第7話 作戦会議
地図がへたくそ
「じゃあ先ず状況でも確認しますか」
そういって地図を広げる。
至トラジア 至フィージア
砦 砦
(トラジア占拠) (フィージア占拠)
マリジア領イリオス マリジア領サリウス
(現トラジア領) (現フィージア領)
マリジア首都コロン
マリジア領ラムザ
(現シニジア領)
砦(シニジア占拠)
至シニジア
「なんか地図見辛くないですか?」
「色々情勢が変わってメモが増えましたから」
城の一室に人が集まっている。
ノア国王、ミア、リアム、グレイソン、イーサン含めた兵長クラス。また、町の有力者も集められた。
「都市の説明は誰かできますか?」
「それは私がしよう」
名乗り出たのはノアくらいの男性だった。
「どうもリアム様。私旅商人をやっておりますアレキサンダー=ハリスと申します。長年トラジアやシニジアに行って商売をしておりました」
「情報通で、いつも有益な話をしてくれる優秀な人物だ」
ノアがアレキサンダーを誉める。
「旅商人ならトラジアを拠点にする方がよいのでは?」
「いえいえ、マリジア製のものは、数は多くありませんが非常に質がいいんです」
マリジア、特にシニジアに近いラムザでは、石油などの自然エネルギーや宝石などが採れる。
シニジアと比べると大量には採れないが、シニジアほど乱獲しないため良いものが出来る。
「それに、唯一自給自足できる国ですから」
マリジアは軍事力でも資金力でも資源でも目立たないが、他国の援助を必要としないくらいには整っている。
他の3国はシニジア以外は資源が少なく、輸入だよりである。シニジアは軍事力が低く、最近は資金にも苦しんでいる。
フィージア以外がマリジアに攻め混んでいるのは、こういった要因もある。
「ちなみに、イリオスとサリウスはとなりあっていますので、トラジアとフィージアはそこでも争っています。お互いイリオスとサリウスを占拠できればかなり有利ですからね。この争いがあるおかげで、コロンへの侵略がやや遅れています。シニジアは資金力や戦力の関係上、トラジアの協力がない限りは自発的には動きませんから、こちらにも影響します」
グレイソンから追加報告が入る。
ノアのそばにいつもいるグレイソンは情勢にかなり詳しい。
「最近になって私がミアをトラジアに、逃がそうと思ったのはフィージアがコロンを攻める噂を、トラジアの親戚から聞いたからだ。戦力では、フィージアが上だが、資金力はトラジアの方が強い。短期決戦ならフィージアは無敵だが、長期戦には実は強くない。だから、俺達が外に出て来るまで待つと見せかけて、トラジアを出し抜いてコロンを取るつもりなんだ」
「それたぶん本当ですね。そうじゃなきゃフィージアの兵士があんなところにいるはずがないですよ」
リアムの発言に緊張感が高まる。こうしている間にもフィージアが攻め混んでくるかもしれないのだ。
「さて、ここまでを聞いていかがですか?」
アレキサンダーがリアムに聞く。
『ここはやはり、シニジアを攻めてラムザを取り返し、フィージアからの攻撃を耐えるべきです』
『そんなことをしている間にフィージアが来たらどうするんだ! フィージアに奇襲をかけるのがいいに決まっている』
『フィージアに特攻したらまず負けるだろう。しかしラムザがあれば大丈夫だ。可能性がある方にかけるべきだ!』
『その場合ミア様の護衛に使う兵士の余裕がないだろう。もし間に合わなかったらミア様も危機に晒すんだぞ』
会議は踊る。されど進まず。
「ノアさん。方向性まだ決まってないんですか?」
「私はフィージアに特攻を考えたのだが、この状況になってもマリジアに残ってくれた兵士はマリジアへの思い入れが強くて、諦めてないんだ」
要は、マリジアを守りたい人と、ミア達若い人を逃がしてマリジアの血を守りたい人に別れる。これはミアとノアの考えの違いにも似ている。
「まぁ落ち着いてください」
会議が白熱した中リアムが声を放つ。
「俺の意見はフィージアへの特攻です」
周りがざわつく。フィージアへの特攻は死を覚悟する発言である。
『なぜラムザを攻めるのではいけないのですか?』
シニジアは戦力が非常に落ちて落ち目である。可能性ならこっちのほうがありそうに思われた。そのため、若い兵士はこちらのほうが良いと思っていたし、全体的にもそうであった。
「皆様、今最も脅威なのはどこですか?」
リアムが全員に向かって質問する。
『フィージアです』
『フィージアじゃありませんかね。もう明日にでも攻められる可能性があるんですから』
『フィージアをなんとかしないと』
「トラジアじゃない?」
「ミアさんだけ正解。1番敵にしてはいけないのはトラジアです」
リアムが地図を指しながらいう。
「いいですか、シニジアとトラジアは現在同盟にあります。シニジアを敵に回せばトラジアも何かしらのアクションを起こす可能性があります。トラジアが無理に攻め込んでこないのは横にフィージアがいるからです。しかしシニジアを攻めれば、トラジアは多少リスクを犯しても、コロンを攻めに来ます。無理に攻める理由をトラジアに起こさせてはいけないです」
『それはフィージアでも同じでは? シニジアに戦力を割けば、フィージアも動くでしょう」
「トラジアは資金力があります。今後マリジアが生きていくためには絶対にトラジアを敵に回してはいけないです。戦争後にシニジアが何とかやれているのはトラジアの援助があってこそです」
『話は分かりました。しかし、フィージアに勝てるんですか?』
「それは俺に任せてください。ちょっとやってきますから」
「そんな簡単にいくのかい?」
リアムの発言が軽すぎて逆にノアは不安になった。
「大丈夫だと思いますよ。俺のことノアさんは一応知っているでしょう」
「知ってはいるが……、万が一ということもある。何人か兵士を連れて行こうか?」
「兵士が下手に減ると大変でしょう。俺1人のほうがいいですよ」
『おいおい、ちょっと俺たちを馬鹿にしすぎではありませんか?』
『神の子だかなんだか知らないが、話を全部否定するわ俺たちを足手まとい扱いするわなんなんだよ』
「だって実際そうでしょう。これだけいてミアさんくらいしか正しい認識ができてないんですから。ワイアットさんの兵士は認識は正しくできてましたよ」
『ノア様! これだけ言われて我慢できないです! 俺たちの力を見せたいですよ。リアムと戦わせてください』
『俺たちはこの人の実力を知らないですし逆もそうです! 1回戦わせてください! 負ければ従います!』
「ちょっと落ち着け君たち。ただでさえ少ない戦力を怪我させられては困る」
「いいですよ。怪我無く兵士の皆さんをお返ししますから」
ノアがなだめているのに、余計なことをいうリアムにノアの胃が痛くなったという話である。