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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第二.五章 再会までの話
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戦闘訓練

ヴィッカに定住することが決まったアシウェル達は到着した次の日に不足していた家具を集め、街の中を少しだけ探索して個々人で休日とした。

ただし、シーアから条件が出る。


「私たち誰かの付き添いなしにこの家から出ないように」


彼女たちの言いつけは必ず守ることが保護及び指導の条件だ。

これは自分たちの安全を考慮してのことであると理解できた。

アシウェル達が強く頷く。


「あと裏庭綺麗にしといて貰えると早く訓練が始められるよ」


何気なくやることを残して、シーア達は出かけてしまった。


十人の食事代は意外とかかる。

シーア達の今までの稼ぎは普通に多いが慣れない土地で今まで同様に稼げるようにするために出来るだけ周囲の魔物に慣れておきたいと言っていた。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



更に翌日、シーア達は朝から狩りに出かけて昼を過ぎてから帰ってくる。

そしたらいよいよ戦闘訓練の始まりだ。


最初にやるのは、自分が使う武器の選択だ。

選択肢は剣、槍、弓の三つだ。

理由はそれ以外は教えようがないからだ。

ギルドでも、この三つは教えてくれるが、他の武器を使いたければ独学か、他に使ってる人を見つけなければならない。


アシウェル達はそれぞれ一通り試して、自分が一番使えそうな物を選ぶ。

結果、アシウェルは槍、ウォーグルは剣、サフィアは弓、チーシェルは剣、ヴェルマも剣、メシスは弓、シャルマも弓だった。


「うん、上手に分かれたね。前衛四人後衛三人か」


シーア、ヤクファ、ニールもそれぞれ剣、槍、弓を使うため、別れて指導することになる。


昨日一日かけて裏庭の草木を片付けていたが、まだ残っている。



 剣組


「まずは剣の持ち方から教えるね」


シーアは片手持ちと両手持ちを実際に見せ、それぞれの利点と欠点を教える。

そして基礎となる型をいくつか見せながら教えると実際に剣を握らせる。


剣を握ったウォーグル、チーシェル、ヴェルマは指示に従って実際に剣を振ってみる。

三人とも教えられた事以上の事を吸収しようと全力で取り組んでいる。

それでいて力み過ぎていない体にシーアは感心する。

初めて剣を握ると、どうしても緊張などで体が強ばる。実際シーアもそうだった。


「垂直振り下ろし、振り上げ、左右水平斬り、左右袈裟斬り、それぞれ素振りしてみて。足運びに注意してね」


今見せた型を実際にやらせてみる。

何処か動きがぎこちないが、やはり三人とも初めてとは思えない動きだった。


何回も同じ動きをやらせているうちに、チーシェルとヴェルマは動きが良くなっていくが、ウォーグルの動きに違和感を感じる。

一太刀の鋭さは増しているのに、何処か無駄というか、余裕があるように感じられる。


とはいえ、シーアはランクCの冒険者で、今まで剣と生きてきたのだ。

違和感の正体にすぐに気づき、気になったことを訊いてみる。


「ウォーグル君、剣持ったことある?」

「ええ、一度だけですが」

「やっぱり、何本持ってた?」

「? 一本だけですが」

「あれぇ? まあいいか。ウォーグル君、こっちも持ってみて」


ウォーグルにもう一本剣を持たせる。

二刀流である。


「二刀流は私はやらないんだけど、左右を別々に動かして、それぞれさっきの型の通りに動かしてみて」


言われた通りにウォーグルが剣を振るう。

ゆっくりではあるが、普通に振るうことが出来ている。


両手に得物を持つと、片方が疎かになったり、バランスが崩れて上手く振るえなかったりするのだが、ウォーグルは見事に両手の動きを制御していた。

その速度は次第に上がっていき、一本で振っていた時の速度と遜色ない速さに達する。

即ち、その斬撃の回数は一本の時の二倍である。


「なかなか良い感じね。私は二刀流については教えられないけど、私が教える事を基盤に自分で頑張ってみて」


三人はシーアの助言、修正を受けながら、暫らく素振りをしていたが、徐々にその速度が落ちてくる。

実際、剣と言う物は重い。鉄で出来ているのだから当然である。

それを何時間も振り回していれば腕が疲れるのは必然であった。


シーアは頃合いを見計らって休憩を取ることにする。



 槍組


「槍はアシウェル君だけね。丁度いいわ。アシウェル君は最年長だし、目標も練習も厳しくいくわね」


“水乱舞”きっての槍使いであるヤクファは三人の中で一番魔力が少ない。

しかし、その分前衛としての技術はシーアを上回るものを持っている。


「まず、アシウェル君に槍使いの最終的な目標を見せるわね」


先にそう告げると、ヤクファは持っていた槍を構える。


そして、横薙ぎに動かしたと、アシウェルが認識した以降、アシウェルは槍の動きを捉えることが出来なかった。

手だけではなく腕まで使って振り回される槍は、風を斬る音と、残像だけを残して、アシウェルを圧倒する。


十秒ほど槍を動かしたヤクファはその動きを止めると、アシウェルに顔を向ける。


「あはは、そこまで驚かなくても……。見ててどうだった?」

「その、速くて全然見えませんでした」


アシウェルが驚きを隠せないまま答える。

だが、その答えはヤクファの欲しかった答えだった。


「そう、それよ。槍は剣よりも長くて大きいから、広い範囲を攻撃できる安全な武器だと見られがちなのよ。でも使う人が使えば槍は最速の武器となるわ」


確かに、槍はその長さを生かして剣よりも広い範囲を攻撃することが出来る。

しかし、その長さを上手に活用すれば、力の流れに合わせることで、ヤクファが見せたような高速の斬撃が繰り出せるようになる。

また、槍が得意とする突きの攻撃は斬撃の中でも最速の象徴である。


「冒険者の間にはこんな言葉があるわ『習うより慣れろ』。最初から今みたいなことをやれとは言わないけど、どう力を加えたらどう動くのか、それを自分の感覚で覚えないと槍は使えないわ」


