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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第二章 浮遊都市国家エデン
25/60

意図せずとも

少し長めになってます

昼食を摂ってから、地下の魔法特訓部屋に向かう。


昼食時に「ファルナにも魔法を使わせていいのか」と訊いたら、リービアは「魔力が底を尽きない程度までなら大丈夫よ」と言っていた。


ファルナ自身は特に何も言わず、ただシンにぴったりくっついて行動している。

いつも通り部屋の設定をして中に入る。


「部屋の中にお外?」


ファルナはあまりに予想外の光景に目を丸くし、シンの袖を引っ張って訊ねる。

シンは部屋と、世界魔法について簡単に説明しながら中に入る。


やる特訓は昨日までと変わらない。

ルイスは複数の魔法を同時に使って、森を抜ける。

エルディオとフイスは重力制御魔法の習得だ。


だが、シンはルイスなら今日中に突破すると踏んでいる。


そして、特訓が始まる。

最初に恒例となっている魔力トレーニングを行う。

シンがファルナに一緒にやるかどうか聞くと、迷うことなくやると答えた。


結局、シンたちが魔力トレーニングを終えるまでの間にファルナはほとんど魔力を動かせなかった。


ファルナはエルディオとフイスが特訓している傍にいて貰っている。

シンは飛翔魔法で森の上空に行き、ルイスの相手をする。

それぞれが各自の特訓をしている間、ファルナは魔力制御を続けていた。


実はシンの見るのがルイスだけになってから、シンもほとんど気付かない程度に難易度が上がっており、その分ルイスの魔力制御の質も上がっていた。


そして、特訓開始から一時間後、突如としてファルナの魔力が激しい動きを見せた。

シンは当然、魔力トレーニングを続けた結果魔力探知能力の上昇したエルディオとフイスもそれを感知し、そちらを振り向く。

そこには自分の魔力を制御して動かしているファルマの姿があった。


シンはその突然のことに驚き、つい風魔法を止めてしまった。

当然それは特訓中のルイスに影響を及ぼす。


強烈な向かい風が無くなった為、ルイスはそれを打ち消していた強烈な追い風に煽られることになる。

自分で創り出していた風に飛ばされ前方の木にぶつかりそうになる。

だが、ルイスは風の向きを変えることで衝突しそうになった木を回避し、他の木を足場にして、更に加速を加え、一気に森の中を駆け進む。


「あ」


シンはすぐにルイスの方に注意を戻して風を発生させ、他の魔法を駆使する。

その一方でファルナの魔力の様子を確認するのも忘れない。


結局、ルイスはそのまま加速を続け、森を抜けきってしまった。

同時に魔力切れで倒れてしまった為、シンが拾いに行く。


ルイスをお姫様抱っこの状態で抱えて、三人の下に戻る。

ルイスはお姫様抱っこに顔を赤くして照れながらも嬉しそうにしていた。


「一回休憩にしようか。部屋の内装も変えたいし」


シンの提案で休憩を挟むことになった。

部屋の内部設定を変えるために一度部屋から出る。


シンが設定を直して再び部屋の中に入ると、そこには広大な砂浜が広がっており、その先には雄大な海が波の音を響かせていた。

雲一つない空では眩い太陽が照っており、海面で反射する光が海を輝かせる。

その光景に五人とも感嘆の声を上げる。

因みに、太陽は照っているが、気温設定を常温にしているので熱くはない。


ひとまず休憩にする。

砂の上で休むのはどうかと思い、五人は脇に建っている木造の小屋に入る。


「それにしてもファルナはもう魔力を動かせるようになったのか、今まで魔法使ったことないんだろ?」

「うん。シンの真似、したらできた」


シンの問いに肯定する。

シンはあまり気にしないことにした。


少し休憩を取ると、特訓を再開する。

ルイスは魔力が十分に回復するまで休憩だ。

その間にエルディオとフイスに浮遊魔法を習得してもらいたい。


「さっきまでは川の水の重力を無くすようにやってもらっていたけど、ここは砂場で、落ちても危なくないから自分の周りの重力を無くしてみよう」


少し段階を飛ばして、自分を浮かせるところから始める。

シンが細かい部分まで指示を出して、特訓をすると、先に魔法を発動させれたのはフイスだった。

術式に沿った形での指導をしている為、フイスの方が呑み込みが早いのだろう。

エルディオはシンと同様で自分なりの魔力の動かし方を模索して使った方が正確な効果が出る。


「おおっ! 凄いわ! これ!」


無重力場を創り出したフイスは魔法の継続に集中しながらもその感覚に感激する。

