102話 ロップ村に行く
南に派遣した部隊から、目的の生物の目撃条件が入り、リアムがナイリン国に入る。
それに、アリア、ノラもついてきた。
アリア自身がそれを望み、リアムもアリアがそばにいるほうがむしろ安全であると思ったからである。
「へっへっへ、若い娘ちゃんがこんなところに用事かい?」
「女性ひさびさにみたぜぃ。遊ばないか?」
とは言っても、やはり治安は悪い。
特に北のほうは元犯罪者も多く、中には女性に乱暴を働いた人間もいるため気をつけてくれとリリーやララベルから、忠告を与えられていた。
「そこの黒髪の坊ちゃん、そんなきれいどころを1人で独占するんじゃないよ」
そのうちの1人がアリアに襲い掛かる。
バキ!
しかし、ここはメイドのノラがアリアを警護する。
完璧なキックが入り、男は吹っ飛ぶ。
「な、何しやがる!」
「やっちまえ!」
それに怒ってか、今度は集団でおそいにかかる。
【アリアさんに襲い掛かってください】
そしておなじみのリアムの能力で、全員動きを封じられる。
そのまま歩いてくと、同じように襲われるが、リアムに封じられる。
リアムがすべてを対処できるわけではなかったが、ミラもかなり動きは優秀で、隙をつかれても大丈夫であった。
そのまま途中で南の軍に合流して、ロップ村の入り口に来た。
「! リアム様。お待ちしておりました」
そこではいくらかの兵士が陣営を張って待っていた。
ロップ村はナイリン国でも最南部であり、途中からは人影もなくなって森だけになる。
「ちょっと不気味だね」
「まぁ仕方ないだろう」
ロップ村の入り口はロープで囲われ、周りには無数の墓石がある。
木が生い茂ってまったく太陽の光は入らず、真昼にも関わらず視界は非常に悪かった。
上記2点のせいで、非常に不気味な雰囲気をかもし出していた。
「アリアさん? ミラさん?」
アリアとミラがリアムの服の裾をつかんで離さない。
2人とも比較的都会的なところで過ごしてきた時期が長く、最近自然の多いラムザにすむようになったとはいえ、ラムザは都会と自然が共存する都市。
ここまで、屈強な自然が立ち並ぶ場所には2人とも経験がなかったのである。
「ミラさん、あなたは護衛なんですからそんなに怖がっちゃだめですよ」
「なんのことでしょうか? 私はアリア様のそばを離れないだけの話でございます」
「アリアさん、ちょっとだけ離れられますか?」
「? ちょっとだけね」
アリアは言うとおりにリアムから離れる。アリアは、ちょっと不安があっただけのようですんなり離れる。
もともとアリアは体は強くないときから、心は強くあったのである。
「ミラさん? アリアさん向こうに行きましたけど? 離れていいんですか?」
「……、いじわるです……。私に怖いと言わせたいんですか?」
ミラが涙目になってリアムに言う。
「すいません。ただ、ミラさんが怖がりとは……」
年上の女性を泣かせてしまったことに申し訳ない気持ちになってリアムが謝る。
リアムの周りには年上の女性も多いが、かかわりが深いとなると、ソフィアかナタリーくらいである。
ナタリーは、いつも落ち着いているし、ソフィアもとてもしっかりしている。
そのため、リアムにとって、年上の女性というのはそういうイメージがついているため、ミラもそうであろうと思っていた。
特にミラは、無表情でクールだたので、なおさらそう思えたのである。
「私は正体さえわかれば怖くありませんが、実体の良くわからないものは怖いですよ。何かあったらどうすればいいかわからないではありませんか!」
タッタッタッ。
「何かしら?」
ミラがそんなことを言って、リアムを困らせていると、アリアの近くの茂みから音がした。
「あっ、可愛い!」
アリアの足元に小さな妖精のような生き物が擦り寄っていた。小さな子供のように見えるが、全体的に緑色で覆われた見た目と、大きな翼は人間ではないと確信させた。
「こちらはシルフィードの子供で、ナイリン国にだけ生息する精霊です、しかしこれは珍しい。私も見るのは初めてですよ」
アリアはとてもその妖精を気に入っていた。
自然の少ないフィージアでは、こういった生物どころか、生き物すらめったにいない。
ラムザで最近小さな生物と出会い、精神的に癒されたことも、アリアの体調の改善に大きく貢献した。
それが関係したのかはわからないが、アリアは動物が好きになり、動物も非常にアリアによくなつくことが多かった。
それは、この死の村であるロップ村でも同じで、相手が精霊でも同じなようで少しだけ周りをほっこりさせるのであった。