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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第二章 浮遊都市国家エデン
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魔法指導

シンは浮遊都市国家エデンで二日目の朝を迎えていた。

体内時計ではいつも通りの時間の起床である。


実際部屋を出て、階段の時計を見ると、四時を少し過ぎた所だった。


(昨日は散々な一日だったな)


ここに着いた翌日の出来事にしてはとても忙しかった気がする。

そう思って昨日のことを朝から振り返って見ると、朝、今日と同じくいつも通りの時間に起床、それから本を読み、朝食を摂る。その後、午前中は本を読み続けていた。昼食を摂る時に模擬戦を申し込まれ、午後は最初に模擬戦をした。移動含めて三十分で模擬戦が終わり、その後はまた本を読んでいた。夕食を食べていると不自然な魔力を感じ取り、その後、その魔力の正体であった野菜の突撃を受けて、……。


(あれ? なんだかんだで一日中本を読んでいたのか?)


なんてことはない。

夜中の野菜以外は全てシンの予定通りであった。


(そう考えると、もう少し体を動かしてもいいかもしれないな)


そんなことを思いながら、シンは二番塔へ向かうのであった。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



朝食の時間まで本を読み、体内時計が六時をまわったところで本を置き、食堂に向かう。

だいたいそのくらいの時間になると他の皆も起きて、下りてくる。


だが、今日はエルディオしか下りてこなかった。

それどころかいつもは厨房で滞ることなく動いているシェンの魔力さえ感じ取れない。

いや、シェンの魔力自体はきちんと厨房にある。

だが、いつもの様に調理していないのは明白であった。


「おい、今日は飛翔魔法の特訓だからな」


エルディオがシンを指さしながらそう言って、先に食堂に向かう。

実際に食堂に入ってみると、いつもは気安く声をかけてくるシェンが、いつもの席で突っ伏して寝ていた。


いつもと違う原因には心当たりがあった。

というか、思い当たるものは一つしかない。

あのベジディザだろう。


シンとエルディオは食事を作らずぐっすりと眠っているシェンを見て溜息を吐く。


「特訓は飯を食ってからだな。ジジイも起きてねえし」


エルディオは悪態を吐くと食堂を出て、階段を上っていく。

シンは二番塔に戻ることにした。



 ✩ ✩ ✩ ✩ ✩



シンは結局午前中をすべて読書に費やしていた。

そして、昼、体内時計は十二時前だが、朝食を食べていない為いい加減お腹がすいた。


そろそろシェンも起きて食事を作っているだろうと考えたシンは食堂に向かう。

食堂に入ると何人かの魔導師が食事を摂っているのが見える。

その中の一席にアルフレッド、エルディオ、フイス、ルイスが座って食事を摂っているのが見えた。


厨房の方に目をやると、シェンの魔法で調理器具が飛び回っているのが見えた。

シンが厨房に近付くと、シェンが隣の部屋から大量の野菜を運んでいるのが見える。


シェンの方もシンに気が付いたようで、声をかけてくる。


「あはは、今起きた…訳ないよね。ごめんね。はい、これ、朝食兼昼食ね」


シェンからいつもより多い食事を受け取ると、エルディオたちが座っている席に向かう。


「忘れてないだろうな」

「心配いらない」


エルディオがシンに訊ねてくる。

飛翔魔法の特訓のことだろう。

朝話したばかりなのだから忘れるわけがない。


全員が食事を摂り終えると、地下に向かう。


「それで、シンよ。どんな特訓をするのかは決まってるのかの?」

「ええ、大体は」


一応、エンドが教えてくれた時のものを多少変えて行うつもりだ。

部屋の内部の世界の設計をアルフレッドの手伝いを借りて作る。

なかなかいろんな設定ができるため、いろいろ試したくなったが今日は基本だけにした。


早速中に入る。

そこには広大な森が広がっている。


「飛翔魔法の特訓で森なの?」


フイスが疑問を口にするがシンはそれを無視して、特訓内容の説明に入る。


「まずは魔力トレーニングから始めよう。何をするにしても魔力はきちんと動かせないとだからね」

「「「魔力トレーニング?」」」


シンの言葉に三人が首を傾げる。


「エンドさんは普通に魔力制御って言ってたかな。体内だけで魔力を動かして、魔力の流れを良くする感じの奴」

「「「???」」」


シンは言葉が分からなかったのかと説明を加えるが、三人はより大きく首を傾げただけだった。

その様子を見てシンは唖然とする。

そして、サッとアルフレッドを睨み付ける。

アルフレッドはいつも通りのニコニコと笑顔を浮かべていた。

シンはその笑顔にイラッとする。


「アルフレッドさん! 何でこんな基礎中の基礎を教えてないんですか!?」

「ふぉっふぉっふぉっ。儂はこの子たちの師というわけではないからの。ここでは全て自分で学ぶのが基本じゃよ」

「それでも、今までいろいろ教えたでしょう?」

「いやいや、儂は実演して見せたことはあっても、指導したことはないぞ」

「シン、何でもいいが、とにかくその魔力トレーニングとやらを教えろ」


シンがアルフレッドに食いかかっていると、エルディオが間に割って入る。

シンもこれ以上アルフレッドに言っても仕方ないと考え、特訓に移ることにする。


「それじゃあ、さっきも言ったけど、体内だけで自分の魔力を動かして全魔力を同時に使えるようにするんだ。これは複数の魔法を使う時に無意識でやってることが多いんだけど、エンドさんの特訓の基礎は『意識してやっていることを無意識で、無意識でやっていることを意識してやる』だから、僕もそうやって教えようと思う」


