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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第三章 寄り道の旅路
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再会

チートキャラの出現は戦闘描写をつまらなくする

転移した先は暗い森の中だった。

魔力を辿って転移した為、シンもどこだか分からない。

だが、まずやることは分かる。

目の前にいる植物型魔物の排除だ。


シンは右手を掲げると魔力を動かす。

放った魔法は雷魔法だ。

転移時の光に驚き蔦を伸ばしてきた植物型の魔物だったが、シンの放った一撃の雷撃で消滅する。


植物魔物の中には障壁に囲まれたルルがいて、ふわふわと音がしそうな、ゆっくりとした速度で地面に降りてくる。

ルルが地面に立つと障壁が光の粒子となって消える。


「ルルお姉ちゃん」


シンは何が起きているのか理解できず呆けているルルに飛びつく。

ファルナが不満そうな顔をするが、口を出したりはしない。


「え? え? シン? どうして? 何がどうなっているの?」


強烈な痛みが襲ったかと思えばそれが無くなり障壁に守られ、自分を殺すはずの魔物が強烈な光と共に消え、三年前に別れた弟分が目の前にいる。

ルルは状況の変化についていけなかった。


「今説明してもいいけど、浅くて短い話になるよ?」

「じゃあ、後……じゃなくて、今説明して」


シンは久々にルルと会えてテンションが高いようだ。


「じゃあ説明するけど、三年前の別れの時にルルお姉ちゃんに呪魔法をかけたの。もしルルお姉ちゃんが大怪我をしたら、魔法が発動して怪我を治療、周囲に障壁を展開するやつ。同時に僕の所に合図が来て、こうして駆け付けれるってわけ」

