48話 思い切りがついた
「もう大丈夫ですわ」
少し経ってリアは落ち着き、今はラムザの城にいる。
リアがいつもいる部屋にリアムもいた。
「気持ちは晴れた?」
「はい、ダニエルはずっとダニエルのままでしたのね。もちろん彼に対する申し訳なさが無いわけではございませんが、私がそれを気に病むことは彼の死に報いることにはなりませんね。彼が最後まで私が少しでも幸せになれるようにいてくださった。ですから、私が幸せであることが彼へのはなむけになりますわ」
「そうだな。それに、ミアが生きてないと、ダニエルのことが確かに存在していたという証拠自体もなくなってしまう。人に忘れられたとき、それがはじめて死んだっていうんじゃないかと思う。人は人に影響を与えて生きる続けるんだから、リアがダニエルから受けた影響があって生きてるんだったら、ダニエルはリアの心として生きていることになるんだよ」
「私は、ダニエルから、人への優しさと人を愛することの大切さ、誰かを恨まない心に笑顔とたくさんいただきましたわ。これを少しでも他の人に広げて生きたいですの」
シニジアに来てからずっと張り詰めていたリアの表情は、とてもおだやかになっていた。自らに厳しく人優しき彼女は、今ここに来て更に皇女としての資質を高めていた。
「シニジアに恨みはある?」
「私とダニエルをひどい目に合わせたことは許せないことではありますが、ダニエルと会えて、リアム様に会えたのも、シニジアがあってこそです。人生はそういうものであると受け入れ、シニジアと交友を広めていけるのが1番良いと思いますわ。ですが、もしシニジアがマリジアにとって良くないものであるとリアム様が判断されるのでしたら、私にかまわず好きにしてよろしくてよ」
「ラムザはいずれ併合する。でも管理するところが増えればやっぱり難しくなるから、できればシニジアが単独で立場を確立してくれるのが1番だよ」
「そのためでしたら、がんばります。ダニエルの心を受け継ぎ、リアム様のためにシニジアの再興に尽くさせていただきますわ」
次の日からリアの活躍はさらに目を見張るようになる。この動きをみて、リアをダニエルの死体を盗んだ人間ではないかという疑問はカーター含め幹部から聞かれることはまずなくなったのである。
しかし、カーターやジョシュアはどのようにしてそれを誰が行ったのかまでは、理解できぬままになってしまうのである。
「……、あなたがリアムですか?」
数日後、リアがリアムとマリジアとの国境沿いで会っていると、後ろから声が聞こえた。
「ハーパー? どうしてここにいますの?」
そこにいたのはリアの妹であるハーパーであった。
「なんでも完璧なリア姉さんが認めた人……、とても興味はある」
「今日はラムザ城内部で勉強をする日のはずでしょう?」
「……フッ……、あんなものはすぐにでも終わる。それでリア姉さんが最近よくいなくなるから気になって見に来た」
少し自慢げな顔を浮かべてハーパーは話す。
「どうも、はじめましてかな。俺はリアムって言って、君のお姉さんの旦那さんだよ」
リアムが優しく軽く腰を落として話しかける。
ハーパーの身長は10歳としてはそこそこあるが、それでも頭ひとつはリアムより小さい。
しかし、10歳とは思えぬほど発育が良く、将来性がとても高い。それがカーターの仲間にも人気がある理由である。
ちなみに、母ライリー、姉クレアはスレンダー体系でスマートではあるが、いわゆるお子様体系である。
ハーパーの発育が良いことはさまざまな憶測を流させたが、本当にハーパーはライリーの娘であることは証明されていた。
「リア姉さん……、この人は兄さん達よりも優秀なの?」
ハーパーがリアに尋ねる。
「ハーパー。それよりもリアム様のことを呼び捨てにしたり、この人呼ばわりするのはおやめなさいませ。リアム様は奴隷であった私を助けてくださったのですよ」
「それについては、感謝してる。リア姉さまのことは私尊敬していて大好きだったから。でも、それは私には関係の無いこと。敬称はそうである人につけられるもの。だから、私は様をつけては呼べない」
「ならせめて呼び捨てはやめてくださいませ」
「……、分かった。じゃあ妥協して兄さんと呼ぶことにする。姉さんの旦那さんなら兄さんでいいはず。別に失礼でもないし」
「もう、この子は……、リアム様申し訳ないですわ」
「いいって、確かにハーパーには俺は何もしてないしね。それでいいよ、好きに呼んで」
「私はまだ兄さんを姉さんの相手としては認めていない。兄さん達を超えない限りはな」
そう言って、ハーパーは来た道を戻っていく。
「ハーパー? いったい何をしにきたんですの!」
それを追いかけてリアが走っていった。




