表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第一章 成長
4/60

旅の始まり

予定していたより二年も早く旅に出ることになったシン。

現在六歳。

杖の形状をローブに変え、今は都市に一番近い森-俗称ゴブリンの森-に来ていた。

なお、杖の形状変化は例の本に書いてあった。


ある程度森の奥に進むと、当然ゴブリンが出てくる。

だが、シンが動じることはない。

様々な魔物についてはあらかた魔導師の本に書いてあった。

更に、シンは魔導師で心の成長は早い。


落ち着いたまま魔術を発動させる。

本には注意事項も書いてあった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


燃える物が沢山ある森の中やガスが充満してる所での火魔法の発動は控えましょう。

山の頂上や崖の周辺など下方への被害が甚大になりかねない場所での土魔法の使用は控えましょう。

雨の日や海の中など電気の流れが読みずらい所での雷魔法の使用は控えましょう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


他にもいろいろあった。

発動するのは木魔術。

周辺の木々を操り、ゴブリンを串刺しにする。

シンは魔石を回収し、ローブ内にポケットを創って収納する。

ゴブリンは肉も不味いし、素材になるような部位もないので、魔力の塊である魔石だけ回収するのだ。


更に奥に進むと三体のゴブリンに遭遇する。

即座に土魔法で地面を操りゴブリンの足を捕らえる。

本来杖を使った方が魔術の発動は楽なのだが、杖は今ローブになっている。その為、手から直接魔力を出して魔術を発動する。

後は風魔術でとどめをさす。

魔石を拾いポケットを増やして、しまう。

そうやってゴブリンを倒して奥へ進み続けると、少し遠くにオーガの姿が見えた。

ゴブリンなんかは気配を感じ取ることは出来ないが、上位種のオーガの中には気配で人を察知し襲ってくるのもいるらしい。

オーガの周囲にゴブリンが五匹。

地面を操り全ゴブリンを串刺しにし、風の刃を生み出しオーガを八つ裂きにした。


そこでシンのお腹が鳴った。

朝早くに都市を出てきた為、朝食を食べていない。

注意しながら火を創りオーガの肉を焼いて食べる。ゴブリンは不味いが、オーガは割と美味い。

動物や木の実何かも魔物が食べてしまうことが多い為、街の外には動物や木の実はあまりない。

食事を終えたら移動を再開する。


奥へ進み続けるとやはりゴブリンが出てくる。

ゴブリンもオーガも六歳のシンよりは全然大きい。

だが魔法を使い、森を操るシンには関係ない。

心の中は森の帝王気分だ。決して表情には出ないが。

魔力を使った探索魔術を常に発動して、周囲の様子を確認している為、奇襲を受けることもない。


そのまま考えなしに森を進み続ける。

どこか別の街を求めてただただ進み続ける。


すると誰かが走って来るのを感じ取った。

数時間ぶりに感じた人の気配が気になり、その気配がする方向に向かってみる。

木々の陰から体を覗かせた瞬間、その気配の主とぶつかった。

未だ六歳のシンは余裕で吹っ飛ぶ。

その勢いを利用して後ろに転がり、手で地面から飛び上がり上手く着地する。


「あっ! ごめんな、さ……い?」


ぶつかった気配の主は小さい女の子だった。

明らかにシンよりは年上だが。

女の子は反射的に謝ろうとしていたようだが、目の前に自分より小さい子供がいる異常さに思考がとんでいた。

それはそうだろう。

ここはゴブリンの森、少なくとも子供が来る場所ではない。そんな所に子供である自分より小さい子供がいればすぐにゴブリンに襲われて餌になってしまう。事実女の子もゴブリンに追われていた所の様で、追いついた三匹のゴブリンが女の子に飛びかかろうとしていた。