ヤクファは早速アシウェルに槍を持たせる。

槍にも基礎となる動きは存在している。


ヤクファは薙ぎ払いと突き、それから槍の引き戻し方を見せながら説明する。

後は実際に使って行きながら覚えていくしかない。



 弓組


「弓なんだけど、教える事はありませ~ん」


ニールのいきなりの宣言にサフィア、メシス、シャルマは思わず顔を見合わせる。


「剣や槍と違って型があるわけでもないし、引っ張って離すだけだからね~。あ、基本の姿勢くらいは教えないとか」


いきなり教える事はないと言いつつも、ニールは指導を開始する。


まずは基礎、立った状態で足を少し開き、体を安定させて射る。


「とりあえず今日はそれだけ~。分からないことがあったら訊いて。あ、先に言っておかなきゃいけないことがあった。射線の前に出ないこと、射線上に人がいたら撃たないこと、この二つはぜっっっったいに守ってね」


それだけ言うと、ニールは庭の草むしりを始めた。

いつも細かい所まで気を配ってくれるシーアやヤクファと違って、どこかマイペースなニールの様子に驚きながら、弓を構える。


ニールが言った様に、弓は引っ張って離すだけだ。しかし、最初から思った場所に飛んではくれなかった。

サフィア、メシス、シャルマは庭に生えている木を的に繰り返し矢を射る。

勿論、矢が無尽蔵にあるわけではない。

手元にある物を使い切ったら回収するわけだが、初めて手元の矢が無くなったときに、シャルマが深く考えずに矢を取りに行こうとしたのだ。しかし、メシスはまだ矢を構えていた。

一歩前に踏み出そうとしたシャルマだったが、後ろからニールに肩を押さえて止められる。


「弓を使うに当たって大事なことは視野を広く持つことだよ~」


少し離れた場所にいたはずのニールがいつの間に移動していたのかと三人は驚く。

ニールに言われてシャルマはメシスが矢を持っていて、射線を気にしないといけなかったと気付く。

サフィアももっと気を配ろうと反省する。


それだけ言ってニールはまた離れていく。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



初日の特訓こそ基礎の動きだけだったが、三日四日と経てば特訓の内容も進んでいく。

そして、十日が過ぎる。



 剣組


「今日は基礎の素振りをしたら、模擬戦からやってみようか」


本物の剣を使うと危険なのでギルドから木刀を借りてきている。

ギルドから借りた木刀は中に錘が入っていて、真剣と同じくらいの重さになっている。


シーア、ウォーグル、チーシェル、ヴェルマの四人で総当たりをして腕を磨く。

未だにシーアの圧勝が揺らぐことはないが、残り三人の中ではやはりウォーグルが一際抜きん出ていた。



 槍組


「今日もやることは一緒よ」


槍の特訓も剣の特訓とあまり変わらない。

基礎の素振りと、模擬戦。

ただ、こっちの模擬戦は真槍で行っていた。理由は簡単で、アシウェルには戦いの緊張感をいち早く知って貰おうと考えたからだ。

既に、アシウェルとサフィアは冒険者登録してある。

今はまだ特訓中だが、チーシェルが冒険者登録できるようになる前に、二人を魔物狩りに連れて行こうと考えていた。

因みに、もう一つの理由として、アシウェルの腕ではヤクファに一撃も入れれないというのがある。


アシウェルが薙ぎと突きを駆使して戦うも、ヤクファはその全てを叩き落とす。

武器同士が衝突するたびに強い衝撃が起こり、アシウェルの手を痺れさせる。


「足を止めないで!」


武器を操ることに意識しすぎて、動きが鈍れば恰好の餌食である。

それは剣でも槍でも弓でも同じだ。

唯一、盾持ち金属鎧の身体強化をした重戦士だけが魔物の前で動きを止めてもいい。

唯一じゃなかった。魔法を発動する前の魔術師も動きを止める。


とにかく、実践を想定してる以上武器を振りながらも足を動かせるようになる必要があった。



 弓組


「じゃあ、いつも通りね~」


弓使いの特訓はただ射るだけだ。

剣や槍よりもその動きが分かり辛いため、実践で使えるようになるまでに時間がかかる。


ただ射るだけと言っても、実践を想定した撃ち方の訓練にしている。

通常の立った状態と膝をついた状態でそれぞれ撃てるようにし、止まった的だけでなく、動いている的にも当てれるようにする。


動いている的は、ニールが魔法で創り操る水球だ。

空中を動く水球に矢を射って、動く的への命中精度を上げると同時に速射の訓練にもなる。


本来なら、走りながら撃つこともやりたいのだが、広さの限られる庭の中で、更に広さを分割して、距離を取る弓の特訓で走り回ることはできない。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



訓練に一段落付いたところで集められる。


「今日は魔法について教えるわ」

「冒険者だけに限らず、魔物と戦う人たちは皆、少なくとも身体強化の魔法だけは使えるようにしているわ」

「ランクの低い冒険者で使えない人はいるけど~」

「そういった人たちはそもそも街からほとんど出ないわね」


アシウェル達にとって、魔法は身近にあって遠いものだった。

シーア達がする魔法の説明に聞き入り、速く使えるようになりたいと真剣に臨むのだった。

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