111話 信じる心
「しかし、まずはミア様とリア様に伝えないわけにはいかないですね」
ソフィーやメイソンも今回の件にショックを受けていないわけではなかったが、あまりにもアリアが落ち込んでいるので逆に落ち着いていた。
「ほ、本当になんていえば……」
しかしアリアはそれを伝えるのが怖すぎて、震えていた。
「とにかくマリジアに行きましょう。ここはまだ戦場ですから」
マリジアの病院に行き、カーターにすぐにルーナがアメミットの肝を渡した。
「本物ですね。見るのは初めてだ。これで何とかできるかもしれない!」
カーターが大急ぎでリックたちの病棟に行き、ルーナもついていった。
「アリアちゃん!」
「アリア様」
病院にアリアたちが来た話を聞いて、ミアとリアも病院に来ていた。
「リックさんたちは助かるの?」
「それは大丈夫らしいですよ。無事に見つけたみたいで」
アリアが話せる状態になっていないので、ソフィアが説明した。
「そっか、さすがリアムだね。そういえばリアムは?」
「……リアム様は、こちらのものを手に入れるために、そしてアリア様を守るために、お亡くなりになられたそうです」
「…………」
「本当ですの……?」
この2人もアリアの発言を信じられないようで、言葉を発せない。
「ほ、本当にごめんね、ミアちゃんにリアちゃん。私をリアムを助けてくれて……」
アリアは2人の顔を見ることができなかった。
ミアにとっての昔からの好きな人。
リアにとっての命の恩人。
そしてソフィアやハーパーなどにも好かれ、ジア大陸にとってなくてはならない人を自分の不注意で失ってしまったことに、アリアは気持ちの整理がつかなかった。
「ううん、アリアちゃん、大丈夫」
「そうですわ。リアム様は正しいことをされたのですから」
しかし、2人にはアリアを攻める様子は微塵もなかった。
「2人とも、でもリアムさんが」
「リアムなら大丈夫だよ。そんな簡単にはいなくならないって」
「そうですわ。リアム様が私達を捨てていなくなることはありませんわ」
2人のまなざしはアリアを気遣っていっているわけではなく、リアムを無条件に信じる瞳であった。
「で、でも私の前でリアムさんは消えて……」
「リアムはそんな常識なんか覆すよ」
「しかも体も残ってなくて、証拠もないんでしたら、そのうちふらっと現れますわ。目の前で心臓が止まってリアム様は起き上がると思いますもの」
「だから、本当にあきらめて泣くことはないよ。私達にもし何かあってもリアムが戻ってきて何とかしてくれるって思えるから」
「そうですわ。私達がいなくなっても、リアム様がきっと遺志をついでくれますわ」
この2人はリアムは無条件に信じていた。アリアもそうであったが、この2人ほどは純粋に信じることができなかった。
「うん、そうだね。私もせっかく守ってもらったんだから、リアムさんの守ったこの国を少しでもよくしなくちゃいけないね」
さすがに元気にはなれないが、アリアの表情はさっきよりは明るくなる。
「だけど、困ったね」
「リアム様が戻ってくるということで、皆様がんばられているのに」
「そういえば、何が今起こっているの?」
ミアとリアが現在のジア大陸の状況を話す。
「そんな大変なことに……、やっぱりリアムさんがいないと」
「アリアちゃん。ずっと聞きたかったんだけど、アリアちゃんの腕に抱いている小さい子は何?」
ミアがアリアの手元を見て質問する。
「この子はパラっていって、ナイリン国で出会ったシルフィードの子供なんだ」
アリアはパラをジア大陸に連れてきていた。パラがアリアから離れようとしなかったためである。
「とにかく、今回の件はみんなの耳に入れちゃまずいよね」
「ぎりぎりまで隠し通しますわ。リアム様が戻ってくるまでがんばらなくては」
「報告です! フィージアがジルを残して侵略されました!」
「トラジアも北部が完全に制圧されています!」
しかし、そのとき、ずっとがんばっていた防衛ラインの崩壊の報告が入ってきた。