息で一気に話すから聞きづらい。


「あとは、洗濯か。これも魔法で済むじゃろう。まぁ良い。分からないことがあったら聞きなさい。私は部屋に戻る」


博士はいつの間にか食事を終えていた。説明するのが面倒になったのか、結局「分からなかったら聞け」で説明を終わりにし、部屋に戻っていく。


シンとファルナも食事を終えると、博士の研究室に向かう。


部屋の中では博士が本と木を持って試行錯誤していた。

早速シンとファルナも立体型魔法陣作りに取り掛かる。


しかし、日付が変わるかという時間まで取り組んでも、全く一向にこれっぽっちも完成する気配はしなかった。

あまりの難度にシンは初めの方こそ意気込んでいたものの、次第に長期戦を覚悟していた。

ファルナも同様に初めは意気込んで熱を見せていたものの、今では放心していた。


「ふぅ、ファルナ、今日はもう寝よう」


シンが区切りを付けて息を吐き、ファルナの様子を見て今日は終わりにすることにした。

完全に手の止まっていたファルナを動かして部屋に戻って寝ることにする。


部屋にベットは二つあったが、寝やすい服装に着替えると、入り口から近い方にファルナを寝かし、自分も同じベットに入って横になる。

シンにとってもファルナにとっても互いのすぐそばで寝ることは日常になっていた。


そのまま、シンは長くなりそうな難しい研究について考えながら眠りについたのだった。


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