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第16話 暗き過去

シニジア王国はマリジア以外の国と接する機会が少ないため、比較的他国より純正が多く生まれる。

そのこともあって、跡継ぎの子供に困ることはまず無く、余裕を持って跡継ぎを選ぶ。

リアの世代も特に困ることは無く、5人の跡継ぎが生まれていた。


シニジアの王族による教育をしていく上で、王に向いている順番で序列をつけて、上から順に数字をつける。


リアは当時の王ヘンリー=シニジアの弟の娘で、弟夫婦が事故死したことによって孤児になった彼女を彼が引き取ったことにより、養子となった。

一応彼女は王族の純正であったが、次男の娘でしかも養子の彼女は本来跡継ぎに関係が無いはずであった。

しかし、彼女はとても優秀で、民の支持もしっかり得て、他国からも一目置かれる存在であった。

その力量はシニジアに有益な効果をもたらすと判断し、第3皇女という高い地位を与えた。


彼女の義理の兄にあたる2人は、その聡明な彼女を第1皇女にはさせないほどには優秀で、第3皇女とはいえ、まず彼女が王としてシニジアのトップになることは考えられなかった。


兄弟仲は悪くなく、彼女は特に不満なく成長した。。


しかし、彼女が14歳のときに問題が起こった。

第2王子がトラジアに協力してフィージアとの戦争をした際に戦死。第1王子が時を同じくして病死するというシニジアを揺るがしかねない大事件が起こった。

実はその2人以外は、ライリーの子供はあまり優秀ではなかった。

そのため、シニジア国内でリアを正当な後継者として相続させようという意見が強くなった。

この時点で、子供2人を失ったヘンリーも病気となり、ライリーが大臣たちの支援を受けて政務を行っていたのだが、彼女としてはなんとしても自分の娘に後を継がせたかった。


ここでライリーは劣悪な手段を使った。弟夫婦が第2次ジア戦争で裏切ってフィージアの味方をしていたとの噂を流した。

もちろんこれだけでは信じる人と信じない人がいるのだが、信じない人はライリーが粛清した。

そのほかリアの味方をするものは全て排除した。

リアのことは、自分の子供を支えてくれる存在としては愛していたが、自分の娘としては愛していなかった。


それでもリアの支援は強く、最後の手段として、リアの目の前でリアの当時の思い人の少年、父親のように慕っていた大臣、仲のよかった平民の女の子達を惨たらしく殺害した。

もちろんこれは公にされていない。城の内部でこっそり行われたことである。


その光景がショックすぎて、彼女は目が見えなくなり、ヘンリーも病死して、味方も一切いなくなったシニジアを彼女はそのまま追い出された。

その状況でシニジアの山地で倒れていたところを、ハンターの仲間が拾って今に至るのである。

ハンターはたまに山の中に入って、物探しをさせることがある。

脱走した各王国の国民や兵士が倒れていたりすることは結構あり、奴隷を無料で手に入れることができるし、生きていなくてもその装飾品などで儲けることができる。

そうでなくても、資源の多いシニジアの山には、そういったものが埋まっていることも多く、行動が無駄にならないため、シニジアでは特に山探しをする。



「というわけで、私が隠しています。トラジア本国にも知られておりません」


ハンターの話を聞いてミアは泣きそうになる。ミアには母親がおらず、ノアと接する機会も少ないが、マリジアの国民には愛されていた。

自分がリアの立場になったら、生きていることすらできないと思った。

「この子が表ざたになれば、シニジアは間違いなく全力で奪いにくるでしょう。1度正当な第3皇女と認定してしまった以上は、彼女は序列が現皇女より上ですから」


「それでリアちゃんはどうなるの?」


「彼女の味方はシニジアにはいらっしゃいませんから、内密に殺されると思われます」


「そんな! お父様、なんとかできないの?」

「そ、それは……」


ミアの気持ちは理解できるし、彼自身もヘンリーやリアを知らないわけではない。特に温厚なヘンリーとは、外交をするときにも横に座ったりするなど仲がよかった。

彼個人としてはリアを助けたいのだが、今からマリジアを立て直そうとしているところに、問題を持ち込むのは厳しくもあった。


「どうしようか……」

「リアム……、何とかならないの」


「俺の個人的な感情で申し訳ありませんが、俺は助けてもいいと思います」

「君が言うなら信用はするが、メリットはあるのかい?」


「彼女の能力がまず高いのは非常に魅力的です。シニジアの王族は優秀ですから、そこで有名ということはかなり期待できます。加えて、シニジアで彼女は非常に慕われていたわけですから、彼女をマリジアで保護することはシニジア人の支持をマリジアが得られる可能性も高いです。もちろん彼女の存在を公にできない可能性もありますが、それでも彼女ほどの逸材が他国に流れるのはマリジアにデメリットになります。自分たちの国が引き取れば、最悪でもプラスになります」

「しかし、シニジアにばれたら戦争になりかねないだろう」

「今はトラジアはシニジアにもマリジアにも中立ですし、サリウスがトラジアの元にあることを考えれば、フィージアが攻めてくることもまずありえません。ならばシニジアだけを気をつけていればいいのです。1番戦力の低いシニジアだけを相手にすればよいのでしたら、コロンを中心に守れば十分勝ち目があります」

「なるほど、それなら……」

「お父様!」

「ノア様大丈夫ですか。私としてはありがたいですが、母の祖国でもあるマリジアにご迷惑をおかけしたくはないです」

「大丈夫だ。私たちが責任をもって彼女を保護しよう」

「ですが彼女は王族です。8万ゴールドはいただきたいです」

「高いな……、傷もあって目も見えないのならもう少し下がるはずでは」

「彼女の保護にかなりの経費をかけましたので。正直言うともうトラジアにばらそうと思っていました」


「俺が買いますよ。8万ゴールドです」


ノアの足踏みを見て、リアムが自分の入れ物からお金をだす。

「リアム……、どこからそんなお金を?」

「ワイアットさんから戦争に勝ったときにお金をもらったんだけど使いどころがなかったんだよ。8万ゴールドぐらい出します」


「ありがとうございます。では、国としての契約ではなく、リアム様との専属契約とさせていただきます」


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