シンは左手を掲げ、魔術を発動する。

女の子の後ろの地面の形状を変え、ゴブリンを三匹とも串刺しにする。


「ゴグェ」


奇妙な鳴き声を上げながら絶命する。


「え、え? 何、コレ? 救かったの?」


女の子はその鳴き声でハッとして背後を振り返り、ゴブリンを殺すように変わった地形に驚く。


「これ、君がやったの?」


女の子がシンの方に振り返り聞いてくる。

シンは黙って頷く。


「うそ……。君、何者? ていうかこんな所で何してるの?」


女の子の質問にシンは首を傾げるだけだった。

目的地があってこんな所に居るわけではないのだ。


「あっ! 街に戻って救けを呼ばなきゃだった。……えっと、一緒に行く?」


何やらやる事があるらしいが、流石に自分より小さい子を放ってはおけないようだ。


シンは黙って頷く。


「そう。じゃあちょっと我慢してね。『身体強化(フィジカルブースト)』」


そう言うと女の子は呪文を唱え、シンを背負う。

どうやら女の子は魔術士の様だ。

魔法で身体を強化しているようで、そこそこの速さだ。

だが、地面は平ではなく所々で木の根や枝が伸びており、どうしても速さが制限される。

それでも普通の大人よりは速いがこれならシンが身体強化して走った方が速いだろう。

まあ、シンは強化した身体で動いたことは無いからそんな事に気付きもしない。


そうやって背負われながら森を走っていると、前方にゴブリンが出てきた。

シンは意識をゴブリンに向け照準を合わせる。

女の子が立ち止まるとほぼ同時にシンが風魔術を発動させ、ゴブリンが八つ裂きになる。


「え?」


気付いて足を止めた瞬間にゴブリンが八つ裂きになるという現実に女の子の思考は停止する。


「どうかした?」


視線をシンに向けるがシンは僅かに首を傾げるだけだ。


同じような事を三回程繰り返す頃には森の出口が見えた。

ずっと走り続けていた為、女の子の息は上がっている。


「えっと、魔術士、だよね? 身体強化はできる? じゃあ後は一人で行けるね?」


シンが頷くと下に下ろす。


「私急いでるから先にいくね」


そう言うと女の子は街へ走って行った。



女の子が街に行くのを見送るとシンは再び森の中に入っていく。

ヴァルキには戻れないのだから。


シンは身体強化を施し、女の子が来た方向へと向かう。

道中、ゴブリンを見かけるが、木の上を移動することで戦闘を避ける。

こんな忍びみたいなことが何の特訓もなしにできるのは、ひとえに体の小ささと軽さ、そして、生まれながらの才能があったからだろう。

たまにいるオーガがこちらに気付くこともあったが、シンの速度について来れず、戦闘にはならない。


そうして真っ直ぐ進んでいくと、シンは何人かの人間と魔物の集団が戦っている気配を感じ取る。

気配の元に行くと、やはり戦闘が行われていた。崖を背に何人かの大人が固まっており、それを護るように武器を持った大人が十一人いた。だが、人間の数に比べて、圧倒的にゴブリンの数が多い為押されているようだ。

シンは体の軽さと木のしなりを利用してゴブリン達の頭上を飛び越え、人間の集団の中心にいる戦ってない人達の元まで行く。途中で冒険者の魔法使いが反射的に放った火の玉が飛んできたが、魔術で軌道を捻じ曲げゴブリンにぶつけておいた。