「へ~、そうなんだ~」


シンの説明を受けて、ルルは理解できなかった。

十分に説明は出来ているのだが、ルルの頭が回転しない。一瞬でいろいろ起きたせいで思考が鈍っているのだ。

唯一理解できたのは、シンがいる以上脅威はないということだ。


「ところで、なんでルルお姉ちゃんは一人でこんな森の奥にいるの?」


今度はシンが気になっていることを訊ねる。

だが、ルルはそれには答えなかった。


「あっ! そうだ、早く戻らないと」

「どこに?」

「えっと、皆の所、かな」


そこまで聞いてシンは周囲に探知魔法を使う。

植物型の魔物の反応が三、それと戦っている冒険者と思われる反応が八、守られてる商人と思われる反応が四である。


「あ、この魔力はイプラさんだ」

「とりあえず、そこに戻りたいんだけど」

「じゃあ行こうか。ファルナ」


シンがルルの手を取り、ファルナを呼ぶと反対側の手を繋ぐ。

魔力を動かして再び転移魔法を使う。

今度は眩い光が覆うことはない。シン達の姿が一瞬で消えて、移動する。


一瞬で目の前にさっきまで一緒にいた一行が現れる。

他の連中からしたらルルと他二人が現れたように見えたのだが。


冒険者の気がシンの方に逸れ、隙が出来る。

シンはルルと繋いでいた手を離して上に掲げると、魔法を発動する。

周囲に雷撃が三つ落ち、動いていた蔦が地面に落ちる。


一同茫然。

誰一人として状況の変化についていけている者はいなかった。


魔物の脅威が消え、静寂が訪れる中、最初に声を出したのはルルだった。


「えっと、皆無事かしら?」


その言葉で一同は我に返る。


「ルルさんこそ、よくぞご無事で。……あの、そちらのお二人は?」


イプラが訊ねてくる。


「こっちはシンよ。覚えてるでしょ? で、そっちの子は……」


ルルがシンを紹介?して、ファルナのことは知らない為、シンに視線を送る。


「イプラさんお久しぶりです。彼女はファルナ。魔導師です」

「シンの奥さん」


シンがファルナを紹介すると、ファルナが重要と言わんばかりにプロフィールを加える。

まあシンとしても今更否定する気はない。

寧ろルルに改まって紹介しなくて済む分楽になったのかもしれない。


「それは詳しく聞きたいわね!」


ルルは瞳を輝かせていた。何にしてもめんどくさいことに変わりはなかった。


「ルルお姉ちゃん、替えの服はないの?」


シンが溜息を吐きながら服装を指摘する。

先程、シンの魔法で体の傷は癒えたものの、服は酸液で溶けている。

現状、ルルの服はあちこちが傷み、ボロボロになっている。それはシンが初めてルルと会った時に着ていた物の様だった。


指摘されてようやく自分の格好に気付いたルルは一瞬で顔を赤くし、悲鳴を上げてその場にうずくまる。

腰の時空袋に手を伸ばし、商品の中から服を取り出そうとする。


「ん? あれ? あれ?」


だが、衣類をすぐに溶かす強酸液に触れて、時空袋が無事な訳がなかった。

時空袋は戦闘用の魔道具と違って繊細かつ複雑にできている。

少しの傷でも使い物にならなくなるのだ。無論エンドが作った時空袋だ、万が一の事故に備えていくつかの障壁は張ってあった。だが、酸で溶けることは想定外だったようだ。


「うう~、シン~」


ルルが涙目でシンを見上げる。

その様子を見て、ファルナが再び不満そうな顔をするが、シンはそちらには構わない。


「時空袋の方はエンドさんに見てもらわないと駄目だと思うよ。服は僕が創るから」


シンはそう言うと両掌を向かい合わせてイメージを始める。

ほんの二分ほどで服一式が出来上がり、ルルはそれを着る。

シンがイメージしたルル用の服だ。旅用の服装から一転、オシャレ用の服を着たルルは一層華があった。

商人冒険者男女問わずその場にいたシンとファルナ以外の全員から「おぉ」と感嘆の声が漏れた。


「もう魔物は倒したんだよね?」


ルルは全員の注目を浴びて気恥ずかしそうにしながらシンに訊ねる。


「うん。近くに他の魔物の反応も無いよ」


シンは安全であることを伝える。

それを聞いたルル、イプラ、“一陣の風”の三人は安堵の息を吐く。

他の商人は未だ状況の変化を飲み込めず顔を見合わせている。冒険者も同様だ。

だが、そこはそれぞれ説明してもらう。


その間にシンはルルのお願いを聞いて、馬車を直す。

大きい蔦に叩き潰された馬車は潰れた部分を結合させ、瞬く間に動く状態に戻る。

説明を受けながらその様子を見ていた商人、冒険者は驚きの声を上げる。


「とりあえず、今日はもう休みましょう」


ルルの指示で冒険者は夜間の見張りに、商人は馬車の中に戻って寝ることにする。


シンはルルの左隣に座る。

ファルナが再び不満そうな顔をする。いつもシンの右隣に位置していたのだが、今はルルがいる。

定位置を取られたような気がするが、シンに文句を言う訳にもいかず、シンが大切に思っているルルに当たる訳にもいかない。

何よりもファルナは、シンが自分を必要としていないことを理解していた。

右隣の定位置は諦めて、シンの左隣に座る。


両側に座るルルとファルナの会話を聞き流しながらシンは眠りにつく。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



朝、シンはいつも通りの時間に目を覚ます。

すると、左右からルルとファルナが寄りかかっていて身動きが取れなくなっていた。


シンが眠った後も、ルルとファルナはおしゃべりを続けていた様で、暫らく起きる様子は見られない。

シンは寄りかかる二人に構わず立ち上がる。

支えを無くした二人の体は傾いていき、ぶつかるとゆっくりと倒れていく。


それでも起きる様子のない二人を一瞥して、シンは馬車を出る。

馬車の外には最後の見張りをしていた“一陣の風”の三人の姿があった。

ファラメン達はシンのことをそれなりに覚えているが、シンは彼らのことを全然覚えてはいなかった。

それは当然であった。シンは希少な魔導師であるのに対して、ファラメン達は数多い冒険者の内の一人にすぎないのだから。ルルが覚えていただけでも凄いことなのだ。


そんなことは微塵も考えつかなかったファラメンは馬車から出てきたシンに気安く声をかける。


「やあ、おはよう。早いな」

「え? ああ、おはようございます」


まさか声を掛けられるとは思っていなかったシンは、一瞬驚くも挨拶を返す。


「シンも八年ぶりか、あっ! 覚えてないか!? 八年前にちょっとだけ顔合わせたんだけど」


空いた月日を自分で口にして、ようやく覚えていない可能性に気付く。


「すいません。覚えてないです」


シンは謝るが、覚えているはずもないのだ。八年前シンはまだ六歳である。その後二年はころころと冒険者が入れ替わって旅をしていたのだ。その間シンが覚えた冒険者は両手の指の数ほどしかいない。


ファラメン達は改めて自己紹介をすると重要なことを伝える。


「シンの家族をヴィッカの家で預かってたんだけど、会いに来るか?」

「家族? 兄さん、ヴェルマ達のこと?」

「ああ、そうだ。シーアさん達がヴァルキから連れてきたのを剣と魔法を教えて冒険者にしたんだ」

「シーアさんって、水の竜の人だよね? 何でわざわざ? 何かあったの?」


ここに来て家族の情報が入ってくるとは思わず、つい色々聞いてしまう。

八年前に追放されたと言っても一緒に育った家族だ。気にしていなかったと言えば嘘に、ならないが、聞けば気になる。

あと何気にシーア達“水乱舞”の三人は覚えていた。やはり水竜は印象に残る。


その後、ヴェルディオンに着くまで、ルルも交えて情報を仕入れた。


「あの時、既に商会の情報でヴァルキが襲撃を受けたことは知ってたらしいんだけどね、お父さんが気を使ってシンに教えなかったみたい。ついでに私にも」


ヤツバでエンドと会った時には既にヴァルキは崩壊して、情報も行き渡っていた。

もしこの情報を入手していたら、シンの人生は違うものになっていたかもしれない。


それを今考えても仕方ない。

既にヴェルディオンの街に着いてハンデル商会の支店にいる。


「で、ヴェルマに会いに来るのか?」


ファラメンやルルが聞いているのは、このままルルについて行くのか、別れてヴェルマの下に行くのか、である。

今ルル達がいるヴェルディオンから、ヴェルマのいるヴィッカまでは普通五日、往復で十日はかかる。

ルル達の商隊が一つの街に留まるのは最長でも五日、それ以上は商品の流通に支障をきたす。更に、ヴィッカの街で五日滞在した為、ここでも五日も滞在するのは難しい。

つまり、普通に考えたら、ルルについて行くならヴェルマとは会えず、ヴェルマと会うならルルと別れることになる。

まあ、どちらも二度と会えないわけではないのだが。


「とりあえず、兄さんに会いに行こうかな」


シンが出した答えは皆の予想通りだった。これで、ヴェルマと共にルルの下に来れば万事解決である。

ヴェルマ達が共に来るかどうかはヴェルマ達次第だが。


「ルルお姉ちゃんはいつまでこの街にいるの?」

「え? 三日後には出発すると思うけど……?」


続くシンの問いの意図が分からなかったが、予定を教える。


「それじゃあ三日後の朝には戻るね」

「は? おいおい、ヴィッカまでは馬でも五日は掛かるぞ?」


シンの発言にファラメンが驚いて指摘するが、シンは若干困った顔をして答える。


「いや、馬なんかでは行かないよ。転移すればすぐだし」


ルル達はその答えに改めてシンが魔導師であると思い出し、納得の表情を浮かべる。

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