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第12話 サリウス奪回

「ウィリアム……」


メイソンはウィリアムの亡骸を見て呆然としていた。

ウィリアム1人の特攻にウィリアムを慕うベテランの兵士までついてしまい、サリウスは大混乱に陥ってしまった。

それでも数は2千人くらいにしか及ばなかったため、体制を立て直してなんとか倒すことに成功した。


しかし、行方が分からなくなった千人に加え、ウィリアムの反乱により2千人のほぼ全員が死亡。兵士は最後までウィリアムをかばい続けたためほぼ全員が死傷者となってしまった。


ウィリアムに味方した兵士は非常に優秀で、メイソンの兵士も4千人近くが死傷者になってしまった。

その怪我した兵士をフィージアに連れ帰ったりする兵士もいれば、この混乱に乗じてフィージアに逃げ帰ったりしてしまう兵士もおり、2万人いた兵士がなんと1日で6千人にまで減ってしまっていた。

しかも、トラジアとの境目でトラジアを抑えるには最低でも3千人はいないと防衛ができない。

事実上動ける兵士がなんと3千人しかいなくなってしまった。


「何てことだ! 父上から預かった大事な兵士とウィリアムを失ってしまうとは!」


城に戻り現状の把握の会議をする。3千人の兵士はすべて城の守りに費やしている。


「そもそもなぜウィリアムはあんな行動に出たのだ!」

兵士たちの中でウィリアムが現状に不満を持っていたという話は有名ではある。しかし、それでも彼が息子のようにかわいがっていたメイソンに手を出すまでの理由はだれも思いつかなかった。


「メイソン様、ウィリアムのことは残念ですが今は対策を練らねば。さすがに今マリジアに本気で攻め込まれたら厳しいですぞ」

残っている兵士の中でも比較的ベテランの兵士が助言する。


「お、おう、そうだな。では、篭城作戦といこう。マリジアが攻めてきたということは間違いなくこの城に攻め込んでくる。そのまま粘っていればフォージアから援軍が来る」

メイソンの考えは正しかった。しいて言うのであれば初めから篭城作戦を取れていれば、これだけの兵を失うことは無かった。


「これがサリウスの城か」

その頃、リアムは城の前にいた。

城の前で100人ほどに囲まれたが、また先ほどと同じ呼吸の技を使って完全に封じ込めてしまった。


「大変です! 正門で兵士が倒れています!」

その報告はすぐにメイソンの耳に入った。

「何だと! もうすでに敵は入り込んできているというのか!」

「可能性はあります」


メイソン含めて全員が動揺する。

『しかし敵の姿はまったく見られなかったぞ。どこから入ってきたんだ!』

『いくら少数精鋭とはいっても1人も敵を見ていないぞ』

『しかし1日でこれだけの兵士がいなくなったのは事実だ。敵がいないわけではあるまい』

『まるで悪夢だ……』


「報告です! 城の内部でも同じように倒れている兵士が見つかりました!」


「い、いったい何が起こっているんだ!」


ガララッ!


特に対策を立てることもできないままでいると、玉座のある最上階のふすまが開けられる。

「どうも、こんにちは」

「だ、誰だ!」


「リアム=マーフィーと申します。本日でこのサリウスはマリジアに返していただきますね」

「お前マリジアの人間か!」

メイソンはようやく見えた明らかな敵に冷静になることができた。


「いったいどうやってここまできた! 仲間は何人いるんだ」

「俺1人です。できれば降参してフィージアに戻っていただけませんか」

「ふざけるな! まだこの城に2千人は……」


『メイソン様! だめです!』

そう声をかけたのは、先ほどのベテラン兵士である。

「どうした!」

『マリジアの神の子の伝説はご存知ですか?」

「知っている! 父上から聞いた」

『それが彼です。私は8年前の戦争に参加していて、ウィリアム様から彼のことを聞きました。相手にしてはいけません」

「止めるんじゃない! こいつはウィリアムを……、兵士を……」

大事な恩人に大切な兵士を失う原因となったメイソンにとってリアムは許せるはずもなかった。


「俺はなにもしていませんよ。ただ言っただけです」

「何でもいい! お前が原因で兵士が死んだんだろう!」

「俺は1人も殺してないです」

「うそをつくな! すでに情報は聞いている。兵士全員から呼吸をできないようにして窒息死をさせたんだろう」

「いいえ。俺の言葉による効力は当人が意識を保っていないと継続しないんです。呼吸ができないことでまず皆様気絶しました。気絶したことによって俺の効力は切れているので呼吸を取り戻しています」


「なんだと……、じゃあ行方不明になった千人は……」

「とりあえず生きています。そしてついでに気絶する前に『フィージアにいる限りはその症状は治らないです』という暗示もかけておきましたので、フィ-ジアに戻れば直ります。それまでは気がついては気絶するのを繰り返すだけなので早くしないと大変なことになる可能性はありますが」


つまりその千人を連れて早くフィージアに帰るのがもっともよいことになる。多くの兵士が今の話を聞いてしまった以上はその選択を取らなければ兵士の不審を買うことになる。選択肢はなかった。


「しかし、ウィリアムはお前が……」

「俺は何もしていません。ただ、ウィリアムさんが今のフィージアに不満をお持ちになっているかもしれないと『思った』だけです。その後のことは存じ上げません。とりあえず時間は差し上げますので早くサリウスを引き払っていただけますか?」


「わかった……、しかし覚えておけよ。絶対にいずれマリジアはフィージアの支配に入ることになる」

苦虫を噛み潰したような顔で提案をメイソンは飲み込んだ。

ウィリアムの件に納得いったわけではなかったが、今はこうするしかなかった。


「いつでもお待ちしております。俺がいる限りは簡単にはいきませんので十分な対策を立ててからご覧になってください」


その後壮大な山探しにより、千人のほとんどが無事に発見されてフィージアに帰ることができた。

ちなみに、わずか5日でサリウスは陥落したが、この山探しには1週間かかったといわれている。


ここにサリウスが約2年ぶりにマリジアの元に返ることになった。










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