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41話 2年という空白

「これは、2年いなかっただけでこんなに変わるものですの?」


リアはロブの城で、人の配置をクレアに見せてもらって驚いていた。


かつてヘンリーを支えた部下は、高齢な人間は引退し、若くてもリアの味方をしたため処刑や追放処分を受けていたため、数は減っていた。


ライリーはその中でも、自分の意見を聞くものを使った。

ヘンリーは周りの人間をうまく動かすのがうまかった。ライリーはその逆で、自分で判断して、それを回りにやらせるのがうまかったので、重要視される人材は、自分で考えて行動する人間から、指示をきちんと遂行できる人間に変わっていた。

それでも、ライリーが仕切っているうちは、もともとの部下の息子や親戚が多かったが、ライリーが死んでカーターが仕切るようになると、そういった人ではなく、単純にカーターがやりやすい人材だけがあつまり、学の無い者や資産家のお金だけがある子供が使われることが多くなった。

その上配置もでたらめで、ライリーの死後からほんのわずかでラムザで問題が起こったのもうなずけた。


「私の知っている人がほとんどいませんわ……」

当時兄とともに政務の勉強をしていたリアは、有力な部下はもちろん、その親戚関係との面識もあったので、2年たった今でも名前くらいは覚えていたが、それすらほとんど見当たらない。


「カーターさんが全部決めちゃったの。反対する人は皆追い出されちゃった」

「こんな無茶をして、他の人は何も反対しておりませんの?」

「カーターさん本人はもちろんだけど、彼が選んだ人材も皆シニジアの資産家の子供や親戚で、下手に無下にしちゃって反発されるとシニジアの財政に関わるから反対できないって言ってた」


「もう……、ラムザの管理が甘くなっているのはリアム様が予想してましたが、ここまでひどいことになっているとは思いませんでしたわ……」

リアは頭を抱える。そして今回シニジアに足を運んでおいてよかったと思った。リアムがどこまで予想しているかは分からなかったが、この情報は知っておいて損は無い。

 

「こんな配置ではいけませんわ! 配置転換を申し出ます!」

リアは翌日、カーターに意見を申し出た。

「困りますねお姉さま。いえ、ここは政務の場ですからリア殿と呼ばせていただきましょう。あなたは今回そのようなことをするために呼んだのではございません」

「いえ、確か執事の方は、私にダニエルと共に国の復興に協力をして欲しいといわれました。そういえば、まだダニエルの姿を見ておりませんが?」


議論をしつつ、リアは気になったことを聞く。リアを探しにきた執事はダニエルのことを重要視していたのにも関わらず、先ほどの主要な人物の配置図にダニエルの姿は無かったからだ。


「ダニエル殿は外交関係の補佐をやられていますので、今はトラジアに行かれているはずです、お戻りになり次第お会いになれるかと」

「私が来るのに、ダニエルを外に行かせたのですか?」

「申し訳ありません。急な用件でございまして」


リアはカーターの対応に不審を覚えた。

リアとダニエルのことを執事が知っていたことを考えると、現在国の事実上のトップであるカーターがそのことを知らないはずが無い。

それを知っているのであれば、リアを確実に信用させるために、ダニエルと真っ先にあわせるべきなのである。

そのことから、リアはリアムが言っていたように、あまり良くない展開も予想しなければならないと感じていた。


「話を戻しますが、リア殿は現在継承権も無いただのシニジアの王族であり、あくまでもやっていただくのはシニジアをよくするための補助だけです。人材の配置についてまでは口出ししないでいただきたい」


「いいえ、この人事配置ではシニジアは落ちるだけですわ。どの地域も2年前私がいたときより情勢が悪くなっております」

「仕方がありません。母上殿が優秀な人材を多く解雇してしまいましたから。今は成長をさせる時期です」

「いえ、1年前の資料も拝見しましたが、1年前に関しては、むしろ業績をあげていますわ。それに母上の人事配置には、ちゃんと名前を知っている人がついておりました。その人達はどうされたのですか?」

「母上と私では必要とする部下のタイプが異なるのでしょう」

「違いますわ。母上とあなたは、自分の指示を良く聞いてくれる部下を重宝しているという点ではおなじです。しかし、母上と違って、本当にあなたは自分のことしか考えていらっしゃいませんわ」

「なんと! 言いがかりはやめてください」

「言いがかりではありませんわ。実績が伴っておりませんもの。おまけに自分から近い地域にいらっしゃる方は皆あなたの友人ではありませんか」

「彼らは全力でやっている」

「調べさせていただきましたわ。毎日遊んでいて政務は部下に任せっぱなし、たまに殺し合いをさせる。逆らった部下は打ち首にして、税収も適当これでよく全力でやっていると言えましたわね」

「…………」

「沈黙は肯定と受け取ってよろしいですの? 人事配置はいったん私にお任せいただきますわ」

「ま、待て! 勝手にそんなことをして言いわけが……」

「でしたらクレア主導で、人事配置を致しますわ。クレアは正式な王族の王女であなたよりも地位は上ですわ。今は14歳のクレアの代わりに政務をあなたが行っているだけですから、クレアを補助してクレアが政務をこなせるのでしたら問題はございませんよね? 今は成長をさせる時期なのですから」

「……、分かりました。ですが、失敗なさったらその時は」

自分の言った言葉を使って意見を言われたため、カーターは反論できず、苦し紛れに捨て台詞を言うことぐらいしかできなかった。


「お姉さまさすがですわ。今この国で、カーターさんを言い負かせる人なんていなくて……」

「……気分がいいわ。いつもクレア姉さまに厳しくあたってばかり嫌いだったの」

クレアもハーパーも笑顔になる。よほどカーターに良い感情を持っていなかったのであろう。


「では、早速人事の変更を致しますから、クレア。昔いらっしゃった方の現状を教えてくださいまし」


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