38話 酒癖
「くかー、まだ眠くないよ~」
「ですわですわですわですわ」
「俺の何がわりぃんだー」
「親父がなんぼのもんじゃい」
「なんだこの状況は?」
上記のメンバーはトラジアのリック、ミア、リア、イーサン、リアムである。
この良く分からない状況の始まりはリックがまたマリジアへの訪問を行っていた2時間ほど前のことが始まりである。
「どうも、こんにちは」
「いらっしゃい、リックさん」
リックは結婚式以降頻繁にマリジアに来ていた。
勉強家の彼は、新しいことをしようとしているマリジアで学ぶことがたくさんあるということで、父親に許可をもらってマリジアに来ていた。
「今日はリアムさんに、リアさん、ミアさん、イーサンさんとは豪華ですね。お土産を持ってきたかいがありましたよ。こちらを飲みながらお話しましょう」
マリジア側も、もっとも発展しているトラジアの王族からの情報を得られることが多く、このように会議の席を設けていた。
今回のように要人が多くそろうことは少なかったので、リックは非常に喜んでいた。
「それは何ですか?」
「お酒というものです」
「リアム知ってる?」
「アルコールだよ」
「さすがリアム様ですね。まだジア大陸で珍しいものなんですけど」
「アルコールってあれですよね。そんなの飲んで大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ、ストレスの解消、コミュニケーション向上、疲労回復にいい飲み物ですよ」
お酒というものはジア大陸には長らく概念としてなく、近年トラジアが外国から輸入して、最近になってようやくトラジアが自国で製法を見つけることができるようになったっものである。
「まぁだまされたと思って飲んでみてください」
「この黄色いのは苦いですね」
「それはビールっていいます。のどごしの良さが特徴的です」
「こちらは香りがきついですね」
「そっちはいわゆる焼酎です。芋や麦など種類が豊富ですよ」
、
「私はこっちのほうがいいな、ビールはちょっと苦いし、麦のほうが少し香りがやさしくて飲みやすいです」
「私も焼酎のほうがいいですわ。こちらの香りがきついほうなんてとても好きですわ」
「ビールおいしいと思いますよ。一気にいけそうです」
「私はどれでも飲めますよ」
「酒は今いちかな」
ミア、リア、イーサンは見事に好みが分かれて違うお酒に手を出す。
リックも一緒になって飲み始めるが、リアムは少しだけ手を出して後は会議の資料集めをしていた。
そして、冒頭の話になる。
3人ともお酒を飲むのは初めてであったが、なんとなくほんわかする感じが気持ちよくて制御せずに飲み続けていた。
本来であれば唯一知識のあるリックが説明するのだが、彼が最も早く酒に飲まれてしまい、おかしいと思ったリアムが仮未来視をつかったところ、こうなる未来が見えたのだが、とき既に遅し。止めようとしても、酒を奪うこともできず、なぞの説教を食らうわ、殴られるわ、愚痴を言われるわ、女関係の相談をされるわでまったく抵抗できなかった。
ただ、おとなしく見ている分には面白かったので、他の能力は使わなかった。
というより、今回の件である程度この話をしておかないと、次にまた同じことが起こりかねないため、我慢することにした。
「ふへへ、リアム、わだしはどうぼ皆の役に立ててない気がするわけだよ~。うわぁぁぁん」
まず初めにおかしくなったのはミアであった。
いつもの笑顔は変わらないが、笑顔でおお泣きして近寄ってくるのが怖い。
感情豊かに見える彼女だが、基本的に人前で泣き言を言ったりすることはまず無い。
「そんなこと無い。マリジアの国民はもちろん俺も大事に思ってるよ」
「うわぁぁぁん、ありがとう!」
しかし、そんな彼女だからこそ、気分が高ぶると泣いてしまうのである。抱きついてキスをしようとしてきて正直めんどうくさい。
「ですわですわ~、ウフフですわ~、オホホホホですわ」
笑い続けているのはリアである。
いつもおしとやかであり、笑うときも軽く微笑む程度の彼女が大笑いしているのは怖い。
しかし、気分が高ぶって笑っているということは、今の彼女は幸せなのだろう。
「楽しそうでいいね」
「リアム様~、私と今夜一緒に過ごしてくださいまし」
笑いつつも抱きついて離そうとしないので正直面倒くさい。
「リアム様はいいですね~、俺は問題だらけですよ、聞いてるんですか!?」
なぜか起こっているのはイーサンである。
日頃仕事柄ストレスの多い彼は、お酒に飲まれるのは早かった。身長があって体つきのよいイーサンが興るのは単純に怖い。
「聞いてる聞いてる」
「皆いうこと守ってくれないんですよ! 俺の説明が悪いんじゃないですよ
これは単純に面倒くさい。
「親父より俺のほうが国を良くできますよ」
リックまで酔っぱらっている。
酒を持ってきたのはリックなのだからリックにはしっかりしてほしいと思った。しかし、下手にリックに説教したりすると後々怖い。
「リックさんは現状第1候補なんですからいずれなれますよ」
「俺はすぐにやりたいんだよ! でも親父のほうがやっぱり信頼されてるから!」
それでも父親を尊敬しているため、どういってもただの愚痴になり、面倒くさい。
4人が酔って寝た後の片付けもリアムが行った。
次の日になると、誰も何も覚えていなかった。