シンはやり方の方針とコツを教えると早速取り掛からせる。

体内の魔力を全て同時に動かす。

簡単に言えばこんなところだが、魔法を覚えたばかりだと意外と難しい。

全て使う、だったら簡単だが、消費することなくただ動かすのは慣れが必要である。


「これができるようになったら次に移るから、頑張って」


そう言ってシンは自分も魔力トレーニングを始める。

全身の魔力を集め、顔、足先、指先、膝、腹、腕、首、と各所を巡らせる。

ここ三日ほどやっていなかったので僅かに鈍っているのが分かる。


次に魔力を伸ばしたり縮めたりと動かす。

これは単純に想像力の強化でもある。

いろんな形をとることで、物と魔力の境を把握しやすくなるのだ。


最後に、両の掌を向かい合わせて、間に魔力を集める。

体外に出した魔力はたとえ自分の制御下にあっても微量ずつ拡散していく。

そのため、完全に消費を抑えることは不可能だが、それでもシンは消費を抑えるためにこれを繰り返す。

ここで体外に出した魔力の消費を抑えることができれば、その分エンドが最後に教えたあの技の強化につながる。


シンは三人ができるようになるまで約三時間と見込んでそれらを繰り返す。

そして、一時間ほどしたところで、シンの予想通り一人できるようになった。


「うん。それでいいよ、ルイスさん」


シンは魔力を動かせるようになったルイスに声をかけてやる。

すると、ルイスは嬉しそうに笑顔を浮かべた。


因みにアルフレッドは開始十分ほどで「異変を感じ取ったらすぐに部屋から出るんじゃぞ」と言い残して部屋から出て行ってしまった。


「それじゃあ、次に移ろうか」

「はい」

「っ……」


ルイスが元気よく返事をする。同時にフイスが焦る。

フイスは三人の中で基礎属性魔法を得意としている為、基本的な魔力制御なら頭一つ抜けている。

だが、その分消費しないという条件が付いている、今回の魔力制御は苦戦しているのだ。

そして、エルディオは全く反応を示さず、黙々と自分の魔力制御に集中している。


「次に魔力生成をやってもらうんだけど」


シンは魔力生成の説明をする。


人には体内に溜めて置ける総魔力量がある。

使った魔力は自然と回復し、総魔力量分まで回復する。

それに加えて、魔導師は杖に余剰魔力を蓄積している。

ただし、杖に蓄積できる魔力量も決まっており、本人の総魔力量と同量である。


しかし、それでは魔力が不足することがある。

起きている間の自然回復分の魔力量は非常に少ない。

だが、訓練をすることで自然回復量とは別に魔力を体内で創ることができる。


やり方は簡単で、自分の魔力の一部を一度制御できる状態で体の外に出し、体内の魔力のない場所に新しい魔力をイメージする。


早速ルイスがやってみる。

すると、一発で出来てしまった。


「魔力創れました」


ルイスが嬉しそうに告げる。

シンも一発で出来たし、ルイスならすぐできるようになるのは予想通りである。


「それじゃあ、次だね。ルイスさんは魔法を重ねて使えるようになってもらわないとだから」


シンが実演して見せる。

右手の上に火の球を出現させ、左手の上に水の球を出現させる。

右手と左手の両方から魔力が消費されていく状態になっている。


「とりあえず、こんな感じの魔力制御ができるようになってもらいたい」


ルイスは早速やってみるが、なかなか上手くいかない。

ルイスはまだそんなに魔法を使ったことがなかった為、二つ同時の想像が難しいのだ。

シンが助言しながら取り組む。


そうしているうちに、エルディオが魔力制御をできるようになった。

開始から約一時間半、大体シンの予想通りの時間である。


エルディオにも魔力生成をやらせる。

シンはエルディオの場合ここで時間がかかると踏んでいる。


そして、そのさらに一時間後、ようやくフイスが魔力制御をできるようになる。

シンの予想より三十分ほど早いが、姉の維持だろうか。

そして、そのタイミングでエルディオが魔力生成を成功させる。


「意外と難いな」

「は、早く私にも教えなさい」


フイスは魔力制御にだいぶ苦戦した為、魔力の消費が激しい。

シンは二つ同時の魔力制御に苦戦しているルイスも集めて休憩を取ることにした。


「一旦休憩にしよう」

「そ、それよりも特訓を早くしましょう」


フイスは遅れを取り戻そうと特訓を続けたがっているが、シンは特に遅れが出ているとは思っていない。


「集中を欠いた状態で魔法を使うのは危険だからね。息抜きは必要だよ」


無理やりでも休憩を取らせる。

ローブの中にしまっておいたお菓子と飲み物を取り出す。


「おい、それは時空魔法か?」

「ああ、そうだよ」


エルディオが訊ねてきたのを特に気にせず肯定する。

四人でお菓子を食べ、暫らく休憩を取る。


休憩を取ると、再び特訓を開始する。


「ルイスさんはさっきの続いをやって、エルディオはちょっと待ってて、フイスさんは魔力生成ね」


シンはエルディオを待たせてフイスに魔力生成のやり方を教える。

ルイスは一発でやったが、エルディオは一時間かけた。

そして、フイスは一発で成功させた。


「これでいいの?」

「ええ、ちゃんと魔力が増えてますから」


あまりにあっさりできてしまったため、手応えを感じれないのだろう。

だが、シンの予想通りである。

フイスは基本がしっかりしているため、そうそう苦労することなくできるはずなのだ。


次に、二つ同時の魔力制御なのだが、シンは実際に二人が二つの魔法を同時に発動させることができるのはみている。

実際二人がやってみると一発で出来てしまった。


「フン、余裕だな」

「楽勝ね」


少し待つとルイスもできるようになった。


「や、やりました~」

「じゃあ、次の特訓を始めましょうか」


特訓を始めて三時間半、ようやくシンがやろうと思っていたことができる。

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