空中でクルクルと回って楽しんでいる。

だが、調子に乗っている内に足が地面に届かなくなる。


「あの、下りるにはどうしたらいいの?」

「微風を使うか、少しだけ重力を戻すかだね」


フイスは得意としている風魔法の方を選択する。

だが、初めてであった為に、威力を間違えた。

少し強めの風はフイスを地面に下ろし、地面で跳ね返り、フイスのスカートを巻き上げる。

魔法に集中して手から魔力を出していたフイスはスカートを抑えることができなかった。


「ふぇ?」

「あ」

「む」


スカートの中の下着が露わになり、三人が間の抜けた声を出す。

フイスは顔を赤くして俯く。

その様子にはどこか見覚えがあった。

しかし、今回は全ての魔法を自分で使っており、シンとエルディオには一切の責任はない。

そのため、完全なる八つ当たりを実行する。


「う~~~!」


フイスは二人を睨み付ける。

両手はスカートを押さえているが、その状態でも魔法は使える。


シンは魔力の動きを即座に感じ取って、というより、反射で後ろに跳び下がる。

だが、エルディオは僅かに反応が遅れ魔法に捕まる。


中途半端に跳び上がることになったエルディオの体が空中を漂う。

更に、フイスが風魔法を使い、風の渦を叩き込む。


「むう!」


無重力場で風の渦に呑まれたエルディオは身体強化を施して、その衝撃に耐える。

シンは目の前の惨状にエルディオの状態の確認を強化する。

エルディオの身体及び魔力に支障をきたすようなら即座に止めるためだ。


だが、その心配もほどなく、フイスの魔法は消える。

覚えたての魔法は集中力と魔力の消費が激しいことが多い。

魔力切れである。


突然魔法が切れた為、エルディオは地面に落下するが、強化した肉体に然したる影響はない。

下が砂地でなくともダメージにはならないだろう。


フイスは魔力切れのためその場に座り込む。

流石にやり過ぎた自覚があるのか、先ほどまで赤かった顔を青くしている。


「大丈夫か?」


シンはエルディオが落ちた場所に近付きながら声をかける。

無論、様子は把握していたし、現状でも魔力の動きに問題は見られないから、大丈夫であることは知っている。


「無論だ。この程度で根を上げるような軟な鍛え方はしてない」


エルディオが起き上がりながら答える。


「むしろ、今ので感覚を掴めたわ」


エルディオはそう言いながらフイスの方に近付いていく。


「その、大丈夫なの?」


フイスはエルディオを直視できないのか、俯いて上目遣いで問う。


「フン、無論だ。貴様のように軟弱ではない」


エルディオはそう答えて、魔力切れで動けないフイスを抱え上げる。


「きゃっ!? ちょ、なに?」


急に抱き上げられたフイスは戸惑いの声を上げる。


「動けんのだろう? 貴様の魔法の成果を見せてやる」


だが、エルディオは気にした様子もなく、魔法を発動させる。

その魔法は飛翔魔法。

先程まで浮遊魔法すら使えなかったエルディオだが、今発動しているのは紛れもなく飛翔魔法だった。


「え? これって」

「言っただろう、貴様に思い切り回された結果であると」

「う、ごめんなさい」


フイスが驚いてエルディオの顔を見上げると、軽く睨まれた為、竦んで謝罪する。

エルディオはフイスを抱えて、木造の小屋まで一っ飛びする。


まだまだ無駄な部分が多く、もっと魔力の消費を抑える必要はあるが、それは使う内に慣れていくしかない。

シンもエルディアの後について小屋まで移動する。


小屋に戻ると、ルイスとファルナが出迎える。


「エルディオさん、飛んでる」


ルイスはエルディオが飛翔魔法を使っていることが一番驚いたらしい。

一方でファルナはそちらの二人には目もくれずシンに声をかける。


「シン、お帰りなさい。特訓はおしまい?」

「いや、ああ、うん。今日はもうおしまいかな」


ファルナはまだ筋肉が戻っていないため座っている。

動く分には問題ないが、それでも動くだけで疲労するのだ。


「え、終わりですか? 魔力戻って来たのに」


シンの言葉を聞いて、ルイスがしょんぼりとする。

確かにルイスの魔力は僅かにでも回復している。

だが、起きている間に回復する量は微々たるもので、魔力生成も既に使ってしまった。

おかげでルイスの魔力は上限量の四分の一までは回復しているが、逆に言えばそれ以上は増えないということだ。

魔力がほんとに空になれば死にはしないものの、気絶はするし、最悪長期間の意識不明状態はあり得る。

魔力生成という保険のない状態で魔法の特訓なんてものはするべきではないというのがシンの考えだ。


(この姉妹は魔力切れをなんだと思ってるんだ)


