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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第二章 浮遊都市国家エデン
24/60

あの子の目覚め

クリアしたエルディオは次の特訓に移らせる。


その特訓とはある魔法の習得である。

圧魔法系統の重力制御である。


浮遊魔法の基礎であるこの魔法は、飛翔魔法を行う上での保険の様な役割を果たし、同時使用でさらなる速さを出すこともできる。


だが、シンはまだフイスとルイスの相手をしなくてはならない。

そのため、エルディオにはシンが見つけてきた参考書を渡して独力で身に付けてもらう。

実演も既にしているし、元来魔導師は独学が多い。

危険性の高いものに限っては師がいることも多いが、重力魔法はそこまで危険でもない。


エルディオがクリアしたその日のうちにフイスも森を抜け切ることに成功し、明日の特訓からエルディオと共に重力制御をやることになった。


フイスがクリアしたタイミングでシンの体内時計が十八時を指し、今日の特訓を終了する。


ルイスがどんどん特訓の内容を進めていく二人をうらやましげに見ており、フイスもルイス一人だけ遅れてるのを気にしてシンに声をかける。


「ルイスの魔力制御がもっと上手くいくコツはないの?」

「そればっかりは慣れるしかないね。魔法の発動は想像力だから」


その後、夕食を摂り、数時間二番塔で本を読み、部屋に戻って就寝する。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



翌日、シンはいつもより早い時間に目を覚ました。

目を覚ましたシンは周囲を見回すが何もない。


(呼ばれた気がしたんだが、気のせい? いや)


周囲の魔力を窺ったシンは何かに気付き、行動する。

部屋を出て時計を確認すると三時だった。

いつもより大体一時間早い。


そのままシンは一階まで飛んで降りる。

その足取りは迷うことなくリービアの部屋に向かう。

そっと扉を開けると中に入る。


そこではシンが連れてきたあの女の子が目を開けていた。

彼女はシンを見つけると嬉しそうに微笑みを浮かべる。


その体は未だやせ細っているものの、最初に会った時よりは魔力も戻り、容態も安定している。

髪はリービアが手を加えたのか、きちんと整えられ、艶が戻り輝いていた。


「来て」


小さい声でシンに呼びかける。

シンが傍に行くと女の子は座るように示す。

シンがベットのふちに腰掛けると、女の子が抱き着いてくる。

抱き着くと言っても、回した腕に力は入っておらず、シンに寄りかかっている感じだ。


「たす、けて、くれ、て、あ、りが、とう」


シンに寄りかかったまま少しずつ言葉を紡いだ。

一度に少ししか息を吸えず、肩で息をしている。

だが、息をするたびに肩が動くのが辛そうだ。


「どういたしまして」


シンは女の子の体を放し、横になるのを手伝ってあげる。

女の子はシンの手を取るとそのまま目を閉じる。


その手にはやはり力は籠っておらず、乗せてあるだけだ。

シンがその手を握り返してやると女の子の口元が僅かに緩む。


そのまま女の子が眠ってしまったのを確認してからシンも目を閉じた。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



二時間後、シンはその目を開ける。

ソファーで寝ていたリービアが目を覚ます気配がしたからだ。


リービアは目を覚ますとシンに気付くこともなく体を起こすと、洗面所に向かう。

そして、はっきりと目を覚まして戻ってきて、シンに気付く。


「シン?」

「おはようございます。リービアさん」

「おはよう。って、どうしたの? あ、何か分からないことでもあったの?」


リービアはシンがここにいるのを質問に来たのだと考えた。

だが、シンはそれを即座に否定する。


「いえ、まだ聞くほど難しい本を読んではいません。そうじゃなくて、彼女に会いに来たんですよ」


シンは女の子の方を見ながらここに来た要件を告げる。


「この子に? 確かに容態も安定して、そろそろ目を覚ますと思うけど……」


リービアの言葉から、シンは女の子がさっきここに来てから初めて目を覚ましたのだと知り、それをリービアに伝える。


「実はさっき、二時間ほど前ですが、目を覚ましたんですよ」

「えっ、そうなの!?」


シンの言葉に驚き、リービアはベットに駆け寄り、女の子の様子を確認する。


「うーん、でもまだ安静にして、経過を見ないと駄目ね。栄養は食事に切り替えるとして、肉体保護と魔力供給は継続しておかないとね。そういえば、シンは二時間ここにいるって言ってたわね。一日中ここにいるつもり?」


一通り容態を確認したリービアはシンの方を向くと問う。


「まさか、いつも通り過ごしますよ」

「そう」


シンが答えると、リービアはつまらなそうな顔をしてベットを離れ、机に向かう。

リービアが本を開き何らかの作業を始めた所で、シンは再び目を閉じる。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