大人達は突然上から降ってきた子供に驚き、間が開く。

シンが黙って大人の方を見つめていると、一番身なりの良い恰好をした男性が声をかけてくる。


「おい、ぼうず、何でこんな所にいるんだ? しかも、わざわざこんな詰みかけの戦場に飛び込んで来るなんて」

「……手伝う?」

「は? いやいやお前みたいな子供が下手に手を出しても邪魔にしかならねえよ。戦闘は本職、冒険者に任せておけ。それに今助けを呼びに行っている」

「……ぼうずじゃない、シン」

「ん? そうか。俺はブレイだ。商人をやってる」

「……女の子」

「なんだ、ぼうず。ルルに会ったのか?」

「……森の外まで一緒」

「そうかそうか。無事に森を出たのか。で、お前さんは何で戻って来てんだ?」

「……ぼうずじゃない、シン」


そんなちぐはぐした会話をしていると、左側で戦っていたゴブリンが数を利用して抜けてきた。

だが、流石は冒険者といったところだ。抜けてきているのは装備を着けていないまさに雑魚だけだった。


「ちっ!」


ブレイは腰の銃を抜くとその照準をゴブリンに合わせて、引き金を引く。

銃の魔道具だろう。

シンが魔道具を見るのは初めてだ。

そして、シンは魔導師だ。その複雑な術式に興味を持つのは当然だろう。

同時に、何が起こったかを理解するくらいはできた。

引き金を引いた瞬間、取手に仕込まれた術式が起動してその人から微量に魔力を吸収した。その僅かな魔力を即座に砲身へ送りながら増加させる。そして、砲身に仕込まれた術式を起動、周囲の界力をエネルギー源として風の弾丸を発射した。


その魔道具は簡単にゴブリンを屠っていく。

しかし、如何せんゴブリンの数が多かった。

さらに、右側でもゴブリンが戦っている人達の脇を抜けて来ていた。


シンは右側から迫ってくるゴブリンに対して魔術を発動させた。


地面が動き鋭い土の針がゴブリンを突き刺した。


「……あ」


だが、そこで予想外の事が起こった。

ゴブリンを突き刺した土の針が飛んだのだ。

これは単純にシンのイメージが甘かったのとイメージに沿った魔力の動きが出来なかったからである。

もっと簡単にいえば過剰魔力である。上に向かうベクトルを変更するところに魔力を込めすぎたのだ。


シンが作り出した土の針は十三本。その全てが地面から離れ飛んでいく。

ゴブリンを貫通したものや突き刺したまま飛んでいくもの、その全てが飛んでいく先にはオーガや武装ゴブと戦っている冒険者がいる訳で、当然その土の針による雨は冒険者の後ろから降ることになる。


だが、その針の雨の元にいた二人の冒険者はその針に当たる事はなかった。

というのも、冒険者達が足止めしてるオーガや武装ゴブは知能が微妙に高い。

その為、オーガ達からは正面の土の針に反応したのである。

そして、オーガ達のその反応を見て、背後を振り返り、ギリギリまで迫っていた土の針を反射レベルの動きで回避したのであった。

当然ものすごい隙が出来ていたが、オーガ達も回避行動をとっていたため追撃はなかった。


「い、いったい何が?」

「うおぉぉっ! 前っ、前!」


巻き添えをくった冒険者の片方がシンの方に視線を送ろうとするが、すでにオーガたちが動き出していたため、戦闘に戻る。


ブレイは銃を撃ちながらその様子を確認していた。


「おい! シン!」

「……何?」

「お前もしかして魔導師か?」


シンは黙って頷く。


「そうか、なら話は別だ。ゴブリンの迎撃を手伝ってくれ」


シンは再び頷くと冒険者の方へ駆けてゆく。


「うわっ! なんだお前!?」


シンが冒険者の元に行くと、急に現れた子供に冒険者は驚く。

そこにできた隙に武装ゴブが攻撃を仕掛けるが、シンが魔術を発動させる。

発動させたのは風魔術。既に最前線に来ているためよっぽどのミスでなければ問題なく魔術を放って良いはずだ。


先ほどの失敗を元に、今度は風の刃の切れ味にイメージより魔力を多めに込める。

結果は異常だった。三日月型の刃を作ったのだが、よく切れる部分と全く切れない部分があったのだ。

武装ゴブは右腕を切られ、左の腹を切られたのに、胴の右側と左腕は切れていなかった。


「お前魔術師か? 実力はあるようだな。その調子でゴブリンを倒してくれ」


それを見た冒険者はシンの防御ができる範囲で戦闘に戻った。

シンはその後も魔法についていろいろと試していた。


しばらくすると、前線に冒険者が増え、後ろでさっき聞いた女の子の声がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