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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第二.五章 再会までの話
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魔物討伐

武器の使い方と魔法を教えてもらい、訓練を始めてから三ヶ月程度の時が過ぎた。

ついでに冒険者に必要な文字の読み書きも教えていて、今ではだいぶマシになっていた。

朝、いつも通り皆で協力して朝食を作り、食べる。


「アシウェル君、サフィアちゃん、昨日言った通り、今日は街を出て魔物を狩りに行くつもりだけど、体の調子はどう?」

「問題ありません」

「大丈夫、だと思います」


約三ヶ月前にこの街に来てから、街を出たことはない。

アシウェルはヴァルキにいた時に何度か街の外に出たことがあるが、サフィアはあの時だけだ。

それも、魔物から逃げるためであって、倒しに行くなんてあるはずもなかった。

それで緊張していないはずがなかった。


アシウェルは不安よりも自信のほうが勝っているようだが、サフィアは体が強張っているのが傍から見ても明らかであった。


「サフィアちゃん、私たちがちゃんとサポートするから、そんなに緊張しなくてもいいよ~」

「サフィー、緊張するのは仕方のないことだけど、それで体が動かなくなるのはまずいって言われただろ」

「う、うん。……ん? うん」


ニールとアシウェルが声をかける。

アシウェルが言っているのはヤクファはアシウェルに教えたが、ニールは教えていないことだった。

一瞬サフィアが首を傾げたのを見逃さなかったシーアとヤクファがニールをジト目で見つめる。

視線に耐え切れずニールがそっぽを向くが、それ以上のことはなかった。


「大丈夫だよ。サフィアは俺が守るから」


突然アシウェルがサフィアを抱き締める。


「あ、あ、アシウェル!?」


突然アシウェルに抱きつかれて、サフィアは驚きながらも顔を真っ赤にする。

皆席を共にして食事をしているのだから、当然皆見ている。


「ねぇねぇ、ウォーグル」

「却下だ」

「まだ何も言ってないよ~」


チーシェルがウォーグルの袖を引っ張るが、チーシェルの思考を読んだウォーグルは先手を打つ。

チーシェルは落ち込むが、次の瞬間ウォーグルに抱きついた。

座っている状態で避けれるはずもなく、ウォーグルは抱き締められるというより、捕まる格好になる。


「ンフフフ~」

「離れろ」


嬉しそうな顔を浮かべるチーシェルと、離れるように言うウォーグル。

実際はチーシェルもウォーグルが本気で嫌がることはしないし、ウォーグルも口では離れるように言うも、振り解いたり突き放したりはしない。


そんなことをしていれば視線はそちらに向く。

アシウェルも自分がしていたことに気付き、顔を赤くするも、二人の様子を見て、サフィアと顔を合わせて笑う。

そして、メシスとシャルマがヴェルマをジッと見つめる。


「ん? どうかしたか?」


ヴェルマに人の考えを読む力はなかった。

そして、奥手なメシスとシャルマに、チーシェルの様に抱きつくという選択肢はなかった。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



武器防具を整えると家を出る。


「それじゃあ、行ってくるな」

「行ってきます」


いつもは見送る側のアシウェルとサフィアだが、今日は見送られる側だ。


「おはようございます」


そこに声をかけてきたのは隣の家に住んでいる青年だった。

シーア達が購入して暮らしている家には大きな裏庭がついているが、青年の家は工房がある。

というのも、この青年の家は代々鍛冶職人なのだ。


職人という職種は非常に狭き門だ。数を必要としないため、質が求められるからだ。

その職人という枠の仕事を代々続けれるだけの腕が彼の一族には受け継がれていた。


シーア達はアシウェルの武器を揃える時にギルドに武器を売ってる商会と鍛冶屋を教えてもらったのだが、この街の武器は全て自給自足でその全ての武器をこの一族が作っているというのだ。

一応商会の方でも武器を売ってはいるらしいが、在庫として僅かに置いてあるだけで、最早棚にも並べていないらしい。


というわけで、引っ越しの挨拶と共に武器を購入したのだが、隣に住んでるだけあってよく顔を合わせることもあり、割と仲良くなったのだ。


「ブラウさん、おはようございます」

「その子も初陣ですか?」


青年、ブラウが言うその子というのはヤクファの持つ槍の事だ。

ブラウの一族では基本的に二つの作り方がある。量産型と特注品だ。

違いは説明するまでもない。決まった形で誰でも一応使える物と個人に合わせた手間を加えて特別な形にした物だ。

そして、ヤクファは特注品を作って貰ったのだ。


基本的な槍は今アシウェルが持っているような柄が長く、先に刃がついている物だ。

ヤクファが特注した槍は長い柄の両方に刃がついている。

これは、アシウェル達が訓練を開始した初日に、ヤクファが見せた槍捌きをたまたま家の窓から目にしたブラウがこの三ヶ月で作って数日前に贈った物だ。


「ええ、少し使ってみましたが、魔物を相手にするのは今日が初です」


当然そんな状態の槍一本で魔物と戦うのはリスクが大きすぎる。

ヤクファのもう片方の手にはヤクファが今まで使ってきた馴染みの槍が存在している。


「その子があなたの役に立つことを願ってますよ。行ってらっしゃい」

「ええ、私もちゃんと使いこなして見せるわ。行ってきます」


挨拶を交わして、出発する。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



まずはギルドに向かう。

魔物はだいたい住んでる場所が決まっているので魔物の討伐依頼はほとんど存在しない。

ギルドで受ける依頼は護衛や街の中で処理する物が大半だ。あとは精々素材採集くらいだ。


それなのに何故ギルドに向かうかというと、向かう場所を知らせておく為だ。

ギルドがそれを把握していれば、戻ってこなかった場合、すなわち、魔物にやられた場合、そこの魔物が強くなったことが推測できるのだ。

知らせることは義務ではないが、これをしておくとギルドも助かる為、そこの魔物の素材を売る時に色を付けてくれる。また、調査、援護の冒険者を派遣してくれる場合も稀にある。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



