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104話 伝達

「しかし、ディーゼル殿。どうやってシニジアと連絡を取るのですか?」


イヴァンがディーゼルに聞く。


シニジア含めたジア大陸の情報も、マリン国の情報も全て掌握はできているが、それを共有する手段がわからなかった。


特にジア大陸とリン大陸の距離は大きく離れており、通常の手段ではリアム達が使う船での最速である。


鳥を使ったりして連絡する手段もあるが、ジア大陸とリン大陸ではずっと海があり、間に小休止できる島などがないため、通常の鳥が飛んでいくことはできない。


陸づたいに行けば、船より大きく時間がかかってしまう。


つまりジア大陸とリン大陸では、半月をかけないと情報が共有できないのである。


「もちろん、考えております。それ以前に、すでにその手段は得ている」


「どうされているのですか?」


「出て来い、スス」


そう言われて出てきたのは、ニアンと同じくらいの身長の少女である。しかし、緑色と大きな翼はニアンとの大きな違いがあった。


「この娘は?」


「風の精霊シルフィードのススだ。ナイリン国で見つけて、北に来るときにつれてきた」


「シルフィードですか? それはいったい?」


イヴァンはシルフィードを知らなかった。そもそもシルフィードは伝説の生き物であり、リン大陸でもお目にかかれないようなほど珍しく、情報がほとんどない。


普通イヴァンのように、他国の生き物など知らないのが普通であり、リアムのように詳しいほうがレアなのである。


「彼女は風と空気を自由に操ることができます。風の噂という言葉があるでしょう。ススは情報を風に乗せて送ることができます」


「なるほど、この2人がいれば……」


イヴァンは納得した。


ニアンがいれば、どこの情報も得ることができる。ススはどこにでも情報を送ることができる。この2人を組み合わせれば、世界中で情報を共有することができる。


「ススは情報を受けることもできますが、彼女の能力は1日はかかります。それでも十分早いのですが、ニアンの能力は即座に情報を得られますから」


カーターに悪事をそそのかした兵士に情報を送ったのも、ススの能力を使用したものである。


「しかし、この子はニアンと違って伝説の生き物なのでしょう。連れ出したりして大丈夫なのですか?」


決して慎重な行動をするわけではないイヴァンを心配させたのは彼女の存在であった。


ニアンは、超能力を使うことはできるが、要は人間である。見た目も普通の少女で、周りからの目線もやや違和感があるとはいえ、許容範囲内である。


だが、ススは全体的に緑色で大きな翼まで生えているので明らかに人間ではない。


ニアンの紹介は堂々とされたし、その存在をリン大陸の人間や、イヴァンの領地の人間にも知られている。


しかし、ススの紹介は明らかにこそこそと行われた。


「大丈夫ではないな。こいつと一緒にいたもう一回り小さいシルフィードを怪我させてしまったし。暴れるから無理やり押さえてつれてきた。能力も南にいつそのシルフィードを人質にしているんだ」


「恐ろしいですよ。何が起こるかわかったものじゃない」


「いいんだ。自分の命などそんなに長くない。身内も何もかも全て失った私にはそのようなものは怖くない」


ディーゼルの覚悟には、さすがのイヴァンも恐れおののいていた。


イヴァンもリアムへのうらみを持っており、その気持ちでリン大陸で再興してきた。


しかし、一応生活には困らない場所で過ごしてきた彼はもし無理ならばそのままの生活でもよいと思うこともあり、ディーゼルとの出会いがなければ、もしかしたら、マリジアに戻ることはなかった可能性もある。


だが、ディーゼルは生きるのにも大変なナイリン国で、可能性にかけてこの2人を見つけ出し、自らの命をかけてジア大陸に戻る手段を考えていた。


自分と彼は同等であると思っていた。しかし、ディーゼルの方がよっぽど本気であるという気持ちを受け取った。


「ディーゼル殿。私もお手伝いします。何があろうと、2人で共有いたしましょう」

「そういってくれると思っていた。だからこそ、ススを君に紹介したんだ」


ディーゼルとイヴァンはここで本当の同士となったのであった。










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