シンはあまりにも魔力を使いすぎるフイスとルイスに半ば呆れ、不安すら覚える。

子供とはいえ、魔力を膨大に持つ魔導師が魔力切れ、このこと自体が異常である。


「とにかく、今日の特訓は終わりにする」


シンは残念そうにしているルイスにはっきりと言い切る。


エルディオに降ろされたフイスは魔力生成を始め、徐々に魔力を創り出す。

動けるくらいまで魔力を回復させると、生成を止める。


「部屋を出て、解散な」

「いや、俺はもう少しこの魔法の練習をしようと思う」


シンが退室を促したところで、エルディオが飛翔魔法の特訓を続けると言い出す。


「エルディオはもう使えてるから。少なくとも、僕は部屋を出るから、どうしてもやりたければ一度部屋を出て、アルフレッドさんから許可をもらってやってくれ」


シンの答えは冷徹だった。

だが、シンが部屋を出る以上残るわけにはいかない。

それに、シンの言う通り、いつも通りにアルフレッドから許可をもらえばいいだけだ。

五人で部屋を出て、解散とする。


「試しにここから二十階のアルフレッドさんの部屋まで飛んで行ってみたらどうだ」

「それもそうだな」


シンが早速訪れた実践の機会をエルディオに告げる。

エルディオとしても、もう少し飛翔魔法に慣れておきたいだけで、特訓場所はどこでもよかった。


エルディオが飛翔魔法を発動し、階段の柱に沿って一気に上まで飛んでいく。

それを見たフイス、ルイスはうらやましげな声を上げる。


速さも精度も問題ない。

あとは魔力の消費を抑えるだけなので、飛翔魔法においてはこれ以上シンがエルディオに教えれることはないはずだ。


シンは夕食までの時間を二番塔で潰すことにするのであった。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



そして、夕食の時間。

昼食時と同じ席に座り、皆で食事を摂る。


「ふぉっふぉっふぉっ。しかし、エルディオが一番最初に使えるようになるとはの」


食事を摂りながら今日の様子を聞いたアルフレッドが軽快な笑い声をあげる。


「完全に予想外でしたが、手間が省けました」

「俺はそこいらの屑とは違うんだよ」

「偶然の産物だけどな」


そんな風に会話を楽しんでいると、リービアが思い出したことを告げる。


「アルフレッドさん、ファルナちゃんに部屋を用意してあげて下さい」

「おお、そうじゃな。部屋は空いておるから、簡単に掃除をすれば使えるじゃろ」


アルフレッドがそこまで言った時、ファルナが口を挟む。


「シンと一緒がいい」


その発言にリービアは目を丸くし、アルフレッドは顎鬚を撫でながら何かを考え、シンは大きなため息を吐いた。

何かを考えていたアルフレッドがファルナに声をかける。


「しかしの、ファルナちゃん、結婚してない男女が理由もなく同じ部屋というのは関心せんの」

「おお! アルフレッドさんが珍しくまともなことを!」


同室は認めれないと暗に言ったアルフレッドにシンは驚く。


「これこれ、儂はいつじゃってまともじゃろう」

「「「どうだか」」」


シンの驚きに反応したアルフレッドだが、シン、エルディオ、フイスにつっこまれる。

そして、ファルナはさらなる爆弾発言を落とす。


「じゃあ、シンと結婚、する」


あまりの発言に、リービアは顔を逸らして肩を震わせ、シン、エルディオ、フイスは口にしていた飲食物を吹き出しそうになって咽かえり、ルイスは顔を赤くする。

だが、一人その言葉を予想していたアルフレッドは否定する。


「まだ二人とも成人しとらんのに、結婚なんて無理じゃよ」

「じゃあ、どうしたら、いいの?」

「うむ、婚約すれば大丈夫じゃ」


アルフレッドのまともな意見の前に、落ち着きを取り戻し始めていたが、続いて飛び出たアルフレッドのとんでも案に絶句する。


「じゃあ私、シンと婚約する」

「後で二人部屋の掃除をしておくかの」


シンが言葉を継げれずにいる内に勝手に決まっていく。


「いや、認めないし!」

「シンよ、生物として結婚は必須じゃぞ。それともファルナちゃんでは不満かね?」

「シン、私のこと、嫌い?」


シンが何とか否定すると、アルフレッドに窘められ、ファルナが寂しげな表情をしてシンを見つめる。


「いや、す「シン、大好き! 愛してる!」

「うむ、決まりじゃな」


シンが答えきる前に言葉を遮られて、ファルナが抱き着いてくる。

因みに、シンは「好きとか嫌いとかいうほど付き合い長くないし」と言おうとした。


そして、周りの皆も既に助ける様子がない。

寧ろ、ファルナの味方だった。


「いいじゃない、妻が一人じゃなきゃいけないなんて決まりはないのよ」

「ファルナちゃんの気持ちも考えなさいよ」

「シンさん、結婚おめでとうございます」

「諦めろ」


シンは抱き着いて無邪気な笑みを浮かべているファルナを見て思った。


(またアルフレッドさんに面倒を押し付けられた気がするのは、気のせいであって欲しいな)


こうしてシンとファルナの婚約が決まった。

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