ギルドで北方の森に向かうことを告げたシーア達は馬車を借りて北を目指していた。


「アシウェル君達にも馬の御し方を教えないとだね」


魔物を狩りに行くにも、森までの移動と倒した魔物の素材を運ぶのに馬車がいるし、商隊の護衛には乗馬技術が必要不可欠だ。


「何から何まで、本当にありがとうございます」

「いいのよ。それより、これから行く所にいる魔物について教えるから、覚えといてね」


そうして、シーアが魔物について教えていると、その魔物の森に到着する。

馬を森の入り口に留め、シーア達は森の中に入る。

森の入り口には他にも馬車が停めてあり、他にも冒険者がこの森に来ているのを示していた。


「昨日も言ったけど、魔物を見つけたらまず知らせること、すぐに身体強化の魔法を使っちゃだめよ」


シーアが歩きながら確認する。


身体強化の魔法をすぐに使わないのは戦わない場合を考慮するからだ。

例えば、反対側にも魔物がいて戦うのが危険で逃げる場合だ。


ここの魔物は豚の魔物だ。

鼻の部分がやけに大きくて硬くなっており、その突進は人間を軽く吹き飛ばす。

周囲に生えている木は太くて丈夫で、その豚の突進にも耐えれるようだが。


「さっきも言ったけど、この森は木が大きくて太いから、死角が多いわ。それで魔物を見つけるのが遅れるかもしれないけど、木の間隔が広いから魔物は自由に追ってこれるわ。驚いて逃げ出すようなことはしないでね」


疎らに生えている木は魔物を足止めしてくれる様子はなかった。


そこで先頭を歩いていたヤクファが立ち止まり、手を挙げる。

魔物を発見したようだ。すかさずシーアとニールが周囲を確認する。

そして、周囲に他の魔物がいないことを確認すると、魔法を唱える。


「「「『身体強化(フィジカルブースト)』」」」

「力よ『身体強化(フィジカルブースト)』」

「我が身に眠りし力よ目覚めよ『身体強化(フィジカルブースト)』」


シーア、ヤクファ、ニールは魔法名だけで術式を呼び出して魔法を発動する。

アシウェルは略式呪文で術式を呼び出し、サフィアは普通に呪文を唱える。

因みにサフィアもこれでもだいぶ短くしたのだ。最初は式を組むのに十分以上同じ言葉を何度も繰り返すことで何とかできたのだ。


魔物の数は二体だ。


「サフィアちゃん、私について来て」


ニールはすぐに動き出す。

同時にヤクファとシーアも動いており、魔物との距離を詰めていた。アシウェルもその後に続いている。


ニールとサフィアは側面に回り込む。

木の陰に隠れながら指示を出す。


「いい、第一に周囲の確認。魔物が追加になりそうなら確実に前衛の人に知らせること。前衛が相手に出来ないなら牽制して近付けさせないようにするの。次に味方の把握。味方に矢を当てたくなかったら味方の場所はきちんと把握してなきゃだめ。最後に的の確認。どこに撃つのが一番効果的かをしっかりと考えるの」


早口でまくし立てるニールは普段の様子からは考えられないくらい真剣だ。

サフィアに話しながらも魔物の周りを回りながら周囲に他の魔物がいないかの確認をしている。

無論強化した体での移動は速い。サフィアは付いて行きながら話を聞くだけで精一杯だ。


一周回るとニールは足を止めて、弓を構える。

既にヤクファが魔物と接触しようとしていた。


左手でブラウの作ってくれた槍を回転させて勢いをつけながら、魔物に向かって走り込む。

魔物も近付いてくるヤクファ達に気付いて突進してくる。

強化した肉体と魔物の体が全速力で走ればその間の距離など一瞬で詰まる。


左手に持っていた槍を正面に持ち替え、両手を使って更に槍の速度を上げる。

そして、体全体を使って魔物と正面から対峙する。


「ちょ、ちょっと! ヤクファ!?」


もう一匹の魔物に向かっていたシーアがヤクファの行動に驚く。

この魔物は鼻が多きく硬い、つまり、正面に最強の盾を持っているようなものなのだ。

更に、強い突撃をしてくるから、真正面に立つこと自体が愚の骨頂なのだ。


だが、ヤクファは回していた槍を魔物に向けて正面から振り下ろす。


「はあああああ!!」


甲高い金属音が響き、ヤクファの槍と魔物の動きが止まる。


「ブッフォオ!?」


魔物は驚いたような声を上げる。

当然だろう自分の唯一にして最強の攻撃を止められたのだから。

対してヤクファは動きを止めず、跳躍する。

そして体全体を使って再び槍を回し、すぐに威力を上げると、魔物の上空から一突きする。


「えっ!?」


魔物の脳天に当たったヤクファの突きだが、魔物を貫通した。

無論槍自体はそこまで長くないし、ほんとに刃の部分が刺さる程度にしか突いていない。

当然ヤクファは自分の予想していない結果に驚く。


脳天を貫かれた魔物は絶命し、体を横に倒す。

ヤクファも着地すると、魔物の様子を確認する。

倒したつもりが倒しきれていなくて仲間をピンチに晒すことは特に慣れてきた者によくあることだ。

確かに絶命していることを確認したヤクファはもう一匹の方を見る。

そこではシーアの援護の下魔物に攻撃を入れているアシウェルと、ニールの指示に合わせて矢を射るサフィアの姿があった。

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