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魔導伝ー神が覗く物語ー  作者: 虎寅
第二章 浮遊都市国家エデン
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魔物襲来?

予想よりも早く模擬戦が終わった為、シンは当初の予定通りに医学の本を読んでいた。

途中で、ルイスが来て、少し離れた位置でオドオドしていたので、手招きして呼び、横に座らせたのだが、二時間ほどで眠ってしまった。

しかも、再びシンに寄りかかる所も同じである。


(この子に本を読ませるのはまだ早いのかな? でも僕は四つの時から読んでたしなぁ)


寄りかかられていることよりもルイスが眠ってしまうことの方が気になるのであった。

そして、シンの体内時計は十八時を示す。


(食事の時間か)


念の為にと一応ルイスの肩を揺すって起こそうと試みるが効果はない。

午前中と同様、寝返りをうってシンの上にかぶさる。

魔法を使って本を机の上に置き、ルイスを抱き上げる。


中央塔に入るとリービアが部屋から出てくるところだった。


「あらあら。ルイスちゃんはまた眠っているのね。シンが連れて来てくれるならこれからは安心ね」

「はあ、まあ一緒にいる以上は連れてきますよ」


リービアの発言から見るに、これまでもルイスはあそこで眠ってしまい、リービアが運ぶなり起こすなりしていたのだろう。

そこへ、フイスも下りてくる。


「あ、お姫様…」


ボソッと呟いた言葉はシンの元までは届かなかった。


「あ、フイス、良かった、もう動けるんだな。はい」


シンは声を掛けながらフイスに近付く。

そして、そのままルイスを押し付ける。

ルイスを押し付けられたフイスは反射的に腕を出し、一瞬その重みで体を持っていかれるも身体強化をして何とか受け止める。


「また寝ちゃったのね。仕方ない子ね」


フイスはそこで一度言葉を区切ると、ルイスの足の方を下ろす。

そして、軽く息を吸うと、一気にその魔法の言葉をまくし立てる。


「ルイス! 朝よ! 今日も一日張り切っていくわよ!」

「はいっ!」


フイスの言葉に元気の良い返事を返して飛び起きる。

まだ眠いのか目をこすっているが、それでも一瞬で起きたのである。


「なんだ、今のは」

「私が今みたいに言った時だけは確実に起きるのよ。この子は」


シンも驚いて尋ねるが、返って来た答えは非論理的なものだった。


そこに下からエルディオとアルフレッドが上がってくる。


「だからそろそろ俺にも飛翔魔法を教えてくれって言ってるだろ」

「お主にはまだ早いわ。もっとちゃんと魔力の制御ができなきゃ話にならんわ」

「だからもう三つ同時に魔法も使えるようになったってば」

「何度も言わすな、飛翔魔法に必要なのは複雑さじゃのうて継続性じゃと言っとろうが」

「何が違うってんだよ、魔力制御に違いはないだろ」

「どこからどう見ても全く違うじゃろうが」


物凄い言い合いをしているが、アルフレッドがこちらに気付くとエルディオの相手を止めて声をかけてくる。


「おお、皆も今から食事かね」

「はい、ですが、何を言い争っていたんですか?」


一番近くにいたフイスが反応して答えると同時に訊ねる。


「うむ、それがの、エルディオが昼間にシンの飛翔魔法を見てから俺に飛翔魔法を教えろとうるさくてな」

「なっ! おい! ジジイ! 余計なこと言ってんじゃねえよ!」

「ちょっと! そいつに飛翔魔法教えるなら私にも教えてくれますよね!?」


アルフレッドが何気に会話を暴露し、慌ててエルディオが止めようとする。

さらに、エルディオが先に飛翔魔法を教わろうとしている事実を知ったフイスも食いつく。

予想外に相手が二人に増えたアルフレッドは困った顔をするが、名案を思い付いたとばかりに手を叩く。


「そうじゃ、なら、シンが指導するというならば二人の飛翔魔法の習得を認めようぞ」

「なっ」

「それでどうじゃ」

「……わかった。飛翔魔法はこのクソみたいな階段の攻略には必須だからな」

「私も異存ないわ」


シンが止める間もなく決まってしまう。

完全にとばっちりな上に巻き添えの丸投げである。

アルフレッドが笑みの中にすまなそうな表情を浮かべている。


それでも、そんなどれだけ掛かるかも分からないことを引き受けたくはない。

抗議しようと口を開きかけたところで、肩に手が置かれる。

そちらを見やるとリービアだった。


「ドンマイ。頑張ってね」


リービアはその顔に笑みを浮かべ、シンの肩に置いているのとは反対の手でルイスを指さす。

ルイスは目を輝かせて「私も飛べるようになるでしょうか」と呟いていた。


そこで、再びアルフレッドの方を見やると、アルフレッドは笑みを浮かべて、エルディオとフイスは真面目な顔をしてシンを見ていた。

それらの視線に既に逃げ場がないことを悟ったシンは


「分かりました。僕でよければお教えしましょう」


アルフレッドの提案を受け入れ、気分を重くして食堂に向かうのだった。

食堂に入るとシェンが声をかけてくる。


「なんだ、暗い顔して、こんな何でもできる場所でそんな顔をしてるとばちが当たるぞ」

「いえ、ちょっといろいろありまして。そういうシェンさんは機嫌良いですね」

「まあな。なかなか手ごわいイカの解体がようやく終わりの目途を見せてな、明日には出せそうだ」

「へー、それじゃあ、明日の食事は楽しみにしておきますね」


そして、メニューを頼んで受け取ると席に向かう。

すると、エルディオがシンの隣に座り、フイスとルイスが向かいに座るという形になった。


