22話 国民による国づくり
「どうも、私達が、代表です」
また1ヶ月ほどかけて、リアムの指示の元、コロン内部と奴隷から優秀な人材を集めた。
一時期十万人まで人口が減ったマリジアは、1度マリジアを出て行った国民や、イリオスの奴隷、たまにあるトラジア、フィージア、シニジア3国からの脱国民を含めて60万人まで増えていた。
コロンに60万人はぎりぎり住める人口で、少し町が活性化し始めていた。
代表というのは、さまざまな専門家や知識人を集めたグループの各リーダーで、リアムが幹部候補としたい存在である。
「よろしくお願いします。私がリアムです。そして彼女が皇女のミアさん、そして現国王のノアさんです。私の横にいるのが、補佐のリアです」
「私が全体代表のドニと申します。リアム様に言われたとおり、必要なものを決めてまいりました」
そういって、リアムにリストを出す。
∴リスト
・警察(国以外でも、逮捕する権利、監査する権利)
・貿易(民間による貿易)
・政務(国民による政治)
・金融(通貨制度、きちんとお金が国民に周り消費ができるように)
・学校(学力底上げ)
・病院(国による保護を与える)
・国土整理(家、店、畑、森などのバランスを考える)
・農耕(農業の仕組み作り)
・娯楽(必要最低限の生活に+αするもの)
「うん、まぁこんなところだろうね。また必要なら作ればいいし」
「なにそれ?」
「今まで全部国が管理してたのを国民にやってもらおうと思ったんだけど、そのリスト。はじめのほうは俺達が補佐しなければいけないけど、いずれは任せることになるかな」
「これ本当にできますの?」
「もちろん、リアにも手伝ってもらうから」
「それはいいのですわ。でも大変じゃありませんの?」
「大変だよ。だからみんながんばってね」
「「「「「「「おー」」」」」」
「……大丈夫ですの?」
国の活性化にかかわることなのでみんな士気は高かったが、リアだけは心配そうだった。
「うわーん、忙しいよ~」
ミアが嘆く。
代表を集め、その全員の実績を調べ、適性を見出し、予算を組んで、人事を決めて、設立場所も決めて、今はそのリスト作りだが、人材がまだ発展途上のためできる人が少なく、1人当たりの負担が大きかった。
警察代表 イーサン(元マリジア兵団兵長 マリジア純正)
貿易代表 アレキサンダー(無所属物売り マリジアトラジアハーフ)
政務代表 リアム(無所属 マリジア純正) 候補生 ソフィア(元奴隷、元トラジア王国外相。トラジア75%残り25%マリジア)
金融代表 リア(元奴隷、元シニジア王国第3皇女でシニジア純正。ただし、後者は一部のみ知る)
学校代表 ミア(マリジア王国皇女) 候補生 エリー(元奴隷、マリジア平民 マリジアフィージアハーフ)
病院代表 カーター(マリジア病院院長 マリジアシニジアハーフ)
国土整理代表 マシュー(マリジア工務店店長 マリジア75%フィージア25%)
農耕代表 ドニ(元ラムザでの農業責任者 マリジア純正)
娯楽代表 ナタリー(元奴隷、トラジアカジノ元オーナー ほぼトラジア純正)
※候補生はすぐにできそうな適正者がいないため、リアム、ミアが兼任。こなせるようになれば代表に。
「9つにしか分かれてないですけど、中身はすごく複雑ですわ……。私の金融だけでも中に、保険、金銭貸し借り、投資、預金はもちろんですけど、お金のことですからほぼ全部の仕事に関わってしまっていますわ。演算が得意というべきではありませんでしたわ……」
「私の学校も大変だよ~。1回学校なくなっちゃってるし、今後子供がどういう感じで増えていくかも逆算しないと」
「ど、どうもすみません……、私がまだそんなにしっかりしてないから」
ミアに謝るのは、金髪に時々黒がかった髪色をしている少女。リアと同じく15歳のエリーである。
今回の幹部および幹部候補生の中では最年少で唯一の平民。しかし、平民で奴隷経験がありながら、算術や文字書きや歴史知識や社会情勢のテストでリアやミアにも負けない成績をたたき出した才女である。
「良いって。すぐに代表になれるよ」
「そうですわ。軍事に重きを置いているフィージアで、こんなに博識な平民の方がいらっしゃるなんて驚きですわ」
平民で若いため経験と実績が無いだけで、すぐに期待できる逸材である。
「ありがとう、リアお姉ちゃん、ミア様」
「同い年ですから、リアでかまいませんわよ」
「うん、ありがとう、リアちゃん」
「はい、よろしくですわ」
「え? リアちゃん私と同い年なの?」
少し遅れてエリーが質問する。
奴隷から解放されて約2ヶ月、彼女はまったく痩せこけた様子がなくなり、非常に健康的な女性になった。
そして、そうなったことでスタイルの良さが際立つようになった。
2歳年上のミアよりも身長が大きく、胸も明らかに目立って大きくなった。
ベジタリアンの彼女がとんでもなくスタイルが良くなったので、一時的にマリジア国内でベジタリアンがはやったこともあった。
その好スタイルで、リアムの近くにいつもいるものだから、ミアが不安そうに見ていたことがあった。ある程度完璧超人のリアムだが、女性関係だけは初心でよく表情を崩している。
逆にエリーは10歳といっても間違いないくらいで140センチしか身長がない。スタイルもまだ成長していないのか、これからするのか分からないくらいであった。
「そうですけど何か?」
「なんでもないです」
エリーその後無表情で仕事した。
「お疲れさん、手伝いにきたぞ」
3人の仕事中にリアムが来る。
「リアム様、ありがたいですけど忙しいんじゃないですの?」
「リアムは自分のところをやってくれれば良いよ」
「俺は大体終わってる。しかもソフィーさんがめちゃくちゃ優秀だからそのうち引き継げるよ。1回奴隷に落ちたのが信じられないくらいだ」
「なんでそんな人が奴隷になったんだろうね……」
「奴隷になるというのはいろいろ事情があるのでございますわ……。とりあえず、今日中に数字のまとめだけ終わらせておきたいのでお話はその後にいたしましょう」
その後なんとか日をまたぐ前に終わったが、数字が好きなリアが数字嫌いになりそうであった。