一時間後、シンは目を開くと握っていた手を放し、立ち上がる。


「あら、起きたの」

「寝てませんよ」


シンが立ち上がると、リービアが気付いて声をかけてくる。

シンは目を閉じていただけで眠ってはいなかった。

部屋を出ようとするとリービアが当たりをつけて聞いてくる。


「また二番塔かしら?」

「いえ、食堂ですけど」

「あら、もうそんな時間? 私も行くわ」


残念ながら、シンが動いたのは食事の時間だからだ。

たまにリービアが食事の時間に姿を見せないのは今みたいに作業に集中しているからなのだろう。


部屋を出ると、いつも通りアルフレッド含む四人が下りてくるところだった。


「おはようございます、アルフレッドさん、おはよう皆」

「おはようございます」


先にリービアとシンが挨拶をして近付く。

四人がそれぞれ挨拶を返すと、食堂に向かう。


「おはよー、皆。シンの魔力がリービアの部屋にあったけど、あの子起きたの?」

「はい、夜中でしたけど」

「今はまた寝てるわ」


シェンの問いにシンとリービアが答え、食事を受け取ると席に座る。


「それで、リービアよ、あの子はいつ頃に動けるようになりそうかの?」

「私が全力で治療してるんですもの、あと三日もすれば自分の力で立って動けるようになりますよ」


アルフレッドが女の子の経過を訊ねる。


「そんなに早いんですか。リービアさんは凄いんですね」


リービアの返答に驚き、称える。

医学の勉強を始めたばかりのシンだが、それでも早いのがよくわかった。


「ふぉっふぉっふぉっ。それは何よりじゃ。それで、シンは今日はどうするのじゃ?」

「どうって、いつも通りですが? どうしたんですか、アルフレッドさんまで」

「いんや、なんでもないわい」


リービアと同じことを訊ねるアルフレッドにシンは怪訝な顔をするが、アルフレッドはつまらなそうな顔をして話を打ち切る。


子供三人は全く話についていけない。


「あの、あの子って誰ですか?」


代表してフイスが訊ねる。


「うむ、起きたら紹介しようかと思っとったが、シンがここに来る途中で会った女の子じゃよ」

「ルイスちゃんは何度か私の部屋に来た時に見てるわ」


アルフレッドが簡単に説明し、リービアが補足する。


「強いのか?」

「いいえ、多分魔法の魔の字も知らないわね」


エルディオの問いにリービアが答える。

その時点でエルディオはその女の子に興味を無くしたようだ。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



三日後、未だにルイスは魔法同時使用で森を抜ける特訓を続けており、エルディオ、フイスは重力制御の魔法を使いこなせずにいた。


朝、シンはいつも通りの時間に目を覚ます。

部屋を出て、リービアの部屋に向かうのがこの三日間の習慣だ。


シンが部屋に入ると女の子が目を覚ます。

朝のこの時間と食事の時以外は基本的に眠っていたが、リービアの腕もあって、体に力が入るようになっていた。


「おはよう、ファルナ」

「おはよう、シン」


彼女の名前はファルナだった。

目を覚ました次の日に聞いてみたらそう名乗った。


「調子はどう?」

「体、動くように、なった。もう、出歩いて、いいって」


昨日の夜に、今日になったら好きに動いていいと許可をもらっているらしい。

言葉はまだ短くきって話しているが、目を覚ました初日の様に息苦しそうな様子は見られない。

やはり、体力や筋力が戻ってきているからだろう。

ファルナがシンの手を握るが、そこにはまだ弱弱しくも力が籠っている。

魔力量もシンが初めて会った時とは比べ物にならないくらい増えた。

それでも、魔導師としては少ない。


「そうなんだ、無茶はしないようにね」


そう言うと、シンはファルナの手を握り返す。

ファルナを横にして、シンは目を閉じる。

この三日間は食事の時間までそうやって過ごした。


一時間するとリービアが目を覚まし、声をかけてくる。


「あらあら、また来たの」


ニタニタと非常に面白そうな顔をしている。


「そうですけど、何をそんなに笑っているんですか?」

「べっつにー」


リービアは笑いながら洗面所に消える。

戻ってくると、一度ファルナの容態を見て、大きく頷くと、掛けてあった魔法を全て解除する。


それからさらに一時間すると、食事の時間だ。

シンが手を放して立ち上がると、ファルナが横たえていた体を起こす。

シンとリービアの支えを借りながらベットから立ち上がる。

そして、シンの腕を借りながら部屋を出て、食堂に向かう。


いつも通り、四人が下りてくる。


「おはようございます、アルフレッドさん。おはよう、皆」

「おはようございます」

「おはよう、ございます」


リービアに続いてシン、ファルナも挨拶する。


「おはよう、三人とも。もう動けるかね、リービアちゃんの腕は確かじゃの」


それぞれが挨拶を返したところで食堂に向かう。

アルフレッドの顔には面白そうな表情が浮かんでおり、いつものニコニコに若干のニタニタが混じっていた。


「お、いつも通りの時間、一人増えたね」


シェンがファルナに気付き、挨拶を交わす。

皆同じ食事を受け取りいつもの席より大きい席に座る。


ファルナを挟んでシンとリービア、シンの横にエルディオが座り、その向かいにフイス、その横、シンの向かいにルイス、更にその横、ファルナの向かいにアルフレッドが座っている。


非常にゆっくりと食事を摂るファルナに気を配りながらシンも食事を摂る。

食事を終えたら午前中は二番塔で本を読む予定だ。


先に食事を終えたエルディオたちは既に食堂にいない。

しかも、リービアの姿もない。

ファルナの世話というか、看護といったものをシンに丸投げして自室に戻ってしまったのだ。

というか、席を立つときに「もう治療は必要ないから、あとはシン君に面倒を見て貰ってね」と言い残していった。


とりあえず、予定を変更するつもりはないため、ファルナが食事を終えたら二番塔に向かう。

いつもの机の場所に行くと、既にルイスが椅子に座って本を読んでいた。


シンが机にもたれかかり、本を手に取ると、ファルマは隣に座る。

すると、ルイスも椅子から降りて、シンの横に座る。

シンが簡単な内容の本をファルマに渡してやると、ファルマはそれを黙って読み始める。


午前中はずっと三人並んで本を読んでいた。


昼食を食べたら午後の特訓の開始だ。

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