今日の午後で絡まれそうなイベントは解消したのでゆっくりと食事を摂る。

周囲を見回すと十五人ほどの魔導師がいる。

シンはそこに男性しかいないことに気付き、アルフレッドに聞いてみる。


「アルフレッドさん、ここには男性の魔導師しかいないようですけど、女性の魔導師はこの島にはいないんですか?」

「ふぉっふぉっふぉっ。何を言って居る。目の前に三人もいるではないか」

「そうよ、失礼しちゃうわね」


アルフレッドもリービアも笑っているから、シンが言いたいことを理解した上での返答だろう。


「すみません。聞き方が悪かったですね。ここは男女比が偏ってますが、女性の魔導師は数が少ないのでしょうか?」

「ふぉっふぉっふぉっ。いや、そんなことはないぞ。だがのう」

「そう、女性が自分の食事くらい作れないじゃ外聞が悪いでしょ」


アルフレッドの後をリービアが告げる。


「子孫繫栄は生物の本能。魔導師とてそれは変わらんよ」

「そういうことですか」


続くアルフレッドの言葉に大体のことを察したのであった。

エルディオは我関せずといった態度で黙々と食事を続けている。

フイスは中途半端に理解し、顔を赤くしている。

あれは食事が作れないの方なのか、子孫繁栄の方なのか、知るのは本人のみだ。

ルイスは全く話を理解できず、首を傾げている。


そのまま食事を続けていると、突然他の魔導師が立ち上がる。


「おい! この魔力は!」

「ああ、間違いない!」

「あれが来たぞ」

「アルフレッドさん!」


わらわらと立ち上がると外に走って行く。

アルフレッドは声をかけてきた者も先に行かせる。

リービアも席を立って外に行ってしまったし、厨房にいたシェンも既にいない。


シンもその魔力には気付いている。


「アルフレッドさん、これは?」

「うむ、シンは遭遇するのは初めてか?」

「ええ、こんな魔力を初めてですね」

「そうか、これはな、この魔力の正体はな、ベジタブルディザスターじゃよ」


シンを含む子供四人は首を傾げる。

アルフレッドの顔にはいつもより明るい笑顔があった。


「儂もやることがあるのでな、シンがいる以上危険もないじゃろうし、皆もたくさん捕ってくるとよい」


そう言うとアルフレッドは席を立って行ってしまう。


訳が分からないままとりあえず外に出てみる。

すると、そこではたくさんの魔導師たちが家に障壁を張り、あちこちに粘着性の高い網を具現化し、他にもいくつもの術式のトラップを配置していた。


その、総動員で全員全力という状況に四人は驚く。

見渡す限りトラップだらけだ。

さらに、空を見上げると、百を超えるであろう魔導師が飛翔しており、自分の周囲に魔法を展開している。


四人が唖然として停まっていると、館も障壁で覆われていくのが分かる。

そして、後ろからアルフレッドの声が聞こえる。


「ふぉっふぉっふぉっ。もっと前に出て参加せんのか?」


アルフレッドはそれだけ言うと飛翔魔法を使い飛んで行ってしまう。

その方向はあの魔力がある方向だ。


「いったい何が始まるっていうんだ」

「とりあえず、行ってみるか?」


エルディオが呟き、シンが訊ねる。

全員が頷いたのを見て、シンが飛翔魔法を使い宙に浮かぶ。


「おい、俺たちまだ飛べねえんだよ」

「あ」


あまりの魔導師と魔法の数、それと、あの魔力のせいで失念していた。

これから飛翔魔法を自分が教えるのだと。


仕方なしに三人に浮遊魔法をかける。

シンが微風をおこすと、三人の体が浮かび上がる。


「おお、これが飛翔魔法か?」

「これはなかなか」

「うわ~」


「違う、それは浮遊魔法」


自分の魔法ではないものの、空を飛んでいることに三人は興奮しているようだ。

エルディオの問いに簡潔に答える。


「今日アルフレッドさんがやってたと思うけど?」


昼にアルフレッドが三人を観客席に飛んでいたはずだが、その時よりもやけに興奮しているのが気になって聞いてみる。


「えっと、なんだかアルフレッドさんの時は持ち上げられている感じだったのよ」

「ああ、それなら、だぶんアルフレッドさんが使ったのが飛翔魔法だね」

「なんだか全然違うのね」


シンは飛翔魔法と浮遊魔法の違いを簡単に教える。


簡単に言うと、飛翔魔法は風魔法を使って身体を持ち上げる魔法であり、浮遊魔法は圧魔法を使って重力を打ち消す魔法である。


より詳しい違いは後で教えると伝え、シンは三人を連れて屋敷の上まで飛んでみる。

三人は浮遊魔法で浮かして、微風で動かしているのでスピードは出ない。


「ね、ねえ、これちょっと……」


重力がなくなった上で、下からの微風で移動しているため、フイスは靡くスカートを押さえようと悪戦苦闘していた。

ルイスは全く気にした様子もなく下着が露わになっている。


(それで飛翔魔法か)


シンはアルフレッドが浮遊魔法ではなく敢えて飛翔魔法を使っていたと気付き、頭を押さえる。

エルディオは完全に目を閉じていた。


シンは風魔法を発動し、フイス、ルイスの体を風で包む。

すると、スカートがはためかなくなる。

だが、風で体をあまり圧迫しないようにと、シンは意識をそちらにだいぶ割いている。


そのまま速度を上げて、一気に屋敷の上まで飛翔する。

既に日は沈んでいるが、多くの魔導師が各自光球を光らせている。

一つ一つが淡い光を放っている為、まぶしくはない。

だが、果てしなく遠くまでその光源が見え、魔導師が広がっているのが分かる。


四人が屋敷の上部でその光景を捉えた所で、遠い前方に一つの強い光が上がる。

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