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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第三章 寄り道の旅路
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二人の回収

ベジディザとの遭遇から更に一ヶ月ほど。

シンを連れたルル達の商隊は旧ヴァルキ王国とヴァハラ帝国の国境に聳えている山脈の手前にある街に来ていた。


「この先の山のどこかにアシウェルさんがいるのね」

「ウォーグルも」


道中でも情報を仕入れ、アシウェルとウォーグルが山脈のどこかに売り出されたのは分かっている。

だが、それを見つけ出すのは普通に考えて困難を極める。

時間をかけてでも探し出す腹積もりだが、ルルと旅をするのはここまでになる。


「ルルさん、ここまでお世話になりました」

「ううん。皆がいてくれて心強かったわ」


サフィア達はルルと別れのやり取りをする。


「シンとファルナちゃんはどうするの?」


ルルが訊ねているのは、ルルについて行って旅を続けるか、サフィア達と共にアシウェルとウォーグルを探すか、だろう。


「うん。あの山に面白そうな反応があるからそれでも見に行こうかなって思ってる」

「そう。……気を付けてね」


シンの答えはどう解釈してもルルとの旅は終わりだと告げている。かと言って、サフィア達の手伝いをするわけではなさそうだが。

今まで、歳の近い友人と呼べる存在がいなかったルルからしたら、やっとできた友達との別れと、再会した弟との別れで、再び仕事だけの旅になる。寂しさが込み上げてくるが、サフィア達にもやることがあるし、シンが長旅を好まないことは分かり切っていたことだ。


「その近くにアシウェルさんとウォーグルさんっぽい反応もあるし、お兄ちゃん達こそどうするの?」

「えっ!? もう見つけたの!?」


時間がかかると思われたアシウェルとウォーグルの捜索は始まる前に終わってしまった。


「見つかったなら早く会いに行きましょ」

「そうそう、早く早く」


二人に早く会いたいサフィアとチーシェルがシンを急かす。


「まぁ行くのは構わないけど……」


シンとしてはその後どうするかの話をしていたのだが。

話しかけたヴェルマも、もう移動するつもりでいる。


「じゃあ、ちょっと行ってくるね」


ルルの方を向いて、戻ってくることを伝える。ただ、今の言い方でそれが伝わったかは微妙なところである。別にルルが待っていなくても合流できるから問題はない。


「転移するから捕まって」


左手はファルナと繋いでいる。あと、サフィア、チーシェル、ヴェルマ、メシス、シャルマの五人がシンに捕まったら転移魔法を使って巨大な魔力反応のある地点に転移するだけだ。ファルナも感じ取っているだろうが、おそらくは魔導師がいると思われる。


