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43話 疑惑

「いや、リアって言う子はすごいじゃないですか。それにカーターさんの思惑通りに動いてくれている。やはり彼女はマリジア人と結婚してもシニジアの人間ですよ」

「カーターさんが策を練るまでもなかったじゃないですか」


ロブの城内ではカーターとその友人たちがのんびりと食事会をして過ごしていた。

ロブの仕事は主にシニジア全土から集められた資料のまとめや、調整された予算の確定だが、マニュアルはリアが作ったものがあり、各代表は優秀な人材がそろっているため修正の必要がない。

カーター達の仕事はそこまで多くならないので、このように仲間で集まって過ごしていることも多くあった。


「しかしどうも気になるのは……、なぜクレアやハーパー嬢をラムザで教育しているのだろうか?」

カーターはあくまで裏に徹するリアを疑ってはいなかったが、2つ気になることがあった。


1つは、ダニエルのことについてあまり詮索をしてこないこと。

彼女にとってダニエルは、目の前で失った最愛の人である。

リアは聡明であり、ダニエルが仮に生きていないとしても、100%の確信がない限りは会いたいといってくるはずで、仮にダニエルが生きていれば彼女にとってはうれしいことであり、生きていないとすれば、それを理由にシニジアを見捨てても世間からの風当たりは弱い。

どちらに転んでもリアにとってデメリットはないのだから、いくらでもカーターを問い詰めてもいいはずなのに、最初に遠出中と言ってから一切の接触がない。


次に、クレアやハーパーをラムザに送って教育していることも気になった。

1番管理のややこしいラムザを、マリジアの政務に関わっているリアがやってくれるのは、シニジアにとっては非常に助かっているが、シニジアの政務を行うことになるクレアやハーパーをラムザで教育する必要があるのかは疑問が残る。

リアがラムザを管理するのにラムザに常駐し、その際に一緒に教育をするために2人の妹を近くに置いているとか、マリジアの管理も学ばせて2人の政務の幅を広げようとかいろいろ考えられたが、わずかに残る疑問は拭い去れなかった。


「カーターさんは考えすぎなんですよ。リアさんに任せておけば、安泰ですよ」

「俺は父上によくリア様やその兄の噂を聞いていましたが、実際に見るとすばらしいですね。皇子2人は彼女よりも優秀だったそうですよ。2人とも生きていてくれれば、今頃ジア大陸の統一もありえたんじゃないですかね」

最初の管理見直しが1ヶ月、その後の予算管理も1ヶ月、この2ヶ月でリアの信頼はゆるぎないものとなり、誰も彼女を疑う人間はいなくなっていた。

初めのころは自分を追い出したシニジアに戻ってきたことで、スパイの疑いを持つ人もいたが、彼女がこの2ヶ月に残した実績は明らかにシニジアのためになることであったためだ。


「どうもですわ。今日もお招きありがとうございますわ」


リアも仕事を終えて、カーター達の行っている食事会に参加するために来た。

彼女はロブとラムザを交互に行き来しており、ロブにいるときはよくこの食事会に参加している。

シニジアの食事会はすべて野菜であり、シニジアで取れる野菜はマリジアで食べるものよりも新鮮でおいしく、彼女にとっては良い食事会であった。


「リア様、今日もお疲れ様です。どうぞお席に」

リアは食事会でよくマリジアの話をしたり、昔のシニジアの話をする。

カーター含め、王族ではない彼らにとってその話は面白いものであった。


「リア様! 俺と結婚を前提に付き合ってもらえませんか!」


そんなリアに惚れる人間も多かった。

この食事会には、カーターが選んだりした女性や、資産家の娘なども参加していたが、その中でもリアは1番人気であった。


いまだ16歳と若くも聡明で、スタイルも大人の女性と比べてもずば抜けて良い。シニジアで人気のある純正白髪は輝きを放つ。

昔と比べて長くなった髪は大人っぽさをかもし出すが、まだ顔は子供っぽく、大人と子供の良いとこ取りをしている彼女は女性に嫉妬の感情ではなく、尊敬のまなざしを与える。


「お気持ちはうれしいですわ。ですが私は既に結婚しておりますので」

断るたびに、告白した男性はかなり落ち込んでいた。


その後、小さい声で今のうちにハーパーに声をかけておくべきではないかという声も聞こえていた。

クレアと異なり、ハーパーにはまだ婚約者がおらず、14歳から16歳で一気に美人になったリアを見て、クレアやハーパーもそうなる可能性が高いと思ったからである。

リアと妹2人は従姉妹だが、父親同士は兄弟であり、同じ王族の血が流れているので非常に期待が持てた。


「10歳のハーパーに手をお出しになるのは、ちょっと節操がございませんわ。そのような人にハーパーはまかせられませんよ」


そしてリアに釘を刺されるところまでがワンセットであった。


そんなこんなで、リアは完全にシニジアの人間に、認められるようになったのである。


そのまままた1ヶ月がたとうとしていた。

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