魔導師の魔力を感じ取れる地点の周辺がどうなっているのかは実際に近付いて探索魔法を使わなければ分からないし、魔導師が屋内にいるか屋外にいるかも分からない。

屋内にいるなら、急にそこに転移するのは失礼だし、思わぬ事故を招きかねない。


それ故に数度、転移する必要があり、出来ればスムーズに目的を達成したいものだった。


全員が捕まったのを確認すると、シンは転移魔法を発動する。

一度目の転移で、山の麓まで移動する。

そこで速やかに探索魔法を使って、周囲の地形や生命体を調べる。

山の地下の方に広い空間があり、そこにアシウェルとウォーグルの反応がある。

そこに繋がるように小さめの空間があり、そこに魔導師の反応がある。

それ以外にもいくつか空間が出来ているところはあり、外まで続いているのは山の中腹あたりに出ていた。


二度目の転移で、その入り口前に移動する。

明らかに隠蔽魔法がかけられており、通常見つけるのは不可能だろう。

だが、そこは扉がしっかりと付いており、来訪者を告げる鈴も付いていた。


早速その鈴を鳴らし中の物を呼ぶ。

暫らくすると、扉が開いて、中からウォーグルが顔を見せる。


「はい、どちら様……えっ!?」


ウォーグルは外に立つシン達、特にチーシェルを目にして驚いた様子を見せる。

だが、驚いた様子を見せているのはウォーグルだけではない。突然出てきたウォーグルにサフィア達も驚いている。

驚いていないのは魔力を感じ取ってウォーグルがいることに気付いていたシンと、ウォーグルを知らないファルナだけだ。


「〜〜〜っ! ウォーグル~」


いち早く驚きから立ち直ったチーシェルがウォーグルに飛びつく。

ウォーグルは優しく抱き留める。


「それにしても、何でこんな所に?」


ウォーグルはチーシェルの頭を撫でながらサフィアに顔を向けて訊ねる。


「それは勿論二人を迎えに来たに決まってるじゃない」


いい加減驚きも抜けて、サフィアが答える。


「いや、そうじゃなくて、博士が言うにはここって隠蔽魔法がかけられてて、魔導師じゃなきゃ見つけれないって話だったんだけど」

「まぁ、見つけたの私達じゃなくてシンだしね」

「へぇ、シンが、……え!? シン!?」


そこでウォーグルがサフィアの横に立つ少年、シンに目を止める。

シンの姿を捉え、過去の面影を見て取り、驚愕する。


「久しぶり、ウォーグル兄さん」


驚くウォーグルにシンは片手を上げて挨拶する。

相変わらず驚いたままのウォーグルだったが、そこに新たな人影が出現する。


「遅いぞウォーグル。私は客人を招待しろと言ったんだ」

「博士、すみません」


突如として出現した白髪の老人はウォーグルに苦言を告げ、シンに向き直る。

ウォーグルに博士と呼ばれた彼は、老齢ながらも肉体はまだまだ元気で、なにより魔力に満ちている。


「さぁご客人よ中に入るといい」


博士は中に入るように促して、先導する。

シンはすぐさまその後に続き、サフィア達も、ウォーグルが「悪い人じゃないから」という言葉を受け、後に続く。


案内されたのはたくさんある空間の中の一室。

そこは客間だった。

博士はシンをソファに座らせ、自分も向かいに座る。


「出せるようなものは何も無いのでね。早速本題に入ってくれ。隠してあるここに来たのだ何か用があってのことなのだろう?私は忙しいのだよ」


博士は口早に告げ、シンを見る。

シンはその視線を受け、サフィアに視線を向ける。釣られるように皆の視線がサフィアに集まる。


「その、ウォーグル君とアシウェルを返してください」


視線にたじろぐサフィアだったが、目前まで迫った再会に目的を告げる。

それを聞いた博士は僅かに眉を吊り上げ、一瞬何かを考えるかの様に見えたが、すぐに口を開く。


「返せと言うのは可笑しな話だ。彼らの全ての権利は私が所持している筈だがね?」


博士は鋭い視線をサフィアに向けて、言葉の隙を、前提の違いを指摘する。

シンとファルナは博士のその目にアルフレッドを思い出した。普段は柔らかな笑みを浮かべているアルフレッドだが、その笑みが消えた時には鋭い目付きをしているのだ。アルフレッドと博士の目付きはどことなく似ていた。


鋭い視線をぶつけられたサフィアは体を強張らせるも、言葉を変えて要求する。


「そ、それじゃあ、二人を解放してください」

「解放か。少し話して分かったよ。私はこれでもアシウェルとウォーグルの言葉は聞いていたから大体の考えや意見は理解しているつもりだ。だからその要求を叶える為に譲歩して一つだけ条件を出そう。その条件をクリアできたら二人を解放しよう」


博士からしたら二人を解放することを阻むものはほとんどない。それどころか、早く研究に戻りたいため、一度目こそ意地悪をしたが、話を長引かせるのはまさに百害あって一利なしである。

そもそも、最初にシンと目を合わせて視線を交わした時に大体の落としどころは付いているのだ。


「その条件とは?」


何も知らないサフィアが不安そうに訊ねる。チーシェルやヴェルマ、ウォーグルも博士の答えを固唾を呑んで見守る。


「アシウェルとウォーグルより魔法が上手な人を二人私の研究の助手としてここに連れてくること」

「その助手は僕とファルナでやるよ」


博士が条件を口にするとすぐさまシンが意見を出す。


「決まりだな。術式契約破棄」


シンの発言にサフィア達が驚いて、固まっていると、博士が満足そうに頷き、魔法陣の破棄を唱える。

すると、博士の右手から二つの術式が空中に浮かび上がり、砕けるように消える。

同時にウォーグルの心臓の辺りから一つの術式が浮かび出てきて、同じように砕けて消える。


「ちょ、え!? シン?」


どんどん進んでいく話にサフィア達は完全に置いてけぼりだ。

完全に巻き込まれた形になるファルナは何も言わず、気にした様子も見せない、寧ろ少し嬉しそうにしているが、サフィアやメシスはうろたえている。


「シン! 何も俺たちの代わりにならなくたっていいんだぞ」


頭の回転が速いウォーグルは素早く状況の変化を把握し、シンを止めようとする。


「好きで残るんだから、心配いらないよウォーグルさん。ファルナは巻き込んじゃってごめんね」


博士が悪い人じゃないことも、ここの待遇が悪くないことも他ならぬウォーグルが知っている。

これといってシンを引き留める理由は見当たらず、同時に自分たちがここに残る理由もない。

寧ろ、チーシェルをこんな山奥に住まわせたくはないことを考えれば立ち去る理由はある。


「私は研究に戻るからお前たちはアシウェルを連れてとっとと去りなさい。えーっと、お前さん名前は?」

「僕はシン、こっちは妻のファルナだよ。あなたの名前は?」


博士はウォーグル達に去るように言い、シンの名前を聞いていなかったことを思い出して訊ねる。

シンは名乗り、ファルナを紹介する。そして、博士の名前を訊ねる。


「私はジノヴァ・シャッファーだよ。博士と呼びたまえ」


博士の名前を聞いてシンとファルナはやはり、と顔を見合わせる。


「シンとファルナは早速作業の説明と行きたいところだが、今日はやることも多いだろう。日を跨ぐまでに戻ってくれば今日は自由にしてて構わない」


そう言い残して博士は下の部屋に行ってしまう。

完全に取り残されたウォーグル達だが、今後の方針を決めなくてはならない。


「それより、アシウェルはどこ!?」


サフィアがウォーグルに問いかける。そのあまりの意気込みにウォーグルが一歩たじろぐ。

とそこへアシウェルが扉を開いて姿を見せた。


「サフィア?」


部屋の中の面々を見て、アシウェルは茫然としている。


「アシウェル!」


その姿を視界に収めたサフィアは勢いよくアシウェルに飛びつく。

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